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2026.04.13

IBM i上のデータこそがAIにおける優位性

IBM i上のデータこそがAIにおける優位性

mrc社のサービス担当ディレクターであるリック・ハークス氏が、AI導入を成功させる上でデータ品質が担う重要な役割と、AIが席巻する時代にIBM iを使用している企業が有利な立場にある理由を説明します。(編集部)


2026年3月25日 リック・ハークス

現在、全てのITリーダーが同じ質問に直面しています。「当社のAI戦略は何か?」

しかし、IBM iを使用している場合、九分九厘、質問への回答が「移行」のセールストークから始まっているように感じられます。例えば、「データをクラウドに移行させましょう」とか、「まず、モダナイゼーションを行い、その次がAIです」といった回答です。さらに、IBM i向けのAIツールに関して言えば、市場に出回っているものの多くが、現在のプラットフォーム(IBM i)からの移行を前提としています。

最近、このような会話の傾向が変化しつつあります。IBM iのコミュニティー内では、既存のオンプレミスのIBM i環境へのAIの導入について語る声が増えています。なぜならば、IBM iを利用している企業は、AIを実際に機能させるために不可欠な要素である「データ」をすでに持っているからです。

AIを機能させるために企業が必要としているもの

エンタープライズAIの「不都合な真実」をご存知でしょうか。実は、エンタープライズAIのプロジェクトが失敗する場合、原因はAIモデルの品質ではなくデータの品質なのです。

BARCの調査「Lessons From the Leading Edge」によると、データ品質の問題がAIプロジェクトの成功を阻む最大の障害であると回答した企業や組織は44%にのぼります。

さらに厳しい数字もあります。PEXレポート2025/26によると、回答者の52%がデータの品質と可用性をAI導入の最大の障壁として挙げました。

Informaticaの2026年CDO調査でも同様のことが分かっており、日本のデータ担当責任者の43%が、AIをパイロット・プロジェクトから本番運用に移行する際の大きな障壁は「データの信頼性」であると回答しています。

ここまで紹介してきたように、最新のクラウドインフラ、データプラットフォーム、専任のデータエンジニアリングチームを擁する企業でさえ、自社のデータを AIが利用できる状態に整えることに苦労しています。データパイプラインの構築に何か月も費やし、数十ものツールやスプレッドシート、連携していないデータベースに散在するデータをクレンジングしています。

有用なAIツールを構築する前に、上述した作業を全て行う必要があります。IBM i向けのAIツールに関する議論の出発点も同様です。つまり、重要なのはデータなのです。


※参考記事:AIエージェント時代のデータ戦略 ―先行者利益獲得のための「AI-Readyデータ」整備とは?IDCアナリストが提言(CIO.com)

IBM iを使用している企業が既に持っているもの

IBM iを使用している場合、ビジネス・データはDb2 for iに格納されています。Db2 for iに格納されているデータは構造化されており、長年(多くの場合、数十年)にわたり、アプリケーションによって維持、検証されてきました。

このDb2 for iに格納されているビジネス・データこそが、あらゆるAIの取り組みに不可欠な基盤なのです。(多くの企業はこれを持ち合わせていないため、データクレンジングから行っています)

AIが必要とするもの IBM iを使用している企業が既に持っているもの
クリーンで構造化されたデータ 数十年にわたる検証済みのトランザクション・データを備えたDb2 for i
データガバナンスのフレームワーク システムに組み込まれたセキュリティー・モデル、アクセス制御、監査証跡
一貫したデータ品質 長年にわたり実行され続けているアプリケーションによって強制されるデータ整合性ルール
クエリー可能なデータ層 あらゆるものへの直接的かつ標準化されたアクセスを提供するIBM iサービス

最新プラットフォームを利用している企業が、AI向けにデータを準備するだけの作業に6か月から12か月も費やしているという話を何度耳にしたことでしょう。一方、IBM iを使用している企業は、データ基盤を既に最初から持っているのです。

皮肉なことですが、これがまさに現実です。皆が「レガシー」と呼ぶプラットフォーム(つまり、IBM i)は、あらゆるAIプロジェクトが必要とするデータ基盤を備えているのです。

「AI戦略」に関する会話の傾向の変化

データ基盤の有無を踏まえて、「AI戦略」に関する会話の傾向が変わりつつあることは朗報です。IBMは「ゼロコピー」のデータアクセスに投資しており、データの移動や複製を行わずに、データが存在する場所で直接クエリーを実行できるようになりつつあります。また、書き換えによってではなく、最新のAPIを通じてIBM iのロジックを公開する「APIファースト」のモダナイゼーションが一般的になりつつあります。

もちろん、モダナイゼーションそのものに問題はありませんし、モダナイゼーションが正しい戦略である場合もあります。問題なのは、モダナイゼーションとAIの導入は、まったく別の話であるにもかかわらず、混同されがちであることです。AIを導入するためにIBM iの環境をモダナイズする必要は多分ないでしょう。IBM iを使用するほとんどの企業では、データ基盤はすでに整っているからです。

最大のリスクは、AIを導入可能にするには12か月の準備プロジェクトが必要だと想定してしまうことです。そして、おそらく、その必要はありません。

IBM iのデータを活用して何が作り出せるのでしょう

では、データをどこにも移動させずに、現在利用可能なIBM i向けのAIツールを使用して、何が作り出せるのでしょうか?

リアルタイムのビジネス・データと連携するAIアシスタント
サポート担当者が顧客の注文履歴を瞬時に取り出し、価格を確認し、返信文を作成する…この一連の作業をDBb2 for i のデータを活用して行います。あるいは、在庫状況を把握し、リアルタイムで製品の在庫情報に関する質問に回答できる営業アシスタントも考えられます。これは一般的なチャットボットではなく、データとビジネス・ルールを理解するタスク指向型の支援ツールです。

実際の業務プロセスを自動化する、AIを活用したワークフロー
たとえば、(顧客や従業員からの問い合わせを一元管理するための)サポートチケット・システムがあるとします。サポートチケットが入力されると、AIはそれを分類し、センチメント分析を行い、適切なチームに振り分け、フォローアップの手順を自動的に開始します。一連の全ての処理は既存の業務システムと連携し、Db2 for iのデータを読み書きしながら実行されます。

アプリケーションに組み込まれたチャットボット
(本記事における「チャットボット」とは、一般的なチャット・ウィジェットのことではありません。) 顧客ポータル、社内ダッシュボード、サポートページなどに組み込まれた対話型インターフェースを指し、注文状況の確認、チケットの更新、口座残高の確認などの様々な操作を実行します。

文書を検索可能なナレッジに変えるAI
AIの最も一般的な使用法の1つとして、社内規定マニュアル、コンプライアンス文書、製品仕様書、サポート記事などの文書を、AIによって検索可能なナレッジベースへと変換しています。従業員が質問すると、ナレッジ化された文書に基づいた回答が得られます。これは、最も迅速に成果が得られるAI活用の1つです。

IBM iのエコシステムは、AI活用をサポートするために拡大しています。IBM i向けのIBM MCP(Model Context Protocol)サーバーにより、AIエージェントがシステムと直接対話できるようになります。IBM iサービスは、すでにデータへの標準化されたインターフェースを提供しています。そして、必要なツールは既に揃っています。しかし、最も重要な要素は、上述した全てを機能させる「クリーンでガバナンスの行き届いたデータ」です。そして、おそらく、IBM iを使用している企業は何年も前から「クリーンでガバナンスの行き届いたデータ」を持ち続けているでしょう。

実際の運用例

良い例を挙げましょう。

IBM iを使用しているA社は、業務の全てをDb2 for i上で運用しています。同社の営業チームは迅速な回答を必要としています。しかし、現在は、カスタム・レポートを作成・入手するには、IT部門に依頼を出し、処理待ちの列の中で数日間待たなければなりません。

データに接続したAIツールがあれば、営業担当者は、「今四半期の売上高上位20社の中で、過去30日間に注文がない顧客を表示してください」と入力するだけで良いのです。そして、AIはDb2 for iの最新のデータを照会して、数秒で回答してくれます。

このようなアプローチは、運用、財務、カスタマー・サービスなど、ビジネス・データからの回答を必要とするあらゆる部門で機能します。重要な点は、AIがIBM i上のDb2 for iに直接接続することです。セキュリティー・モデルはそのまま維持され、ガバナンスの枠組みも変わりません。

結論

現在、AIの導入に成功している企業は、IT予算が大きい企業や最新のプラットフォームを導入している企業ではありません。最も質が高いデータを持っている企業がAIの導入に成功しています。そして、IBM iを使っている企業であれば、おそらくAIの導入に成功するでしょう。


本記事は、TechChannelの許可を得て「Your IBM i Data Is the AI Advantage Nobody’s Talking About」(2026年3月25日公開)を翻訳し、日本の読者に必要な情報だけを分かりやすく伝えるために一部を更新しています。最新の技術コンテンツを英語でご覧になりたい方は、techchannel.com をご覧ください。

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