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2026.06.11

AI戦略の前提を再考する ―IBM iが持つ本質的な強み―

AI戦略の前提を再考する ―IBM iが持つ本質的な強み―

日々届く様々な企業やメディアからのメールマガジジンで、「AI」という文字を見ない日はないと思います。そして、誰の目にも明らかな「AIの時代」にIBM i はどのように対処できるのでしょうか?

当サイトの読者の皆様であれば、「IBM i はAIとは無関係」とは考えないでしょう。しかし、企業の意思決定層が異なる認識であった場合、企業として立案するAI戦略との間に乖離が生じている可能性があります。

当サイトに掲載している「IBM i上のデータこそがAIにおける優位性」という翻訳記事によると、AI活用が進む海外であっても以下のような状況とのことなので、日本においてもIBM iがAIに対応可能だという認識が十分に共有されていない可能性は極めて高いと言えそうです。

(自社のAI戦略を問われた時のITリーダーの回答は)「データをクラウドに移行させましょう」とか、「まず、モダナイゼーションを行い、その次がAIです」といった回答です。また、IBM i向けのAIツールに関して言えば、市場に出回っているものの多くが、現在のプラットフォーム(IBM i)からの移行を前提としています。

そして、最終的な意思決定において「IBM i 外し」という事態を招く可能性すらあります。

当記事では、「AIの時代」におけるIBM iの現在地を事実関係に基づいて検証し、「AIの時代」にIBM i がもたらす価値と、AIがIBM i に対してもたらす価値の双方を検証します。

AIと IBM iとの直接連携を実現する構成要素

最初に押さえておきたい事実は、IBM i にはAIと直接連携する手段がある、ということです。IBM i は1988年の発表以来長い年月をかけて発展してきた独自OSですが、PASE for i と呼ばれるIBM i上で稼働する UNIX アプリケーション用の統合ランタイム環境が追加されたことにより、オープン系の様々な技術にも対応しています。そして、このPASE for iで稼働するオープンソースのソフトウェアやツールが用意されたことで、IBM i とAI の親和性が高くなったのです。

オープンソースのソフトウェアやツールの1つがMCPサーバーです。MCPサーバーとはLLM(大規模言語モデル)を外部ツールやデータソースと接続するためのインターフェースであり、IBM i 用のIBM i MCP Serverもオープンソースとして公開されています。

IBM i MCP Serverの登場によって、AIアシスタントがIBM iにアクセスできるようになったのです。現在、IBM i MCP Serverが接続可能なLLM / AIアシスタントには、Claude desktop、Claude code、Gemini CLI、VS Code、IBM Bobなどがあります。

そして、IBM i に格納されている膨大なデータにIBM i MCP Serverからアクセスするためには、Db2 for iへのアクセスを提供するデータベース・クライアントとして、Mapepireが必要となります。

MapepireはWebSocket接続を通じてSQLクエリー実行機能を提供します。そして、前述したIBM i MCPサーバーは、Mapepire抜きでは動作しません。このMapepireはJDBCやODBCといった従来型のデータベースアクセス手法と比べ、高速で軽量ゆえ低遅延応答を実現することから、AIエージェントやMCPツールの要求/応答パターンに最適化されています。

IBM i MCP ServerとMapepireのおかげで、IBM i は直接AIと連携することが可能となります。そして、何よりも、IBM i 上のデータをAIで活用するために「まずは、データをクラウドに移行」という必要が全くないことがお分かりいただけたかと思います。 それでは次に、具体的なAI活用イメージから IBM i と AI がもたらす価値について見ていきたいと思います。

IBM i 上のデータがAIにもたらす価値

生成AIであれ、AIエージェントであれ、AIとしての能力は学習に使用されるデータの品質に左右されます。そして、AIに品質の良い学習データを提供するために必要なことを検索すれば、「データ統合」「サイロ(データ分断)の解消」「データ・クレンジング」といったキーワードが表示されるでしょう。

これは、アプリケーションやシステムの導入が、全社最適ではなく部分最適で進められた結果、AIのために一貫性のある学習データを用意できない企業や組織が多いことを示しています。

一方、IBM i においては、優れた後方互換性に支えられた業務アプリケーションの継続的な使用によって、構造化され、整合性がとれたデータが長年にわたり蓄積されています。このIBM i 上のデータこそが、AIにとって質・量ともに優れた学習データなのです。

そして、この「構造化され、整合性がとれたデータ」にAIが直接アクセスできることも、IBM i のAIにおける優位性を裏付ける要素の一つと言えるでしょう。

「自分で考えて、自分で行動して、目標を達成するAI」であるAIエージェントは、LLMの推論能力をベースに状況を理解し、外部システムへのアクセスやAPI呼び出しを通じて実際のタスクを実行します。

そして、一般的に「AIエージェント対応」となるためには、開発・実行フレームワークと基盤モデルAPI以外に、既存システムとの連携用のAPIなどが必要となります。一方、IBM iの場合はDb2 for iとの数十年にわたる緊密な統合と、包括的なSQLサービスの存在によって、データ・アクセスは勿論のこと、セキュリティー設定からパフォーマンス指標、ジョブ管理に至るまで、事実上全てのシステム属性をSQL経由でクエリーすることや制御することが可能になっています。

つまり、AIエージェントの導入に際して、IBM iは、成熟したSQLインターフェース経由で、質・量ともに優れたデータへのリアルタイムかつダイレクトなアクセスを提供できます。これが、IBM i 上のデータがAIにもたらす価値なのです。

さらに付け加えれば、Db2 for i へSQLでアクセスすることにより、データ検索に際して、セキュリティー・モデル、オブジェクト権限、アクセス制御、監査証跡といった、IBM i が提供するデータガバナンスのフレームワークも利用可能です。すなわち、データへのアクセスに際して、外部ツールの追加不要で従来通りの安全性が担保されます。

利用場面としては例えば、営業担当者が、「前四半期の売上TOP20の中で今月注文のない取引先を抽出してキャンペーンメールを送信して」とか「この地区の売上予実対比を過去5年分で分析して」といったリクエストを自然言語でAIエージェントに投げかけると、IT部門の手を煩わすことなく最新レポートを取得できますし、販売促進に向けたアクションがとれるのです。

AIがIBM i にもたらす価値

前章ではIBM i 上のデータがAIにもたらす価値を見てきました。ここからは、AIがIBM i に対してもたらす価値について紹介します。

1. AIをIBM iのシステム運用に活用する

IT担当者がコマンド入力をして対応してきたセキュリティー違反ユーザーの監査や、パフォーマンス悪化の原因分析などのシステム管理は、AIに任せることが可能です。

利用イメージは、以下のとおりです。

  • 「完全なセキュリティー監査を実行してください」と指示するだけで、システムが自動的に関連するビューをクエリーし、データを分析し、結論を提示。
  • CLコマンドの入力やSQLのクエリー不要で、システムが自動的にパフォーマンスの問題の原因を調査。

上記は、QSYS2、QSYSTOOLSスキーマをSQLでアクセスすることにより、CLコマンドの実行と同等の情報が取得できる「IBM i サービス」によって実現できます。

この技術そのものは新しいものではありませんが、CLコマンドというIBM i 世界の独自技術を知らなくても、SQLによって以下のようなシステムの状況の確認が可能となります。

  • セキュリティー:ユーザー・プロファイル、権限管理、監査ログ
  • パフォーマンス:CPUメトリクス、メモリー・プール、ジョブ統計
  • ジョブ管理:ジョブ・キュー、サブシステム、アクティブ・ジョブ
  • ストレージ:ASP使用量、ディスク割り当て、オブジェクト・サイズ
  • PTF管理:フィックス管理、インストール履歴
  • スプール管理:出力待ち行列、印刷管理
  • メッセージ処理:システム・メッセージ、ジョブ・ログ、アラート
  •  ※上記は代表的な機能の一部であり、さらに多くの機能に対応しています。

「AI と IBM i との直接連携を実現する構成要素」の章で紹介したMapepireを用いて、Python関数でラップしたSQLを実行するだけで、上に列挙したようなシステムの情報をAIが取得できるのです。

実際、当サイトの記事「基本を超えて:IBM iのAIエージェント向けの高度な機能」によると、米国IBMのIBM iのチームは実用的な活用として、システムを監視し、問題を診断し、修正案を提示するAIエージェントや、セキュリティ設定を継続的に監査し、異常を警告するAIエージェント、データベースの管理、デプロイ、テストを支援するAIエージェントなど、システム管理者や開発者にとって役立つAIエージェントをすでに構築しているそうです。

2. AIがIBM iの技術者問題を解決する

本記事でここまで述べてきたデータ活用以外では、アプリケーション開発へのAIの活用が挙げられます。その背景には、IBM iのシステムやアプリケーションに関する運用・維持・開発といった業務を担う人材の課題があります。IBM i に造詣が深い人材の不足は世界的なIBM iのコミュニティーにおける課題であり、IBMは数年前からAIの活用による問題解決を目指していました。

IBMが、2026年3月に発表したエンタープライズ向けAIコーディング・エージェント『IBM Bob』と、同年6月末に出荷が開始されるIBM i 用のアドオン『IBM Bob Premium Package for i』が、AIの活用による問題解決が期待される具体的な製品です。

IBM Bobは、自然言語による指示を受けると、指示内容に合わせて適切に回答します。要件確定から仕様書生成、コード生成などあらゆる開発工程のサポートを行います。

IBM Bobが提供する開発者向けの主な機能

  • プログラムを解析し、説明を生成(RPGプログラムの簡単な説明を生成)
  • プログラミング言語をバージョンアップ、もしくはモダナイズ(レコードレベル・アクセスを指示する内容のコーディングをSQLに変換、従来のRPGプログラムをフリーフォームRPGへ変換)
  • コードの構造を最適化し、保守性を向上(変数名をわかりやすい名前に変更)
  • プログラムの作成(現代風のプログラムの生成支援、インラインでのコードの補足作成)

従って、IBM Bobの活用により、以下のようなことが実現できるのです。

  • 最新のプログラム仕様書を整備し、システムの属人性を排除
  • フリーフォームRPGやSQLによるDBアクセスに変換し、RPG経験者でなくてもわかりやすいシステムに
  • 新規開発要件に際しての開発効率を向上(株式会社イグアスにて38%の開発工数削減を実証)
  • 新入社員のプログラミング技術の向上を支援

当記事で目指した「AIの時代」におけるIBM i の現在地の検証の結果は、データ活用、システム運用、システム開発いずれの局面においてもIBM i はAI対応可能なプラットフォームである、となります。そして、AIの活用により、IBM i は今まで以上の価値の提供が可能となるのです。

筆者

株式会社イグアス
iWorld 編集部
細見 美鳥

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