2024年5月20日から23日に開催されたIBMのプレミア・イベントである「Think 2024」の参加レポートをお届けします。
Think 2024は、Think 2023が開催されたフロリダ州オーランドから、マサチューセッツ州ボストンへと場所を移して開催されました。
5月のボストンは、朝晩は少し冷えこみましたが、日中は天気に恵まれました。
また、日差しは強いものの過ごしやすい気温と湿度で、現地の方々は半袖など露出が多い装いであり、少し早い夏の香りを感じました。
写真の建物は、Think 2024会場「Boston Convention & Exhibition Center」です。
Think 2024のセッション間の空き時間を利用して多くの参加者が足を運んでいた展示ホールでは、Think Forum(展示・体験エリア)が開催されていました。Think Forumでは、watsonxを体験・体感できるブースなどが設置されており、会場は大変に賑わっていました。
▲Think Forumの会場全景図
▲受付やThink Forumの入り口に設置された「think」と「IBM」のオブジェ
世界91カ国から5,500名以上が参加したThink 2024。
日本からは150名以上が参加しており、日本のお客様とIBMビジネスパートナーのThinkへの関心の高さが伺われました。
初日の5月20日はIBMビジネスパートナー向けの「Partner Plus Day」、21日から23日はIBMビジネスパートナーに加えてお客様も参加する「Think Day」が開催されました。
Partner Plus Day ダイジェスト
- IBMはIBMパートナー各社との共創戦略のフォーカスポイントとして、ハイブリッドクラウドとAIに注力
- AIは、watsonx関連のビジネス($1B up)が増加 $1Tのクラウド市場も順調に成長
- AI活用に不可欠なハイブリッドクラウドにおける複雑性の増大からAutomationの需要が増加
- ModernizationとAutomationの需要に対応するために、IBMはハードウェアとソフトウェアへの投資を継続
- IBMの売上の50%を、IBMビジネスパートナーとの協業ビジネスにて実現する予定(IBM CEOのArvind Krishna氏のメッセージ)
Think 2024 ダイジェスト
Opening Keynote Sessionに登壇したIBM CEOのArvind Krishna氏は、「AIがイノベーションを実現し、生産性を向上させている」と発言するとともに、AI活用をより一層推進するためのIBM Graniteモデルのオープンソース化、オープンなAI戦略に基づく様々な新しいパートナーとの提携、などを発表しました。
さらに、AIを活用してIT運用を高度化するソリューション「IBM Concert」が発表されました。
1. IBMの基盤モデル(Granite)がオープンソースに
- AI活用をより一層推進するために、IBM Graniteモデルのオープンソース化を発表
- オープンソース化により、LLM(大規模言語モデル)の拡張に誰もが貢献できることを目指す
- InstructLabの提供によるモデル開発の民主化と、専門性の向上と進化を加速
2. AWS/Azure/Salesforce/SAPなどとAI協業を加速
- オープン化したIBMのAI戦略を軸にして、様々なビジネスパートナー(Adobe, AWS, Meta, Mistral AI, Salesforce, SAP)との連携を強化し、AIソリューションを提供
3. IBM ConcertとFinOpsでIT運用(ITOps)を高度化
- 82%の経営者:システムの複雑さがイノベーションを妨げている
- 55%の経営者:IT投資を正確に把握しきれていない
- 10億のアプリが2028年までに生成AIを活用して開発される
IBMはこの複雑さに対応するためのIT運用管理プラットフォームとして、AI と自動化を組み合わせた以下を提供。
- アプリケーション管理の可観測性の向上(Instana)
- アプリケーションリソース管理(Turbonomic)
- ネットワーク管理の自動化(SevOne, NS1, Hybrid Cloud Mesh)
- IT投資管理(Apptio)
- FinOpsを実現(ApptioとTurbonomic)
これらのIT運用管理プラットフォームを統合的に管理するとともに、インフラとアプリの360度ビューと管理高度化を実現するソリューション「IBM Concert」を発表。
IBM Concert
製品提供方法
- SaaS (IBM Cloud , AWS)
- オンプレミス版
製品計画
- Observability, Cost, Networking, Ticketing, Automationのデータソースとなる製品を随時サポート予定
IBM Concertは、AI を使用して多様な環境やツールから連携された複雑なデータを解釈し、データの関連性を自動的に理解して、アプリケーションの運用に必要な360 度ビューを、アプリケーションのライフサイクルに渡って提供します。
また、解釈し理解したデータに基づき、アプリケーションを最適に運用するために必要となる推奨アクションを提供します。
IT Automation ポートフォリオ
4. IBM ConcertとFinOpsでIT運用(ITOps)を高度化
IBMはこの複雑さに対応するためのIT運用管理プラットフォームとして、AI と自動化を組み合わせた以下を提供。
- 業務プロセスの変革と生産性/効率性を追求し、生成AI を「試行」から「活用の拡大」へシフト
- Tailormade /Automation/Integrattion されたAIアシスタントによる、生成AIの「活用の拡大」シフトを後押し
AI Assistantsファミリーとして下記製品・機能を提供。
- watsonx Orchestrate
- watsonx Assistant Builder
- watsonx Assistant for Z
- watsonx Code Assistant for Enterprise Java Application
今後、watsonx Assistantは、Planning Analytics、Apptio Cloudability、Maximo、Guardiumなど様々な製品に組み込まれていく予定。
5.AI活用事例が続々登場
Citi様 (Code)、ホンダ様(知見を生成AIに)、NTT Data様(watsonx Orchestrate)、みずほ銀行様 (ITOps)を筆頭に、AIを活用するお客様事例が多数紹介されました。
全てのセッションにおける共通のキーワードは、「AI」「Automation」「Hybrid Cloud」でした。ITに携わり、ITを活用する人々が向かうべき方向性は明確です。全力で進化し続けるIBMの力強いメッセージのシャワーを浴びて、多くの参加者が今後のビジネスのヒントを得られたのではないでしょうか。
昨今、大型イベントのWeb化が急速に進み、世界中どこからでも良質な情報を得る機会は増加しました。その一方で、会場に集う聴衆の熱気、講演者が発する強い訴求力(オーラ)と人々を魅了させる人間性などは、イベントが開催されている現場にいなければ、実感することが難しいかもしれません。これこそが、リアルのイベントに参加することの良さなのだと、Think 2024に参加して強く感じました。
今回、Think 2024に参加できたことは、筆者にとって本当にありがたい経験で、海外留学を経験した学生のように沢山の刺激を受けるとともにビジネスへの視点が大きく変化しました。Think 2024での学びは、筆者の心の中で大きな糧となることでしょう。
気が早いと言われそうですが、来年のThinkでは、どのような発表があるのかが、今から楽しみでなりません。来年の参加者のレポートを楽しみにして、筆者は筆をおきます。
著者紹介
杉岡 浩行 |
林 由希子 |
【番外編】会場の内外の様子をお伝えする「Think 2024 参加レポート番外編 ボストンの旅」。観光気分でお楽しみください。