- 「IBM Power Mission Control」とは?
- 「限界を突破した運用の複雑さ」に求められる解決策
- 「IBM Power Mission Control」への最初の一歩である「IBM Power Autonomous Operations」
1. 「IBM Power Mission Control」とは?
IBM Powerに関する様々な発表があった2026年7月14日、ある製品の発表レターに「IBM Power Mission Control」の文字が登場しました。原文は以下の通りです。
Foundation for Power Mission Control
Autonomous Operations is the first major step toward IBM Power Mission Control, a unified platform that will bring together agentic operations and turnkey AI deployments to drive IT operations and business innovation at the speed of AI.
この英文が述べていることは以下です。
- 発表レターの対象製品である「IBM Power Autonomous Operations」が、ビジョンや構想としての「IBM Power Mission Control」への最初の一歩
- 「IBM Power Mission Control」は、エージェント型運用とターンキーAIの導入を統合したプラットフォームであり、AIのスピードでIT運用とビジネス革新を推進
AgenticOpsという表記も使われるエージェント型運用は、AIエージェントによるIT運用のことです。AIを用いてIT運用の効率化・高度化を目指すAIOpsが推論とアラートや推奨事項を人間に委ねるのと異なり、エージェント型運用はAIエージェント自身が推論して計画するとともに自律的に操作および行動します。そして、ターンキーAIは、導入してすぐに使用できるAIのことです。
もちろん、現時点では「IBM Power Mission Control」は確立されたものではありません。あくまでも、IBM Power向けの統合運用・AI活用プラットフォームのビジョンです。では、なぜ、「IBM Power Mission Control」というビジョンが登場したのでしょうか。
2. 「限界を突破した運用の複雑さ」に求められる解決策
Product Managerとして、IBM Power Autonomous Operationsを紹介するとともに、IBM Power Mission Controlに言及している記事を公開したのは、IBMのHeather Lavergne氏です。
Heather Lavergne氏は、「IBM Power Enters the Age of Autonomous Operations」 と題した記事で、経験豊富で世界でも屈指のIBM Powerサーバー運用担当者たちが口にしていた言葉を紹介しています。
“We’re managing more complexity than ever, with the same size team, and the window for error keeps shrinking.”
(これまで以上に複雑な状況をこれまでと同じ規模のチームで管理しており、ミスが許容される余地はますます狭まっている。)
すなわち、「ダッシュボードにエラーが表示されたら、エンジニアがログや変更履歴を追跡して原因を特定して、適切な対応を行う」という従来のスタイルのままでは、運用だけで手一杯な「守りの運用」を余儀なくされてしまいます。そして、その一方で、日進月歩以上のスピードで進化するAI向けのインフラの構築も求められているのです。ここで述べた両方の作業を、人員の拡充なしに対応すれば、運用を担当しているチームの限界に達するだけではなく、限界を超えてしまうでしょう。
ミスが許容される余地が少ないプロジェクトと言えば、今年実施された53年ぶりの有人月周回に成功したアルテミスIIのミッションも想起されます。NASAの宇宙計画の世界にも「ミッションコントロール」が存在していて、アルテミスIIのミッションでロケットの打ち上げの場面などに登場したミッションコントロールは、全ての状況をリアルタイムで監視および把握し、意思決定と対応を行っていました。
(関連記事:宇宙探査に貢献しているIBM POWER)
このNASAの宇宙計画におけるミッションコントロールのように、複雑化するITインフラの全貌をリアルタイムで把握するとともに、AIが予兆をとらえ、自律的に状況を分析し、対処方法を提案する――このような次世代の統合運用プラットフォームのビジョンが、「IBM Power Mission Control」なのでしょう。
3.「IBM Power Mission Control」への最初の一歩である「IBM Power Autonomous Operations」
IBM Power Autonomous Operationsとは
IBM Power Autonomous Operationsは、IBM Power環境向けのAI搭載運用プラットフォームです。運用担当者が培ってきた知見とAIの分析・処理能力を組み合わせ、AIエージェントを活用してオンプレミス環境とIBM Power Virtual Server(PowerVS)を含むハイブリッド環境を一元的に管理します。
従来の監視ツールのようにシステムの状態を表示するだけではなく、AIが状況を分析し、障害対応、性能管理、容量管理、サポート業務まで、一連の運用を支援します。
製品名に「Autonomous(自律)」とありますが、運用担当者を置き換えて完全自動化することを目指した製品ではありません。IBM Power Autonomous Operationsは、「Human-in-the-loop」の考え方を採用しています。AI エージェントがシステムの状態を認識し、分析や対応方法、実行計画を提示しますが、実際の操作はポリシーや運用担当者の承認に基づいて実行されます。
また、実行前には、対象となるシステムや影響範囲、想定されるリスクなどを提示し、最終的な判断は運用担当者が行います。AI が運用者の判断を補強し、障害発生後の対応だけではなく、予兆を捉えた先回りの運用を支援する設計になっています。
3つの運用領域
IBM Power Autonomous Operationsは、次の3つの領域を中心に Power 環境の運用を支援します。
- インフラの状況を把握(ライフサイクルインテリジェンス)
Power 環境の資産情報や構成情報、システム状態を継続的に収集・可視化します。ライフサイクル情報を一元的に管理することで、運用状況を把握しやすくします。 - 障害への復旧(レジリエンス)
ログやシステム情報をもとに障害を分析し、原因調査を支援します。解決ステップと FRU リストを備えた Serviceable Events(SRC)へ自動アクセス、自動ログ収集、サポートチケット作成などに対応し、障害対応の効率化を図ります。 - パフォーマンスと容量の最適化
CPU 使用率やメモリー割り当てなどの利用状況を継続的に監視し、ワークロードやリソース利用率を分析します。ボトルネックの把握や容量管理を支援し、リソースの最適化につなげます。IBMの公開情報では、Early proof pointとして運用リソースの逼迫問題を手動による運用と比較して最大15倍高速した結果が紹介されています。
ハイブリッド環境を一元管理
IBM Power Autonomous Operationsの特徴の一つが、オンプレミス環境とクラウド環境を統一した運用モデルで管理できることです。
HMC、IBM Power Virtual Server(PowerVS)、PowerVCを単一のインターフェースから管理し、IBM Power VMを環境をまたいで一元的に運用できます。環境ごとに異なる管理ツールを切り替えることなく、Power環境全体の状態を把握できます。
また、AI エージェントによる自然言語インターフェースを利用し、VMのプロビジョニング、起動・停止、構成変更、スナップショット作成などのライフサイクル操作も支援します。
動作要件
- Power LPAR上のソフトウェア・アプライアンス(CentOS)
- IBM Power10 、 IBM Power11、または IBM Power Virtual Server
- IBM Power Hardware Management Console(HMC)または Virtual HMC(vHMC)Version 11.2.1120 以降
- AI InferencingおよびPower Virtual Serverへの接続のためのアウトバウンド通信
利用イメージ
実際の画面をもとに、IBM Power Autonomous Operationsの利用イメージを紹介します。
1.概要画面で重要なアラートを確認
システム管理者がIBM Power Autonomous Operationsにログインすると、最初に Overview(概要)ページが表示されます。ここでは、対応が必要なアラートが一覧で確認でき、優先度の高い情報が最初に表示されます。複数の管理ツールを切り替えることなく、システム全体の状況を把握できます。
例えば、仮想マシンがエラー状態になった場合、その情報が概要ページに通知されます。

アラートの詳細を選択すると、その内容を引き継いだ状態で AIチャットを起動できます。AIは対象システムの情報や関連するイベント、影響要因となどを整理し、状況を分かりやすく提示します。

内容を確認した後は、そのままAIチャットからIBM サポートケースを作成できます。

必要なシステムログは、AIが自動的に収集・添付するため、ログを手作業で取得したり、追加情報をやり取りしたりする手間を削減できます。
ケース送信前には、収集された情報や送信内容を確認できます。内容に問題がなければ、そのままケースを送信し、一連のサポート依頼を完了できます。

2.CPU使用率が高い仮想マシンへの対応
仮想マシンでCPU使用率が高いと、概要ページに警告が表示されています。

AIチャットを起動すると、警告内容に応じた推奨対応が表示されます。AIは推奨内容だけでなく、これから実行するアクションについても説明します。

変更管理が必要な作業については、変更管理システムのチケット作成を提案します。

システムへの影響が想定される操作については、処理内容や想定されるリスクを事前に説明したうえで、システム管理者に承認を求めます。

システム管理者が実行を選択すると、AIは必要な情報を収集し、変更管理システムへチケットを登録します。変更管理システムでチケットが承認されると、AI が CPU パーティションの変更を実行します。これまで複数の手順が必要だった作業も、わずか数クリックで簡単に進められます。
IBM Power Autonomous Operations は、障害の検知から解析、サポートケース作成、変更管理、実行までを一つのプラットフォームで支援し、Power 環境全体の運用効率化と、運用担当者の負荷軽減、迅速な問題解決を実現します。
また、IBM Power 環境における自律運用への第一歩として、MCP(Model Context Protocol)を活用した拡張性を備え、今後は ITSMプラットフォーム、監視ツール、自動化フレームワーク、コラボレーション環境との連携も予定されています。さらに、本製品を起点として、エージェント型運用と AI 活用を統合する将来構想 「IBM Power Mission Control」 へと発展していく予定です。今後の展開にもぜひご期待ください。
関連リンク
- IBM IBM Power 向け「Agentic Operations」を発表(製品発表レター)
- IBM Power Enters the Age of Autonomous Operations(Product Managerの執筆記事)
筆者
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黒澤 巧 |
李 馥岑 |














「ミッションコントロール」という文字を見ると、MacのMission Control機能を思い浮かべる方が多そうですが、本記事におけるミッションコントロールはIBM Powerにおける司令塔のような意味合いです。(編集部)