2024年10月8日、日本アイ・ビー・エム株式会社は、IBM i の新しいテクノロジー・リフレッシュ(TR)、ならびにIBM Powerの機能拡張を発表しました。
これは毎年2回、春と秋に恒例となっているIBM i の定期的な機能拡張で、今回はIBM i V7R5用のTR5とV7R4用のTR11が発表になりました。
<IBMの発表書簡>
- IBM は、 IBM i 7.5 Technology Refresh 5 で新機能と機能拡張を追加します。
- IBM は、IBM i 7.4 Technology Refresh 11 で新機能と機能強化を追加しました。
今回発表の新しいTRは、一部のライセンス・プログラム製品を除きV7R5、V7R4ともに2024年11月22日から利用可能になります。
IBM i 7.5 TR5 ならびに 7.4 TR11においては、パフォーマンスの向上、使いやすさの改善などに加え、特に以下のコンポーネントにおいて多くの機能強化がなされています:
- SQL:IBM i サービスやSYSTOOLSなどの機能拡張
- アプリケーション開発:IBM Rational Developer Studio、IBM Rational Developer for i 9.8、Code for IBM i の機能拡張
- システム管理:Navigator for i , IBM i Access Client Solutionsなどの機能拡張
上記機能拡張について、サマリーをお届けします。それぞれの機能についての詳細は、以下のサイト(英文)をご参照ください。
1. SQL:IBM i サービスやSYSTOOLSなどの機能拡張
毎回どのメジャー・リリース、テクノロジー・リフレッシュにおいてもDb2 for i ならびにSQLは必ずと言っていいほど大きく機能拡張がなされています。
今回も、UUID生成の組込みスカラー関数など、SQLそのものの機能拡張に加え、IBM i のオブジェクトやシステム情報にSQLで簡単にアクセスできる「IBM i サービス」や、Db2 for i のサンプルやツールのコレクションを提供する「SYSTOOLS」などで機能拡張がなされています。
「IBM i サービス」では、監査ジャーナル・データを効率的に取得、分析、管理するためのユーザー・ベースのフィルタリング・オプションが強化されるとともに、COMPARE_IFS ツールが拡張され、IFS オブジェクトの属性を比較できるようになりました。また、STRSSTおよびDSTのConfigure Service Tools Server LAN Adapterで利用可能な情報を反映し、サービス・ツール・サーバー構成の1行サマリーを提供するSERVICE_TOOLS_SERVER_INFOビューの新規追加、IBM システム制限アラート機能の拡張等、IBM i 管理者によるシステム リソースの制御機能が強化されました。
「SYSTOOLS」スキーマでは以下のような機能拡張がなされています。
2. アプリケーション開発:IBM Rational Developer Studio、IBM Rational Developer for i 9.8、Code for IBM i の機能拡張
アプリケーション開発関連機能も、どのテクノロジー・リフレッシュでも毎回必ず強化されてきています。今回は以下の機能拡張が発表されています。
Rational Development Studio for i – RPG の機能強化
- 2桁年号の警告:2039年問題(IBMシステム内部では2桁西暦は1940年から2039年と認識されているため)に対応するため、ソースコードに2桁の年号を使用した場合、コンパイル時に警告またはエラーを出す機能が追加されました。
- 新しい組み込み関数:フィールドの最大値と最小値をそれぞれ返す %HIVAL 関数と %LOVAL 関数が追加されました。
- PROC 拡張:プロシージャ ON-EXIT セクション内で %PROC 組み込み関数を有効にしました。
これらRPGの機能拡張については以下のサイトに詳細が掲載されています(英文)。
https://www.ibm.com/support/pages/rpg-cafe
Rational Developer for i 9.8.0.3 : 利用可能日 2024年12月20日
- クエリの初期応答時間を高速化することで、IFS のパフォーマンスを大幅に向上させました。さらに、新しいテーブルビューで直感的な IFS ナビゲーションが可能になります。
- RDi 9.8.0.2 で改良されたインターフェイスを基に、デルタ比較オプションを拡張しました。 従来のLPEX比較に加え、RDiメンバー比較も選択できるようになり、柔軟性が向上しました。
- F1 タグのヘルプ:タグサポートに F1 ヘルプを追加することで、RDi タグに必要なヘルプをすばやく見つけることができます。
この他にもJDK関連の機能強化も予定されているRDiの詳細については以下のサイトをご参照ください(英文)。
https://www.ibm.com/support/pages/ibm-rational-developer-i-hub
Code for i の機能拡張
今一番の注目を集める Code for i についても、最新の IBM i 開発プラクティスをサポートする機能拡張が発表になっています。
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- VS Code – Db2 for i の機能拡張:ノートブックのサポート、複数の結果セット、SQL Error Logging Facility (SELF) ビューの統合など、機能が拡張されました。
- VS Code – Code for IBM i の機能拡張: デバッグ サービス管理の導入、言語サポートの拡張、ツールチップの強化、DBCS 処理の改善、および表示、物理、論理ファイル用のローカル ワークスペース コンパイル
- VS Code – RPGLE の機能拡張: rpglintコマンドライン・インターフェースの新バージョンをリリース
- ソース軌道:長い名前の SQL オブジェクトのサポート強化、ibmi-bob ルール生成の改良、レガシーソース名のサポート追加、ファイル変更監視モードの実装 Code for i はオープンソース・プロジェクトですので、IBMのリリース・サイクルに関わらず、随時機能拡張がなされています。詳細はGitHubのランディング・ページをご確認ください。
https://github.com/orgs/codefori/discussions/categories/announcements
https://github.com/codefori/vscode-rpgle/releases
https://github.com/codefori/vscode-db2i/releases
3. システム管理:IBM Navigator for i , IBM i Access Client Solutionsなどの機能拡張
今回のTRでは、IBM Navigator for i や Access Client Solutions(ACS)において、多くのシステム管理者にとって役立つ機能拡張が発表されています。
IBM Navigator for i
ライセンス情報ローエンド用IBM i オペレーティング・システムがサブスクリプション・ライセンスに移行し、従来の永続ライセンスと異なり、ユーザーはライセンスの有効期限に気を配らなければいけなくなりました。その管理にはIBM Navigator for i が役立ちます。下図のようにダッシュボード画面から簡単にOSの有効期限を確認できます。
システムのホームページやテーブル・ビューでの確認も可能です。
拡張ジョブ・スケジューラー (AJS)拡張ジョブスケジューラーの機能がIBM Navigator for i に完全に統合されました。
SQLビューView SQLパネルに、VSCodeを直接起動してSQLを実行する新しいオプションが追加されました。 VSCodeがシステムに接続されている場合、SQLが実行されます。 そうでない場合は、VSCodeのSQLでエディタが開きます。
セキュリティー/監査ジャーナルIBM Navigator for i では、2024 年 6 月 に監査ジャーナル データマートのサポートが追加されました。今回のTRでは、新しいフィルタリング機能により、データマートを必要に応じて詳細に設定することが可能になりました。
構成ビュー・ダイアログでは、ライブ・データまたはデータ・マートを使用するかどうか、表示するエントリー・タイプや日付、時間の範囲を選択することができます。
今回のTRでは、特にデータ・マートにおいてフィルタリングの機能が強化されています。
Navigatorでの監査ジャーナルの管理の詳細については、以下のサイトをご参照ください(英文)。
https://www.ibm.com/support/pages/node/6570755
パフォーマンス
パフォーマンス・データ・インベスティゲーター(PDI)のビューが強化されました。
- ASP グラフ:ASP グラフを拡張し、各独立 ASP またはユーザー ASP のビジー率、利用率、および応答時間の内訳を時系列で表示します。 これらのグラフは、新しいMonitorベースのSMASPファイルを活用し、Monitorsパッケージで利用可能です。
- CPU使用率:アクティブジョブ数に対するCPU使用率が利用可能になりました。
- ドリルダウンチャート:開始前ジョブによるCPU使用率のドリルダウンチャートが提供されるようになりました。
IBM i Access Client Solutions(ACS)1.1.9.6
IBM i Access Client Solutions も最新の1.1.9.6 において、様々な機能拡張がなされています。
- SQLスクリプトの実行において、カスタムユーザー例題の管理を拡張し、削除および置換オプションが追加され、またACS IFSパネルからRSSパネルへの.sqlファイルのドラッグ&ドロップも可能になりました。
- データ転送においては、IBM i データベース ファイルの作成時に、スキャン結果をダブルクリックして詳細を表示できるようになりました。
- 5250 ディスプレイ エミュレーターでは、画面履歴のスクリーン・アーカイブやアーカイブビューアにタイムスタンプ表示が追加されました。
- 保存されたスクリーン画像のファイル名に、オプションでタイムスタンプを含めることもできるようになりました。
その他のACSの機能拡張の詳細については、こちら(英文)も併せてご覧ください。
https://www.ibm.com/support/pages/ibm-i-access-acs-updates
4. IBM Powerハードウェアの機能拡張
新しいIBM iのTRの他、IBM Powerのハードウェアの機能拡張なども同日発表になっています。
発表書簡:IBMは、新しいIBM i Solution Edition、DDR5 Memory bundles for Healthcare Solution Edition、Power Enterprise Pools 2.0 の拡張を発表
IBM Power本体の主だった機能拡張としては、以下が発表されています。
- 新世代のエンタープライズ SSD PCIe4 NVMe U.2 モジュールと、 PCIe3 LP SASテープ・アダプター クアッドポート 6Gb x8 が、S1012 サーバーで利用可能になりました。 PCIe4 NVMe U.2モジュールは本年7月に発表になっていましたが、その際にはサポート対象外となっていたIBM Power S1012が、今回追加となっております。SASテープ・アダプターはAIXのみのサポートです。
- IBM Power E1080/E1050 で、PCIe Gen4 I/O 拡張ドロワー (#ENZ0)と NED24 NVMe 拡張ドロワー (#ESR0)を構成できる組み合わせが追加されました。
- IBM Power S1012(1-core 及び 4-core)と IBM Power S1014(4-core)で、IBM i Solution Edition を選択できるようになりました。
IBM i をお使いのお客様に朗報です。これまで海外もののISVソリューション購入が前提であり、馴染みが薄かった「IBM i Solution Edition」が、日本においてはISVソリューションの購入要件は免除されるようになりました。
対象となるのは、プロセッサーグループP05 のマシン:IBM Power S1014 (4コア) ならびにIBM Power S1012 (1コアおよび4コア)で、IBM i サブスクリプションのユーザー・ライセンス料金とIBM Rational Development Studio for i (5770-WDS) サブスクリプション・ユーザーの初回料金が割引価格にて提供されます。
IBM Rational Development Studio for i (5770-WDS) をサブスクリプション・ライセンスで購入検討される場合にはぜひ「IBM i Solution Edition」もご検討ください。 - Power Enterprise Pools 2.0 のサポートが強化され、エンタープライズ・プール 2.0 アプリケーションは、Cloud Management Consoleの最新バージョン (1.22) でサポートされるように強化されています。
この他、2024年10月1日には、IBM Powerのハードウェア価格改定(約5%の値下げ)が実施され、2025年1月にはE1080とE1050、ならびにEnterprise Pool 2.0の価格改定(約6%の値上げ)が予定されています。
5. Db2 Mirror for i 、PowerHA System Mirror for i のサブスクリプション期間ライセンスの発表
この他にも、2024年10月22日付で、IBM Db2 Mirror for i (5770-DBM) 、ならびにIBM PowerHA SystemMirror for i 7.5およびIBM PowerHA SystemMirror for i 7.4 Enterprise Editionで、お客様が期間ベースでこのライセンス・プログラム製品 (LPP) を取得できるようにする新しいサブスクリプション期間料金オプションが提供されるようになりました。
これらのサブスクリプション期間ライセンスは、他のサブスクリプション・ライセンス同様、IBM ソフトウェア・メンテナンス (SWMA) を料金に含めて、期間ベースで必要な分を支払う形態のもので、90日、1年、2年、3年、4年、5年の契約期間が利用可能となっています。
今回の発表によって、IBM i 関連のライセンス・ソフトウェアは、すべての製品について、サブスクリプション期間ライセンスが出揃ったことになります。
関連情報
- IBM i OSと関連ランセンス・プログラムのまとめ(2024年3月25日)
- IBM i 永続ライセンスの終了迫る(2024年2月21日更新)
- IBM i ライセンスはサブスクリプション型へ移行(2023年8月31日)
- IBM i のサブスクリプション・ライセンスの拡張(2023年2月28日)
- IBM i サブスクリプション・ライセンスのFAQ公開(2024年3月26日)
また、同じ発表書簡内で、新しいライセンス・ソフトウェア製品「IBM i Migrate While Active」も発表になっています。
「IBM i Migrate While Active」は、IBM i 論理パーティション(LPAR)を異なる場所へ移行する際に活躍します。「異なる場所」は、同一サーバー筐体内、データ・センター内、または IBM Cloud 上の IBM Power Virtual Server などのリモート・ロケーションのいずれでも構いません。
Migrate While Activeは、従来のDモードIPLやリストアに物理テープが使用できない場合、すなわちクラウド環境ヘの移行などに最適なソフトウェアで、IBM Cloudのソフトウェア・カタログでは既に利用可能となっています。この製品についての詳細は、以下のURLをご参照ください(英文)。
IBM i Migrate While Active:https://www.ibm.com/support/pages/node/7172591?myns=swgother&mynp=OCSWG60&mynp=OCSSLLPF&mynp=OCSSIEMH6&mync=E&cm_sp=swgother-_-OCSWG60-OCSSLLPF-OCSSIEMH6-_-E
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