Ensono社のオリバー・プレスランド氏が、自社のIT環境のモダナイゼーションを成功させるために、どのように組織を位置付けるかについて語ります。
ニール・ターディー
企業の IT 環境は複雑で常に進化し続けており、モダナイゼーションに対する唯一の教科書的アプローチなどというものは存在しません。Ensono社のグローバルコンサルティングサービスポートフォリオ担当バイスプレジデントであるオリバー・プレスランド氏は、このプロセスには組織が達成したい測定可能な成果、そしてそれらを実現するために必要な最適な経路および一連の変更を理解することが含まれると言います。
「IT 環境のモダナイゼーションおよび最適化プロセスは、機会と課題をもたらします」と彼は指摘します。「最終的に成功した実装であったとしても、予期せぬ結果につながる計画と仮定のギャップによって戒めの物語になるかも知れないので、細部への注意が非常に重要です。しかし一つ確かなのは、前に進むにはどこかから始めなければならないということです。」これを念頭に、プレスランド氏は3つの簡単な質問を提示して詳細を展開します。それに対する答えは、ITモダナイゼーションの意思決定の方針を設定するのに役立つでしょう。
質問1:目指す具体的な利点は何か?
プレスランド氏は、モダナイゼーションと最適化のいくつかの直接的な利点を特定していますが、これらの取り組みに伴って生じる機会を強調しています。
ビジネス上の利点と言えば、人々がしばしばテクノロジーシステムと直接的にはあまり関係がないと考えるのは、収益増大の機会‐つまり、新しい事業分野を成長させ、売り上げを伸ばし、顧客との関係を強化し、顧客に提供する価値を高める新しいデジタルの使用体験を提供することです。「とりわけ実際のレガシーアプリケーションでは、ビジネス機会を見つけたとしても、そのアプリケーションに邪魔される可能性があります。これは間違いなくモダナイゼーションを推進する力の1つです」とプレスランド氏は付け加えます。
ビジネス上の利点の定量化は、あらゆる最適化またはモダナイゼーションへの投資対効果の検討にとって鍵となります。プレスランド氏が提言するその他の成果は、従来のスキル不足と人件費に取り組むための投資対効果の検討、もっと迅速な新しいアプリケーション機能の提供、セキュリティの向上、リスクの軽減、データの収益化、アプリケーションのパフォーマンス向上、故障時間の減少によるコストの回避、そしてビジネスに対する開発の俊敏性という利点です。
これらの方針に沿って、プレスランド氏はメインフレームおよびミッドレンジシステムへの単純なアップグレードをモダナイゼーションのもう1つの機会と見ています。
加えて彼は、「これらの古いテクノロジーの一部が暫く更新されていなかったり、長期間サポートが無かったりしたかも知れないことを考えると、リスクの軽減はモダナイゼーションの大きくて重要な利点です」と言います。また、メインフレームやミッドレンジシステムは本質的にセキュアだという感覚が浸透しているようにも思えます。これらのシステムは、ほとんどのシステムよりもセキュリティを高くできますが、適切な手順を踏まない限り本質的にセキュアな訳ではありません。
質問2:選択肢に何があるか?
この記事を読んでいるあなたは、IBMシステムを直接サポートまたは保守しているか、この作業を行うITスタッフを監督しているかのどちらかである可能性があります。おそらく、あなたはIBMメインフレームの歴史および/またはIBM Power Systemsサーバーの進化を熟知しており、これらのソリューションが最先端の機能を採用し続け、これまで以上に優れた処理能力を提供していることを十分に認識している可能性が高いでしょう。もちろん、これらのシステムから部分的にまたは完全にワークロードを移行する組織もありますが、あなたはこれらのソリューションで生計を立てており、その比類なき価値を理解しています。
選択肢は数多くあり様々ですが、プラットフォーム全体ならびにその上で実行される各アプリケーションワークロードの両方に対する組織の戦略的見解と姿勢を確認することにより、選択肢を絞り込むことができます。ほとんどの組織は、選択肢として「維持」、「投資」、または「移行」の3つの潜在的なカテゴリに分類されます。
あなたが「維持」陣営にいる場合、プラットフォームまたはアプリケーションは会社にとって重要な働き者であり、多くの場合それはSoR(System of Records)です。主要なイノベーションに投資する予定はありませんが、高性能で、最適なキャパシティを持ち、セキュリティを保証し、そして可能な限り低コストで実行するプラットフォームを必要としています。
「プラットフォームが絶対的に重要であり、それがどこにも行かないと判断したら、システムを最適化し、モダナイゼーション手法を使用する必要があります」とプレスランド氏は言います。もしそうならば、ビジネス業績の期待値を達成し、キャパシティを効果的に管理し、適切に拡張してコストを押し上げない方法で成長と需要に対処することに重点的に取り組みます。
あなたの戦略が「維持」の場合は、メインフレームから離れた新しいSoE(System of Engagement)を開発しているチームともっと近づくことを考えたいと思うかも知れません。「過去1年間に2つか3つのお客様でこれを見てきました」とプレスランド氏は詳しく説明します。「メインフレームプラットフォームから離れた同社のデジタル開発者は、メインフレームと対話することで主要な顧客またはサプライチェーンのデータを取得するクラウドネイティブ技術の上に構築された、優れた新しい顧客体験を生み出しています。」
「1つのケースでは、チームはこの新しいクラウドを基盤とするアプリケーションを開発しました。大規模なマーケティングキャンペーンが実施され、大成功を収めました。しかし、突然、一晩でメインフレームが継ぎ目から軋み、コストが急騰しました」と彼は付け加えます。「誰もバックエンドの人々に『この新しいサービスで市場を熱狂させようとしているので、200% の成長が期待できる』とは知らせませんでした。」
投資が約束された場合、あなたのソフトウェア資産はおそらく既に最新の状態であり、組織はメインフレームをIT資産の中の同等のプレーヤーと見なします。
このカテゴリでは、次のような項目を検討する必要があります。
- メインフレームデータを残りのアプリケーション資産に接続するAPI
- メインフレームと他のシステムを横断するDevOpsツールとプロセス
- 全方位型暗号化を展開する
- スキルの課題を取り除くためレガシーコードとデータを変換する
- z上でJava/Db2開発、Linux、コンテナを有効化する
- 高度なデータ分析とAI
プラットフォームへの継続的な投資から新しい価値が生み出され、認識されています。
最後に、あなたの組織は移行の道を歩んでいるかも知れません。5年以内にメインフレームを廃止するというCIO/CFOのイニシアチブによるものであれ、選択したワークロードをプラットフォームから移行し、CPUを最も消費するアプリケーションのための余裕を作るための計画であれ、ユーザー使用体験の開発とグローバルな配信をもっと容易にするための単純なパブリッククラウドプラットフォームへのSoEの移行であれ、その道を歩んでいる可能性があります。
別のプラットフォームでのエミュレーターを検討していますが、ワークロードを実行するためにメインフレームのスキルとエミュレーターソフトウェアのライセンスが必要ですか? コードとデータを、開発スキルが豊富な最新の言語とデータベースに変換しますか? 開発者が新しい機能を簡単に開発し続けることができるようにコードをJavaまたはC#の適切な構文にリファクタリングしますか? まったく新しいクラウドネイティブ・アプリケーションを構築し、現在のアプリケーションの機能を飛び越え、既存のコード基盤を廃止しますか? データをパブリッククラウドに複製し、そこでスケーラブルなオンデマンド分析を使用して活用することに重点的に取り組みますか?
非常に多くの選択肢、コスト、そして曲がる場所を間違えるリスクがあります。これが最後の質問になります。
質問3:正しい進路の選択方法は?
達成しようとしている利点および望ましい結果の相対的な重要性に対する明確な考えをもつことで、決断を下すための確固たる基盤が得られます。
しかし、社内チームの有するスキルに、最終的に採用する可能性のある新しいテクノロジーの選択肢の完全な技術的経験、あるいは数百万行のコードと数千のデータベースの信頼性の高い大規模なモダナイゼーションの経験が含まれていることは滅多にありません。要するに、投資対効果検討書の作成と将来性のある技術的経路によってチームを導くために、専門家を招いてその支援を受けるのです。
重要なことは、複数のソリューションを提供している専門家からアドバイスを受けることです。テクノロジーベンダーは常に提供できる「ハンマー」 (または多分数個のハンマー) を持っていますが、釘を探しています。確実に適切な判断を下し、最良の結果が達成されるようにするために、特定のソリューションとは独立した助言から最大の恩恵を受けることができます。
どのような規模のモダナイゼーションプロジェクトであれ、着手する前に綿密な計画を立てることが重要です。プレスランド氏は、コンピューティング環境の技術コンテンツをカタログ化する単純なツールを導入するだけでは不十分だと強調します。彼は、企業が経験豊富なサービスプロバイダーによって実施される正式な評価を実施することを推奨しています。サービスプロバイダーと協力する際には、プロジェクトの開始前に概念実証も得るべきです。プレスランド氏は次のように述べています。「もしベンダーが何かができると言ったら、彼らにそれを証明させなさい。」
「達成したいビジネス成果を実現するには、アプリケーションを実行するための適切なコストと、アプリケーションを前進させるための選択肢を制限する可能性のあるライセンス契約を理解しなければなりません。複雑さをばらばらに解きほぐす必要があります」と彼は言います。
ITモダナイゼーションを成功させる戦略の立案に際しての考慮事項に関する記事をお届けします。今回の記事には、少しIBM zに寄った内容も含まれていますが、本質的にIBM iのユーザーにとっても大いに参考になる筈です。(編集部)