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IBM i 技術解説 IBM i 技術解説
2026.07.28
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「近い将来」が現実になった X-Analysis AIのMCP対応が変える IBM i開発・運用
-IBM BobやAIエージェントに、 アプリケーション全体の構造知識を届ける-

「近い将来」が現実になった X-Analysis AIのMCP対応が変える IBM i開発・運用<br />-IBM BobやAIエージェントに、 アプリケーション全体の構造知識を届ける-

はじめに

2026年4月、iWorldに「IBM Bobコインの消費を抑える――X-Analysis AIとの役割分担がもたらす経済的・技術的メリット」という記事を寄稿しました。その中で私は、IBM BobとX-Analysis AIがMCP(Model Context Protocol)を介して連携し、Bobの画面からX-Analysisのアプリケーション解析情報を参照できるようになる「近い将来」を展望しました。
その将来が、現実になりました。

X-Analysis AIにMCP機能が加わり、IBM BobをはじめとするAIペアプログラマーやAIエージェントから、X-Analysisリポジトリへ接続できるようになりました。これは単に、X-Analysisに新しいインターフェースが増えたという話ではありません。X-Analysisが「人が画面を操作して使う解析ツール」から、「AIも必要に応じて利用するアプリケーション知識基盤」へと役割を広げたことを意味します。

本稿では、今回のMCP対応がIBM iの開発・保守・運用をどのように変えるのか、そしてAIエージェントをどこまで実務に組み込めるのかを考えていきます。

第1章:X-Analysisを利用する3つの方法

今回の機能追加により、X-Analysisリポジトリのアプリケーション解析データや横断リファレンスへは、大きく3つの方法でアクセスできます。

1つ目は、従来から提供されているEclipse Pluginです。開発者はIDE上で、可視化、影響分析、データフロー、メトリクス、棚卸など、100を超えるX-Analysisの機能を利用できます。
2つ目はWeb UIです。ブラウザから主要な解析機能を利用でき、GUIによる操作と生成AIチャットを組み合わせて、ソースコードやアプリケーション構造を自然言語で確認できます。
そして3つ目が、今回加わったMCP接続です。IBM BobなどのAIペアプログラマー、AIエージェント、MCPに対応したIDEから、XA API Serverを介してX-Analysisリポジトリへ照会します。

重要なのは、3つが別々の知識を使うのではないことです。人がEclipse PluginやWeb UIから確認する場合も、AIがMCP経由で確認する場合も、参照するのは同じX-Analysisリポジトリです。人とAIが同じアプリケーション構造を見ながら作業できることが、今回の変化の本質です。

▲図1:進化したX-Analysisの3つの活用方法

第2章:MCPは何を変えるのか

MCPは、AIアプリケーションと外部のデータやツールを標準的な方法で接続するためのプロトコルです。MCP対応のAIクライアントは、接続されたMCPサーバーが提供する機能を確認し、必要に応じて呼び出せます。

IBM BobもMCPクライアントとして外部ツールやサービスへ接続できます。IBMの公式ドキュメントでは、Bobはコード生成、リファクタリング、デバッグ、ドキュメント作成、タスク自動化に加え、MCPを利用して外部ツールを呼び出せると説明されています。

従来、開発者がBobでコードを修正する前に影響範囲を確認したい場合、X-Analysisを別画面で開き、調査結果を確認し、その内容をBob側へ渡す必要がありました。この役割分担自体は合理的でしたが、ツール間の往復が発生します。

MCP接続後は、BobやAIエージェントが作業の途中でX-Analysisへ問い合わせられます。たとえば、「このフィールドの桁数を変更すると、どのプログラム、画面、帳票、バッチ、外部連携に影響するか」と指示すると、AIはX-Analysisの解析結果を取得し、その根拠を使って修正計画やテスト観点を整理できます。

つまりMCPは、単なる画面連携ではありません。「システムを理解する役割」と「コードを変更する役割」を、1つの作業の流れにつなぐ仕組みです。

▲図2:MCP導入前と導入後の作業の違い

第3章:なぜAIにX-Analysisの構造情報が必要なのか

生成AIはRPGやCOBOL、CLのソースコードを読み、処理内容を説明できます。しかし、1本のソースコードを読めることと、アプリケーション全体を理解していることは同じではありません。

IBM iの基幹システムでは、RPG、COBOL、CL、DDS、Db2 for i、画面、帳票、バッチ、外部連携が長い年月をかけて結び付いています。1つのフィールド変更が、別名の変数やパラメータを経由し、複数のプログラム、帳票、連携ファイルへ波及することもあります。

これを生成AIだけで毎回調べようとすると、大量のソースコードを収集して読み込ませ、関係を推測させる必要があります。調査のたびに入力範囲や質問の仕方が変われば、回答にもばらつきが生じます。また、対象を広げるほど処理時間とAI利用コストも増えます。

X-Analysisは、IBM i資産を事前に解析し、プログラム間の呼出関係、ファイルの参照・更新関係、フィールドの使用箇所、データフロー、ビジネスルール、プログラム構造、メトリクスなどをリポジトリに蓄積します。

MCP経由でAIへ渡すのは、単なるソースコードの断片ではありません。解析済みの構造と関係性です。AIはゼロからすべてを推測するのではなく、X-Analysisが示すアプリケーションの地図を使って考えられるようになります。

ここで大切なのは「AIに大量の情報を渡すこと」ではなく、「AIが判断するために必要な構造化されたコンテキストを渡すこと」です。

▲図3:コード断片から構造化されたコンテキストへ

第4章:開発は「調査してから実装する」一連の流れへ

具体的な改修依頼を例に考えてみます。

「取引先コードを6桁から8桁へ変更したい」

この依頼に対して、AIペアプログラマーへいきなりコード変更を指示するのは危険です。画面の入力桁数だけを変えればよいのか、ファイル定義、プログラム内部の変数、パラメータ、帳票、外部連携ファイルまで変更する必要があるのかは、依頼文だけでは判断できません。

MCP連携を利用した開発フローは、次のように設計できます。

  1. IBM BobやAIエージェントが改修依頼を読み、対象となりそうな項目や機能を整理する。
  2. MCP経由でX-Analysisへ照会し、フィールド定義、使用プログラム、参照・更新関係、画面、帳票、バッチ、外部連携への波及を確認する。
  3. 直接影響、間接影響、追加確認が必要な箇所を分類し、修正計画とテスト観点を作成する。
  4. 人間が業務要件と影響範囲をレビューし、修正対象を確定する。
  5. IBM Bobが確定した範囲のコード修正、リファクタリング、テストコード生成を支援する。
  6. テスト結果から新たな影響が見つかった場合は、再びX-Analysisへ照会し、調査と修正を反復する。

この流れでは、X-Analysisが「調査」、IBM Bobが「計画・実装・テスト」を担当します。ただし両者は別々に動くのではなく、MCPによって1つの開発ループの中で連携します。

▲図4:MCP連携による調査・実装・テストの開発ループ

第5章:AIエージェントによる自動運用――まず自動化すべきは初動調査

MCP連携の応用は、開発だけにとどまりません。障害対応、仕様問い合わせ、改修依頼、テスト結果といった実務イベントを起点に、AIエージェントが調査を開始する「イベント駆動型」の運用にもつながります。

ただし、「自動運用」という言葉には注意が必要です。AIが判断して本番環境を勝手に変更することから始めるべきではありません。最初に自動化しやすく、効果も確認しやすいのは、初動調査と情報整理です。

5-1. watsonx OrchestrateをハブにしたAIエージェント運用例

このイベント駆動型の運用を実装する際、AIエージェントの連携を調整する基盤の例として、IBM watsonx Orchestrateが挙げられます。IBMはwatsonx Orchestrateを、エージェント、ツール、ワークフローを連携させ、AIエージェントの構築・オーケストレーション・制御を行う「制御プレーン」と位置づけています。

たとえばwatsonx Orchestrateが、障害ログ、改修依頼、仕様問い合わせ、テスト結果などのイベントを受け取り、内容に応じて複数のエージェントやツールへ作業を割り振る構成が考えられます。システムの構造調査が必要なときは、X-Analysis AIのMCPサーバーへ照会し、呼出関係、データフロー、影響範囲などの根拠を取得します。実装やテストが必要なときは、その調査結果をIBM BobなどのAIペアプログラマーや開発エージェントへ引き継ぎます。人間は、影響の大きい判断や本番変更の前にレビューと承認を行います。

ここで示すのは、watsonx OrchestrateとX-Analysis AI、IBM Bobを組み合わせた想定構成例です。X-Analysis専用の標準コネクターが提供されていることを意味するものではなく、実際の導入にはMCP接続、ツール登録、認証、イベント連携、権限、監査ログなどの個別設計が必要です。

▲図5:watsonx OrchestrateをハブとしたAIエージェント運用例(想定構成)

5-2. 障害ログを起点にした自動調査

ジョブの異常終了やエラーログをAIエージェントが受け取り、ログに含まれるジョブ名、プログラム名、ファイル名を抽出します。続いてMCP経由でX-Analysisへ問い合わせ、呼出元・呼出先、参照・更新ファイル、関連フィールド、後続バッチ、帳票、外部連携への影響を確認します。

AIは、その結果を原因候補、影響範囲、確認手順、再実行時の注意点として整理します。担当者はゼロから調べるのではなく、根拠のある初動調査結果をレビューして判断できます。

5-3. 問い合わせを起点にした仕様調査

「この金額はどの条件で計算されるのか」「この帳票の項目はどこから来ているのか」といった問い合わせに対して、AIエージェントが関連する画面、プログラム、ファイル、フィールド、ビジネスルールをX-Analysisでたどり、回答案と根拠を整理します。

さらに、調査結果を設計書、仕様メモ、FAQなどの文書へ展開できます。X-Analysisが「読む側」、AIエージェントが「まとめて書く側」を担うことで、調査からドキュメント作成までをつなげられます。

5-4. テスト結果を起点にした改善ループ

テストで想定外の結果が出た場合、AIエージェントが失敗したテスト、対象プログラム、使用データを整理し、X-Analysisから関連する呼出関係、データフロー、影響範囲を取得します。IBM Bobはその情報を使って修正候補や追加テストを提案し、人間が承認したうえで変更します。

障害、問い合わせ、改修、テストは、本来別々の作業ではありません。1つの調査結果を次の工程へ引き継ぎ、対応結果をナレッジへ戻すことで、継続的な改善ループになります。MCPは、そのループの中でAIエージェントとX-Analysisを結び付ける共通の接続方法になります。

第6章:IBM BobとX-Analysis AIは、より明確な補完関係へ

前回の記事では、IBM Bobは「コードを書く・直すツール」、X-Analysis AIは「システムを知るツール」と整理しました。この役割分担は、MCP対応によって変わるのではなく、むしろ明確になります。

IBM Bobには、質問に答えるAsk、実装前に設計するPlan、コードやファイルを変更するAgentといった作業モードがあります。MCPを介してX-Analysisの構造情報を利用できれば、それぞれのモードで次のような活用が考えられます。

Askでは、プログラム単体の説明だけでなく、そのプログラムがシステムのどこに位置し、何と関係しているかを確認する。

Planでは、変更対象と影響範囲をX-Analysisで確認したうえで、修正順序、移行手順、テスト計画を組み立てる。

Agentでは、人間が承認した計画に基づき、コード修正、リファクタリング、テスト生成、ドキュメント更新を実行する。

図6は、IBM BobとX-Analysis AIをMCP接続した実例です。BobのMCP設定で「xa-mcp-server」が接続済みであることを確認し、RPGプログラムであるCUSFMAINTの概要を照会すると、X-Analysisに蓄積された基本情報、プログラムの目的、ビジネスルール、処理フロー、ファンクションキーなどの解析情報がBobへ返されます。さらにBobは、取得した構造知識を使って、SVG形式のストラクチャチャートへ展開できます。

▲図6:IBM BobからX-Analysisを利用する実例――MCP接続、解析情報の取得、ストラクチャチャート生成

X-Analysis AIはBobの代わりにコードを書くわけではありません。BobもX-Analysisの代わりにアプリケーション全体を毎回解析する必要はありません。それぞれが得意な役割を担い、MCPで知識を受け渡すことに意味があります。

▲図7:IBM BobとX-Analysis AIの補完関係

第7章:AIエージェントに必要なガードレール

AIエージェントがX-Analysisを利用できるようになると、調査の速度と範囲は大きく広がります。一方で、自律性が高まるほど、どこまでAIへ任せるのかを設計する必要があります。

導入初期は、次のようなガードレールが重要です。

  • まずは参照と調査を中心にし、本番変更やデータ更新を自動実行させない。
  • 利用者と対象環境を認証し、参照できるリポジトリや機能を必要な範囲に絞る。
  • AIが取得した情報、調査手順、判断根拠を記録し、後から追跡できるようにする。
  • 影響範囲が広い場合、結果が曖昧な場合、業務判断が必要な場合は、人間の承認を必須にする。
  • AIの回答を結論として扱わず、X-Analysisの構造情報と実際の業務要件を照合する。

▲図8:AIエージェント運用のガードレール

IBM Bobの公式セキュリティガイダンスでも、MCPサーバーの認証・暗号化・アクセス制御、AIが行う変更やコマンドの確認が推奨されています。

X-AnalysisはAIに「正解」を自動的に与える魔法の道具ではありません。AIエージェントが調査を進めるための地図と根拠を提供し、調査範囲を制御するガードレールとして機能します。最終的な業務判断は人間が担う。この役割分担が重要です。

まとめ:「人が使う解析ツール」から「AIも使う知識基盤」へ

前回の記事では、X-Analysis AIとIBM BobのMCP連携を「近い将来の展望」として紹介しました。今回、その接続が実際に利用できる機能になりました。

この変化を一言で表すなら、X-Analysisが「人が使う解析ツール」から「AIも使うアプリケーション知識基盤」へ進化したということです。

開発者は、影響範囲を確認しながらIBM Bobでコードを修正できる。AIエージェントは、障害ログや改修依頼、問い合わせ、テスト結果を起点に、X-Analysisの構造情報を使って初動調査を進められる。調査結果は設計書やテスト観点、次のナレッジへつながっていく。

さらに、watsonx Orchestrateのようなオーケストレーション基盤をハブにすれば、X-Analysisによる構造調査、IBM Bobによる実装支援、周辺システムへの通知や記録を、ガバナンスを効かせながら1つの業務フローへ組み込む構成も考えられます。

重要なのは、AIにすべてを任せることではありません。X-Analysisがアプリケーション全体の構造を示し、AIペアプログラマーやAIエージェントがその構造を使って作業し、人間が業務上の判断と承認を行うことです。

IBM iには、長年の運用で蓄積された業務知識がプログラム、ファイル、画面、帳票、バッチの関係として埋め込まれています。MCP対応によって、その知識は人間だけでなくAIからも利用できるようになりました。

AI時代のIBM iモダナイゼーションで問われるのは、AIに何本のソースコードを読ませたかではありません。AIが必要なときに、どれだけ正確で再現性のある構造情報へたどり着けるかです。X-Analysis AIのMCP対応は、そのための新しい入口になると考えています。

注記・免責事項

本稿は2026年7月時点の公開情報およびX-Analysis AIのMCP機能をもとに構成しています。利用可能なMCPクライアント、接続方式、認証方法、提供機能は、製品バージョンや構成によって異なる場合があります。導入時は各製品の最新ドキュメントをご確認ください。

AIが生成したコード、調査結果、運用手順は、適用前に人間がレビューし、対象環境の開発・変更管理・セキュリティ方針に従ってください。

参考情報

著者紹介

GxP 阿野 幸裕様

株式会社GxP
モダナイゼーション部 部長
阿野 幸裕

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