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IBM i 技術解説 IBM i 技術解説
2026.08.19
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IBM Bobで本番システムを 丸ごと見渡す
―X-Analysis AIとのMCP連携がもたらす安全で網羅的な分析―

IBM Bobで本番システムを 丸ごと見渡す<br />―X-Analysis AIとのMCP連携がもたらす安全で網羅的な分析―

はじめに

IBM Bobは、IBM iの開発現場に生成AIを持ち込み、コードの説明、生成、修正、コンパイル、テストまでを支援する強力なAIペアプログラマーです。特にIBM Bob Premium Package for iの登場によって、RPG、COBOL、CL、DDS、Db2 for iなど、IBM i固有の開発作業へ踏み込める範囲が広がりました。

一方で、システムを正しく理解するために見たいのは、開発途中の一部分だけではありません。利用者が現在使っている本番アプリケーションの全体です。しかし、ソースコードを書き換え、コマンドやSQLも実行できるツールを本番環境へ接続することには、当然ながら慎重さが求められます。

2026年4月の記事「IBM Bobコインの消費を抑える ―X-Analysis AIとの役割分担がもたらす経済的・技術的メリット―」では、X-Analysis AIがシステム全体の調査を担い、IBM Bobがコードの生成や変更を担うという役割分担を紹介しました。今回考えたいのは、この役割分担を経済性だけでなく、本番システムを安全に分析するためのアーキテクチャとして捉え直すことです。

第1章:なぜ本番システムを見なければならないのか

開発環境には、改修中のソース、検証途中のオブジェクト、限定されたテストデータなどが置かれています。安全に作業するために欠かせない環境ですが、必ずしも現在の業務を支えているアプリケーション全体と一致するとは限りません。長年運用されてきたIBM i では、本番だけに残るプログラム、実際に動いているバッチ、帳票、画面、運用上の呼出経路が存在することもあります。

「このフィールドを変更すると何に影響するのか」「この障害はどの後続処理へ波及するのか」といった質問へ正確に答えるには、現在稼働している資産を基準にする必要があります。ここで扱うのは、顧客情報や取引明細といった業務データそのものではなく、プログラム、ファイル定義、フィールド、呼出関係などのアプリケーション構造です。

開発環境は「これから作るもの」を扱う場所です。本番環境は「今、業務を動かしているもの」が存在する場所です。本番を安全に見渡す方法が必要になるのは、この違いがあるためです。

▲図1:開発環境と本番環境の違い
 ※画面クリックで別画面に表示します

第2章:Premium Package for iが広げるBobの実行能力

IBM Bob Premium Package for iは、IBM i DeveloperモードやIBM i Databaseモード、IBM i向けのスキル、ツール、ワークフローをBobへ追加します。ローカルPC上のGitリポジトリだけでなく、Code for IBM iを介してQSYSやIFS上のソースを読み書きし、CL、SQL、PASEコマンドを実行できます。コンパイルやRPGの単体テストも、開発の流れの中で扱えます。

これは開発環境では大きな利点です。調査結果を受け取ったBobが、そのまま修正計画を作り、ソースを変更し、コンパイルし、テストするところまで進められるからです。

ただし、その能力は接続先とユーザー権限に左右されます。IBMのセキュリティガイドでは、BobはCode for IBM iのアクティブな接続ユーザーを利用し、そのユーザーに許可された操作を実行できると説明されています。ライブラリ修飾したCLコマンドの強制や、UPDATE、DROP、TRUNCATEなどのSQLに承認を求めるガードレールはありますが、最小権限、接続先の分離、人による承認が引き続き重要です。

つまり、Premium Package for iが危険なのではありません。強力な実行能力を持つからこそ、その能力を発揮させる環境と、分析だけを行う環境を明確に分けることが大切なのです。

▲図2:IBM Bob Premium Package for iの能力と権限
 ※画面クリックで別画面に表示します

第3章:本番へ直接触れず、X-Analysisの「地図」を見る

X-Analysisは、IBM iのアプリケーション資産を解析し、プログラム間の呼出関係、ファイルの参照・更新、フィールドの使用箇所、データフロー、画面、帳票、バッチ、ビジネスルールなどをリポジトリへ蓄積します。もともとコードを生成・変更するための製品ではなく、現状分析と構造理解を目的とするソフトウェアです。

MCP連携では、IBM BobからXA API Serverを介して、このX-Analysisリポジトリの解析機能へ問い合わせます。Bobに本番システムのソースを書き換える権限やコマンド実行権限を与えなくても、本番資産から作られた構造情報を利用して、プログラムの位置付けや影響範囲を確認できます。

言い換えれば、Bobに本番システムを直接触らせるのではありません。
本番資産を解析したX-Analysisの「システムの地図」を、Bobに見せるのです。

従来は、AIによる分析を安全に行うために、本番資産を複製したサンドボックスや検証環境を用意し、内容を同期する方法も考えられました。もちろん、実装やテストのための検証環境は今後も必要です。しかし、AIに本番の構造を理解させるという目的だけであれば、既存のX-AnalysisリポジトリをMCP経由で参照することで、複製環境を新たに維持する負担を抑えられます。

▲図3:本番を直接変更しないMCP構成
 ※画面クリックで別画面に表示します

第4章:開発環境でもX-AnalysisがBobを支える

ここで注意したいのは、X-Analysisが本番環境だけのための仕組みではないことです。開発環境でも、Bobがコードを変更する前後の調査を強力に支援します。

たとえば「取引先コードを6桁から8桁へ変更する」という依頼があった場合、対象プログラムだけを見ても、修正範囲は判断できません。ファイル定義、内部変数、パラメータ、画面、帳票、バッチまで波及する可能性があります。X-Analysisへ問い合わせれば、直接影響と間接影響を整理し、変更対象とテスト観点をBobへ渡せます。

Bobは、その調査結果を基に修正計画を作成し、Premium Package for iの機能を使ってコード変更、コンパイル、単体テストを行います。テストで想定外の結果が出た場合は、再びX-Analysisへ問い合わせて関連資産をたどります。

開発環境では「X-Analysisで調べる→Bobが計画する→Premium Package for iで作る・試す→X-Analysisで確かめる」という循環が生まれます。Bobが強力になるほど、変更前に正確な構造情報を与えるX-Analysisの価値も高まります。

▲図4:開発環境における調査・計画・実装・再確認のループ
 ※画面クリックで別画面に表示します

第5章:「丸ごと見渡す」とは、何を見ることか

生成AIは、1本のRPGやCOBOLを読み、その処理を説明できます。しかし、1本のプログラムを理解することと、業務アプリケーション全体を理解することは同じではありません。

本番システムを「丸ごと見渡す」とは、すべてのソースコードをAIへ投入することでも、業務データを無制限に読み込ませることでもありません。必要なのは、プログラム、ファイル、フィールド、画面、帳票、バッチがどのように結び付いているかという、解析済みの関係情報です。

X-Analysisは、この関係を事前に解析してリポジトリへ保持します。Bobは必要なときにMCPで問い合わせ、回答の根拠となる構造情報を取得します。AIがゼロから関係を推測するのではなく、X-Analysisが示す地図を使って考えることが、網羅性と再現性につながります。

▲図5:X-Analysisが提供する網羅的な構造情報
 ※画面クリックで別画面に表示します

第6章:安全性は「接続しない」だけでは完成しない

X-Analysisを介した構成であっても、MCPサーバーの認証、通信の暗号化、参照できるリポジトリと機能の制限、問い合わせ履歴の記録は必要です。また、X-Analysisリポジトリが本番の最新状態を反映しているか、解析の更新時点も確認しなければなりません。

開発環境でBobが作成した変更は人がレビューし、変更管理とテストを経て本番へ適用します。本番分析の回答についても、AIの文章だけを結論とせず、X-Analysisの根拠と実際の業務要件を照合します。安全性は製品名だけで決まるものではなく、接続、権限、データの鮮度、承認という運用設計によって完成します。

まとめ:X-Analysisを共通の調査基盤にする

開発環境では、IBM Bob Premium Package for iが「作る・直す・コンパイルする・テストする」を担い、X-Analysisがその前後の調査を支えます。本番環境では、BobがX-AnalysisリポジトリをMCP経由で利用し、「知る・たどる・影響を調べる・全体を見渡す」ことに集中します。

前回の記事で紹介した経済的・技術的な役割分担は、MCPとPremium Package for iによって、より具体的な開発・分析アーキテクチャになりました。X-Analysisを開発と本番にまたがる共通の調査基盤とし、Bobの実行能力を適切な環境で活用する。それが、本番システムを安全に、そして丸ごと見渡すための現実的な方法です。

注記・免責事項

本稿は2026年8月時点の公開情報およびX-Analysis AIのMCP機能を基に構成しています。製品の接続方式、提供機能、権限、承認設定はバージョンや構成によって異なる場合があります。AIが生成したコード、調査結果、運用手順は、適用前に人がレビューし、各組織の変更管理・セキュリティ方針に従ってください。

参考情報

X-Analysis 技術コラム IBM BobとX-AnalysisをMCP連携した各種検証結果を掲載
X-Analysis MCP iWorld 記事
IBM Bob Premium Package for i
IBM Bob Premium Package for i:Tools
IBM Bob Premium Package for i:Security guidelines

著者紹介

GxP 阿野 幸裕様

株式会社GxP
モダナイゼーション部 部長
阿野 幸裕

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