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2026.05.28
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AI導入を阻む「データ・プロダクト」の欠落。日本企業とIBM iはどう立ち向かうのか?

AI導入を阻む「データ・プロダクト」の欠落。日本企業とIBM iはどう立ち向かうのか?
目次
  1. 「CDO スタディ2025」の日本版監修者考察と「CDOインサイト2026」から読み解く、日本におけるAI導入の課題
  2. 日本企業におけるデータの課題
  3. IBM i のユーザー企業が持つ「データ」の意義
  4. IBM i ユーザー企業のAIへの取り組みについて

1.「CDO スタディ2025」の日本版監修者考察と「CDOインサイト2026」から読み解く、日本におけるAI導入の課題

現在、多くの日本企業が「AI戦略」を経営の最優先事項に掲げています。2026年時点のAI活用の現在地は、試行(PoC)の段階から本格運用と成果創出の段階へと移行している、と言われています。しかし、その一方で、AI導入が「PoC止まり(PoC死)」に終わる企業が多い、との声もあります。

事実、日本IBMの「CDO スタディ2025(PDF)」の日本版監修者考察の章である41ページで紹介されている「データ課題」の1つとして、「PoCは成功するが、本番展開時にガバナンスと基盤の問題で止まる」が挙げられています。

このうち、「ガバナンス」については、インフォマティカの「CDOインサイト2026」においても、日本の回答者の71%が従業員によるAI活用に自社の可視性とAIガバナンスが完全には追いついていない、と回答したと紹介されています。

「基盤」はデータ基盤を指しており、上述した「CDO スタディ2025」中の「データ課題」では、「部門最適によるデータの分断」「非構造化データの未活用」「データ資産化の視点が欠落」が列挙されています。インフォマティカの「CDOインサイト2026」においても、43%の日本のデータ担当責任者が、AIをパイロットプロジェクトから本番運用に移行する際の大きな障壁は「データの信頼性」であると回答したと紹介されています。

また、「CDO スタディ2025」では、AI導入が「PoC止まり(PoC死)」に終わる理由として、「データ・プロダクト」が欠けていることが原因と述べられています。この「データ・プロダクト」とは、「特定のユースケースごとに用意された再利用可能なデータ資産」であり、企業固有のデータ(構造化データ+非構造化データ)から変換されるものです。

では、企業はどのようにして「データ・プロダクト」に変換するための企業固有データを用意するのでしょうか。あるいは、既に用意されているのでしょうか。

実は、当サイト(iWorld)既出記事「IBM i 上のデータこそがAIにおける優位性」では、次のように言及しています。

IBM iを利用している企業は、AIを実際に機能させるために不可欠な要素である「データ」をすでに持っている

この「IBM i 上のデータこそがAIにおける優位性」という記事は海外記事の翻訳です。したがって、日本は海外とは違うのでは、という懸念を持たれるかもしれません。「レガシーシステム」に分類されがちなIBM iではAIへの対応ができないのではないか、と思われるかもしれません。

本記事では、「CDO スタディ2025」の日本版監修者考察を参照しながら、「データ・プロダクト」および「データ」について日本企業およびIBM iにおける現状の把握と考察を行います。

2.日本企業におけるデータの課題

前章で一部引用しましたが、現在、日本企業において繰り返し指摘されているデータの課題として、「CDO スタディ2025」の日本版監修者考察は大企業を念頭に以下を挙げています。

  • 部門最適によるデータの分断(サイロ化)
  • KPI定義の不統一(例:「売り上げ」や「利益」の定義が異なる)
  • 非構造化データの未活用(文書は蓄積されているが、知見として活用されていない)
  • データの責任主体が曖昧(誰が品質を担保するのか不明確)
  • PoCは成功するが、本番展開時にガバナンスと基盤の問題で止まる
  • システム刷新が目的化し、データ資産化の視点が欠落する

これらの課題は、データの扱いが「業務から発生する存在」と見なされていただけで、再利用を前提とした設計でなかったことに起因しています。すなわち、再利用可能なデータ資産を前提とする「データ・プロダクト」への変換が行えない状態なのです。このことが、「PoC止まり(PoC死)」に終わるAIプロジェクトが多い理由であり、AIそのものではなくデータが原因であることが分かります。

では、どうするか。

AI導入の成功に向けてデータを「データ・プロダクト」として利用可能とするためには、経営資源として部門横断的に利用する前提でデータを再設計できるかどうかにかかっている、と「CDO スタディ2025」で述べられています。そして、その際には、データの一元管理、データの整合性、データのセキュリティー、データのガバナンスを考慮し、構造化データだけでなく非構造化データに対応することも必要となるでしょう。データが分散管理されている場合は、1つの認証情報で複数個所のデータにアクセスし活用できる統制モデルも必要になります。

「CDO スタディ2025」の日本版監修者考察は、次の文章で締めくくられています。

データを「管理対象」から「戦略資産」へと昇華できるか。そこにこそ、AI 時代の企業価値向上の分水嶺があります。


(参考)
経団連のAI-Ready化ガイドラインに照らしてみると、レベル4(AI-Ready化からAI-Powered化への展開)が、「業務システムと分析システムがシームレスに連携」して「大半の業務データがリアルタイムに近い形で分析可能」な状態です。

「一部業務でAI機能の本格適用を実施」して「一部データが分析・活用可能な形で取得可能」な状態がレベル2ですので、自社の現在地を把握する指標の1つとして参照ください。

3.IBM i のユーザー企業が持つ「データ」の意義

「CDO スタディ2025」は、AI活用に必要な「データ・プロダクト」として以下の3つを挙げています。

  1. 判断を支えるデータ(KPI*・指標・比較可能な数値)
  2. 人間のナレッジを構造化したデータ(過去事例・判断理由)
  3. コンテキストを整理したデータ(状況・前提・条件・常識的な事実・切り口)

そして、IBM i の Db2 for i に格納された過去の全取引履歴や在庫推移、顧客行動などのデータは、まさにこれら「KPI」や「ビジネス・コンテキスト」そのものです。

最初の章に記載した通り、「データ・プロダクト」は企業固有のデータ(構造化データ+非構造化データ)から変換されるものなので、企業の基幹であるビジネスアプリケーションを通じて維持されたDb2 for iの格納データは、高品質な構造化データであると評価できます。また、「CDO スタディ2025」では、データのサイロ化がAI活用を進める上での大きな壁であると述べられていますが、IBM iの場合はDb2 for iにのみデータが格納されており、AI はDb2 for i に直接接続して照会できるため、外部にデータをコピーしたり移動させたりする必要がありません 。

ところで、本記事はここまで、「AI」の文字のみで筆を進めてきましたが、2026年の今、AIのトレンドは「生成AI(答えを出すAI)」から「AIエージェント(行動するAI)」へシフトしています。事実、「CDO スタディ2025」の本編においても「AIエージェントが必要とするデータを整備する」という章が存在しています。

IBM iにおけるAIエージェントについては、当サイトに掲載済みの「IBM i向けAIエージェント入門」、「IBM i向けAIエージェントの構築法」、「基本を超えて:IBM iのAIエージェント向けの高度な機能」の3記事が有用と思いますため、別途ご確認いただければ幸いです。

本記事で言及しておきたい上記3記事のポイントは、IBM iは全てのシステム機能にSQLを介してアクセスできるため、AIエージェントの開発が容易である、ということです。Db2 for i 上のユーザー・データのみならず、システムのセキュリティー設定、パフォーマンス指標、ジョブ管理、ストレージ分析など370以上のサービスも、全てSQLによる組み込みサービスを通じてクエリー可能です。そう、数十年前に行われたIBM iのアーキテクチャー上の決定が、現在、AIエージェントの構築をきわめて実用的にしているのです。

ここまで述べてきたことを踏まえると、IBM i がDb2 for i に格納しているデータは、「CDO スタディ2025」で述べられている「戦略的資産としてのデータ」の要件を満たしていることになります。すなわち、当サイト(iWorld)既出記事「IBM i 上のデータこそがAIにおける優位性」が言及している以下は、日本においても同様であり、誤りはありません。

IBM iを利用している企業は、AIを実際に機能させるために不可欠な要素である「データ」をすでに持っている

そして、「データがある場所(IBM i 上)で直接AIを機能させる」という、最も低リスクで高効率な戦略をとることが可能なのです 。

4.IBM i ユーザー企業のAIへの取り組みについて

ここまで述べてきた内容から、IBM iでは「データ・プロダクト」が欠落していないため、AI導入を阻むものが無いことになります。すなわち、本記事における所期の目的は達成しました。

そこで、最後の章では「データ・プロダクト」の話題から離れ、IBM i ユーザー企業がAIで取り組むと良いであろう分野の1つである「技術者不足を踏まえた、開発への生成AIの活用」について考察します。


日本IBMが2024年に発表したIBM i 施策メッセージの第1弾「貴社におけるIBM iへの懸念 (DX・技術者・後継者) を、日本IBMが払拭します。」は、「技術者不足」の課題に対して、「IBM i 技術者プール」による課題解決を目指すものでした。そして、2025年に提唱されたIBM i 施策メッセージの第3弾「IBM iによるDXのすすめ」では、IBM i 対応のソフトウェアやツールの戦略的な活用が提唱されました。

一方、IT全般におけるアプリケーション開発のトレンドが「内製化の加速」と「生成AIの本格導入」であることを踏まえると、上述した2つの施策による人的リソースやソフトウェアによる解決だけが正解とは言えない状況になっています。

折しも、日本IBMは、2026年4月に、IBM i 施策メッセージの第5弾「IBM i × 生成AIが切り拓く新たな価値と進化へ」を発表しました。

IBM iにおける生成AI活用は、2024年のRPG Code Assistantを起点に、2025年5月のwatsonx Code Assistantと具体化が進んできましたが、2025年11月のIBM Bob(当時の名称は、Project Bob)の登場で一変しました。

IBM Bobの概要は、当サイト(iWorld)既出記事の「IBM i 開発の常識を変えるIBM Bobとは?」を参照いただくとして、IBM i 施策メッセージの第5弾は、後継者育成やモダナイゼーション(システムの現代化)といった課題への実効性が高いアプローチがIBM Bobによって可能となる、と述べています。

IBM i での利用を前提に、IBM Bobによって実現できることの一部を以下に列挙します。

  • 仕様書が無いRPGプログラムを解析し、プログラムの内容を説明
  • RPGプログラムのフリーフォームRPGへの変換
  • 保守が容易になるように、コードの構造を最適化
  • IBM Bobのチャット画面で具体的な要件をプロンプトとして入力する、現代風の手法によるプログラムやアプリケーションの作成

そして、列挙した内容を「技術者不足」という状況に重ね合わせると、ベテラン技術者からスキルを継承される立場の若手技術者の場合は、「IBM BobにRPGプログラムを解析してもらう」、「IBM BobにフリーフォームRPGへの変換をしてもらう」、「変換したプログラムがうまく動かない場合は、IBM Bobにチャットで問いかけて、一緒に修正していく」といったことが実現できるのです。

すなわち、若手技術者はIBM Bobによって既存プログラムの内容を理解できるようになります。そして、チャットによってIBM Bobからサポートを得ながら、自律的にプログラムやアプリケーションが作成できるようになれるのです。一方、ベテランの技術者は、現場からの依頼によるプログラム開発などの既存業務において、IBM Bobの活用による生産性の向上が見込めるでしょう。

日本IBMでは、複数のコミュニティーにてIBM Bobに関する情報交換や学習および個別相談の場を設けています。例えば、IBM iユーザーのためのコミュニティー「IBM i Club」に参加いただくことで、定期的に集まるIBM iユーザー同士によって共有される最新情報やユースケースの中から、自社に合ったIBM Bobの活用方法を見つけられるでしょう。


参考) IBM i コミュニティー 2026始動

おわりに

本記事の主目的は、海外記事の執筆内容が日本においても同様か否かの検証でした(最終章だけは全く異なる内容を記述しましたが)。具体的には、IBMのCDO Study 2025を拠りどころとしつつ、実際に参照する情報は日本人が日本の状況を踏まえて言及している「監修者考察」に限定しました。

AI導入が「PoC止まり(PoC死)」に終わることが多い状況は、検索サイトに「PoC死」と入力すると「約7割」「99%」といった数字を挙げているサイトが登場することから、日本もその通りと言えます。

PoC死に終わる理由として挙げられた「データ・プロダクト」の欠落は、データ・プロダクトへ変換するために不可欠なデータが統合されず分断されたままだからです。事実、「データ」と「サイロ化」の複合検索をすれば、用語説明から打開策に至るまで多数のサイトが登場します。

このような裏付けがあればこそ、(意図せずして)Db2 for iにデータを蓄積してきたIBM iが「データ・プロダクト」の前提条件を満たしていて、「IBM iを利用している企業は、AIを実際に機能させるために不可欠な要素であるデータをすでに持っている」と言えるのです。

今後も、当サイトは、「IBM i 上のデータこそがAIにおける優位性」のようなTech Channelの記事を翻訳して紹介してまいりますが、「海外と日本は違う」と決めつけることなくご覧いただけると幸いです。

筆者

株式会社イグアス iWorld 編集部 黒澤 巧

株式会社イグアス
iWorld 編集部
黒澤 巧

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