1.データの信憑性確保が、一層喫緊の課題に
国際的なサステナビリティ開示基準「ISSB基準」の公表を受け、国内ではその日本版「SSBJ基準」の開発が進行しています。
東証プライム企業(東京証券取引所プライム市場上場企業)を対象とし、2027年3月期よりSSBJ基準に準じた有価証券報告書での情報開示が義務化され始め、2028年3月期には開示情報に対する第三者保証の取得が金融商品取引法で義務付けられる見通しです。
一方、2026年に本格導入される温暖化ガス排出量取引制度については、その実効性を高めるための罰則を含む改正案が2025年の通常国会で提出され、厳格化が進む見込みです。このような動向に対処するために、企業には2025年中にESGデータの信憑性を確保するための体制の整備が求められます。
- 課題:ESGデータを正確に収集・管理できる体制を早急に整備すること
- 解決:多様な法規対応に耐えうる信憑性あるデータ管理体制構築が急務
2.非財務と財務情報の結合で業務負荷が激増
先述した国際的基準「ISSB基準」では、非財務情報(サステナビリティ情報開示)と財務情報を結合させる形で開示するよう定めており、サステナビリティ情報を財務諸表と同一の報告書にて、同一のタイミングで開示することが求められています。また、開示の中では、財務・非財務間で一貫した仮定や予測を用いて、サステナビリティ情報開示が財務情報に与える影響を説明する必要があり、第三者保証の監査で厳密に確認されることになります。
日本国内(SSBJ基準)でも同様の対応が求められる見込みであるため、企業ではサステナビリティ開示業務の複雑さやスピード感が急増し、業務負荷が激増する流れにあります。
- 課題:財務・非財務を結びつける形で、部門横断的な情報開示や脱炭素化施策の分析管理をタイムリーに行うこと
- 解決:全てのESG業務の一元管理と包括的な効率化
3.進みゆく開示対象データの多様化・広範化
開示すべきESGデータが多様化・広範化する潮流が顕在化しており、企業のESG管理体制には柔軟な対応力が極めて重要になります。
投資家のニーズ増大に伴い、ISSBは気候関連開示(IFRS S2)に続く新たな開示基準の開発を視野に、2024年4月に人的資本・生物多様性等の開示に関する調査計画を公表しました。このようなISSBによる開示対象の多様化・広範化の流れに、日本のSSBJも追従すると見込まれています。
- 課題:ISSB・ESRS等の基準・規制の変化に対し、柔軟かつ継続的に対応すること
- 解決:広範なデータタイプ対応と高いカスタマイズ性・拡張性
まとめ
ESG関連のデータをExcel等の表計算ソフトを用いて手作業で集めるのは困難であるとともに、データの一貫性や精度も問題になります。
「データの収集と整理の自動化」、「正確で信頼性の高いデータの提供」、「従業員の業務負荷の軽減」は、ESGに最適化されたデジタル・プラットフォームを使用することで可能となります。それだけでなく、ESGに最適化されたデジタル・プラットフォームは、企業や投資家にとって戦略的な意思決定を支援するツールとしても機能します。
本記事は、最終回であることを踏まえ、日本を中心とした内容とさせていただきましたが、ESGレポートは「日本国内限定」のような国や地域などに限定されるものではありません。
そのため、複雑なESGレポートの作成においては、データの収集、分析、レポート作成のプロセスを効率化し、正確な情報を提供することが不可欠となります。専門の高度なツールを活用することは、企業や組織のESGパフォーマンスを追跡し、戦略的な意思決定をサポートするために非常に有効です。
企業のESG目標達成に向けて、ESGに最適化されたデジタル・プラットフォームで、複雑なデータを一元管理し、透明性のある報告を迅速かつ正確に行う取り組みを、検討してみてはいかがでしょうか。
- 初回記事 『サステナブルな取り組みが求められている背景とは』
- 第2回記事 『サステナブルに取り組むための課題と企業に求められる責任』
関連情報
- ISSB基準[PDF]
- サステナビリティ基準委員会(SSBJ)
- 排出量取引制度[PDF]
- 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案(GX推進法)
- ISSBアジェンダの優先度に関する協議について[PDF]
①生物多様性に関する新プロジェクト概要、②人的資本に関する新プロジェクト概要 - ESGデータ管理プラットフォーム Envizi ESG Suite
気候変動を抑制するための重要な目標である「ネットゼロ」に関して、企業、政府、個人における取り組みが広がっています。特に、地球温暖化(気温上昇)を1.5度未満に抑えるために、2050年までに多くの国や企業がネットゼロを達成することを目指しています。
さらに、ネットゼロの達成に向けて、企業には、第三者保証・監査に耐えうるレベルでの非財務情報の管理と開示の実現が求められます。すなわち、企業に求められるのは財務情報と同等レベルの管理と開示であり、そのためには、企業価値を損なうことのない高品質な情報管理プロセスと、データ管理の仕組みが不可欠となります。
本記事では、サステナビリティの最新動向から、データ管理における課題と解決策を考察します。