株式会社アルファー・コミュニケーションズ 代表取締役 上見 弥 氏のあいさつで幕を開けたセミナー「進化するIBM i 〜生成AIで切り拓く次世代基幹システム〜」。続いて、日本アイ・ビー・エム株式会社 理事 テクノロジー事業本部 Power & Cloud 事業部 事業部長 原 寛世 氏が登壇し、「IBMと生成AIが導く、持続的成長のための価値創出」と題した講演が行われた。
原 氏の講演は、IBMテクノロジーの進化に関する解説からスタート。企業にとって貴重な資産である基幹システムを活かしたDX推進の重要性に触れつつ、IBM iがその基盤として最適である理由が示された。さらに、「IBM Bob」によるAI活用を通じたIBM iのスキル確保と生産性向上などについても具体的に語られ、来場者の関心を集めた。
IBM Bobが支援するAIの「仕様駆動型開発」とは
続いて、株式会社アルファー・コミュニケーションズ 取締役 岸本 秀樹 氏による「アルファー・コミュニケーションズのご紹介」をはさみ、同社 取締役 第二システム開発本部長 原田 修 氏が登壇し、「IBM Bobを使用したAI駆動型開発サービス」と題した講演を行った。
冒頭、原田 氏はIBM iユーザーが直面する共通課題として、技術者の高齢化やRPG人材の不足、ブラックボックス化した業務ロジック、5250中心のUIによる操作性の制約、さらにはDXやWeb対応への遅れなどを挙げた。そのうえで、これらの根底にある本質的な課題は「業務資産をいかに継承・活用するか」にあると指摘した。
その課題に対する解決策は、単にRPGを置き換えればよいという話ではないことは冒頭のIBM 原 氏の講演でも触れられた通りである。長年にわたり蓄積されてきた業務ルールや運用ノウハウを内包するRPGプログラムは業務資産として、その内容を正しく理解し、継承し、活用可能な形へと再構成することが最適解であり、その有効な手段としてAI活用があると説明。さらに、そこで有効なAI活用の方法として、単なるコード生成にとどまらず、「仕様を中心に開発を進める」という仕様駆動型開発の考え方が提示された。
仕様駆動型開発では、まず仕様を明確に定義し、それに基づいてAIが実装やテストを支援する。このアプローチにより、後から仕様を追跡しやすく、保守性や品質を確保しやすいという特長がある。品質・保守性・ガバナンスが重視される企業システムにおいては、「仕様を起点にAIを活用する」というこの手法との親和性は高い。とりわけ、長年蓄積された業務資産を扱うIBM i環境においては有効なアプローチと言える。
こうした仕様駆動型開発を実現する具体的なソリューションとして位置づけられるのがIBM Bobである、と原田 氏は述べた。
続いて、IBM Bobが支援する開発ライフサイクルの説明が行われた。具体的には、「Understand(RPG/COBOLの理解)」「Explain(説明・仕様書作成)」「Generate(コード生成)」「Unit Test(単体テスト生成)」「Refactor & Transform(モダナイズ支援)」という一連のプロセスを提示。
IBM Bobが、RPG資産の理解から仕様化、コード生成、テスト、さらにはモダナイゼーションに至るまでを一貫してカバーする、統合的な開発プラットフォームである点が強調された。
▲IBM Bobが支援する開発ライフサイクル
続いて、IBM Bobを用いたモダナイゼーションの具体的な進め方について説明が行われた。ポイントは、単なるコード変換ではなく、RPG資産に蓄積された業務ノウハウをいかに活かすかという点にある。
基幹システムを構成するRPGが内包する「業務資産」を継承・活用するためのアプローチとして、IBM Bobが各工程を支援する形で、以下のモダナイゼーションのステップが示された。
- RPG資産の解析(IBM Bobによるコード理解支援)
- As-Is仕様書の作成(現行業務の可視化を支援)
- To-Be仕様書の設計(要件整理・仕様設計を支援)
- AIによるコード生成・実装・テスト支援
- Webアプリケーションとしてリリース(開発成果の展開を支援)
講演では、この流れがサンプルプログラムによるデモを用いて具体的に提示された。従来の5250による黒画面の操作を、ボタン操作やGUIを備えたWeb画面へと変換するプロセスが紹介され、モダナイゼーション後のユーザー体験を含めた実践的なイメージが紹介された。
こうした取り組みは単なるWebアプリケーションの構築や操作性向上にとどまらず、As-Is/To-Be仕様書を整備することでシステム理解や引き継ぎが容易になり保守性が向上している点が大きな成果である。すなわち、モダナイゼーションの本質的な価値は「Web化」や「リファクタリング」にあるのではなく、「業務資産の継承と活用」にある。これにより、将来的な業務改善やシステム進化への展開が可能となることが示された講演であった。
IBM Bobを活用した開発のもたらす転換点とは
原田 氏の講演の後、株式会社アルファー・コミュニケーションズ インフラサービス部 三浦 治樹 氏による「お手軽に利用できるアルファーPowerクラウドのご紹介」をはさみ、同社 取締役 第一システム開発本部 保守開発部 副部長 在田 亮二 氏による「生成AIを活用した開発事例」と題した講演が行われた。
在田氏の講演は、先に登壇した原田氏の内容を踏まえ、「実際の業務課題を解決するWebシステム開発において、IBM Bob を活用することでどのような改善が実現できたのか」を、具体的な事例をもとに解説する内容となっていた。
講演冒頭では、IBM Bobが価値を発揮するのは開発工程にとどまらず、業務課題の整理といった上流工程から活用できる点が強調された。
ここで、現在、システム開発の現場では大きな転換点を迎えつつある、と在田氏は述べた。従来は要件定義からプログラミング、テスト、文書化までほぼすべてを開発者が中心となって進めていたものを、現在ではそのすべての工程において開発者とAIが協力して進める形に変わりつつあると指摘。それは、AIが開発者を置き換えるものではなく、開発効率や品質向上を支援する存在として活用されていると説明した。
さらに、AIの活用により、アイデア段階で試作品を迅速に作成し、利用者が早期に確認できる点にも言及。エンドユーザーと開発者が完成イメージを共有しやすくなり、手戻りが大幅に削減できることも、大きな価値のひとつとして示された。
その価値が具体的に発揮された事例として、あるグループ会社におけるシステム化の取り組みが紹介された。同社では、調達・発注業務を長年メールやExcel中心で運用しており、取引件数や管理情報の増加に伴い、業務効率の向上が大きな課題となっていた。
見積依頼管理、インベントリ管理、発注・納期管理といった各業務では、情報がメールやExcel、複数システムに分散していたため、過去案件の検索や進捗確認、関係部門との情報共有に手間がかかっていた。その結果、情報の所在が把握しづらく、状況把握に時間を要するという共通の課題が顕在化していた。
こうした背景から、個別最適ではなく業務全体を見直し、Webシステムによる情報の一元管理を実現する方針が打ち出された。
このシステム開発プロジェクトにおいて IBM Bob が採用されたが、その活用は単なるコード生成にとどまらない。要件定義から設計、開発、品質向上に至るまで、システム開発の幅広い工程で活用された点が特徴である。
具体的には、要件整理では業務担当者へのヒアリング内容の整理や、議事録をもとにした要件の抜け漏れチェック、検討事項の洗い出しを支援。設計フェーズではモック画面や処理フローのたたき台を早期に作成し、利用者との完成イメージのすり合わせに貢献した。さらに、開発段階では、ソースコードやテストコードの生成により作業効率を高め、品質面でもレビュー支援や改善提案、ドキュメント整備を通じて品質向上に寄与した。
このように、IBM Bob は開発プロセス全体を横断的に支援する形で活用されており、AIがシステムを自動で作成するのではなく、開発者が各工程においてAIを活用することにより効率的な開発ができることが、今回紹介されたこのシステム開発プロジェクト実例においても立証された。ここで得られた効果として、
- 件整理の効率化
- 設計・開発期間の短縮化
- ドキュメント作成負荷の軽減
- 品質向上への取り組み強化
などがあげられた。
「IBM Bobは開発者を置き換える存在ではない。業務知識やお客様要件を理解した開発者と、生成AIが協力することで、開発スピードと品質向上の両立が実現できる」という結論で、在田氏は講演を終えた。
セミナー後の懇親会でも、参加者同士で IBM i の将来や IBM Bob の可能性について活発な意見交換が続き、現場視点での期待の高さがうかがえた。生成AIの活用が、基幹システムを次のステージへと進化させる現実的な選択肢であることを実感する場となり、「生成AIで切り拓く次世代基幹システム」への期待を一層高める締めくくりとなった。
プログラムと登壇者
| 開会のご挨拶 | 株式会社アルファー・コミュニケーションズ 代表取締役 上見 弥 氏 |
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| IBMと生成AIが導く、持続的成長のための価値創出 | 日本アイ・ビー・エム株式会社 理事 Power & Cloud 事業部 事業部長 原 寛世 氏 |
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| アルファー・コミュニケーションズのご紹介 | 株式会社アルファー・コミュニケーションズ 取締役 第一システム開発本部長 岸本 秀樹 氏 |
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| IBM Bobを使用したAI駆動型開発サービス |
株式会社アルファー・コミュニケーションズ 執行役員 第二システム開発本部長 原田 修 氏 |
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| お手軽に利用できるアルファーPowerクラウドのご紹介 | 株式会社アルファー・コミュニケーションズ インフラサービス部 三浦 治樹 氏 |
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| 生成AIを活用した開発事例 | 株式会社アルファー・コミュニケーションズ 第一システム開発本部 保守開発部 副部長 在田 亮二 氏 |
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2026年7月31日に東京で開催された、株式会社アルファー・コミュニケーションズ主催のセミナー「進化するIBM i 〜生成AIで切り拓く次世代基幹システム〜」は、定員を上回る申し込みとなり、「IBM i とAI」に対する期待値の高さが伺われた。当レポートでは、当日披露された5つの講演のうち、AIとIBM Bobに関する2講演について詳しく紹介する。