世界各国から4,402名が参加!最先端テクノロジーの祭典「Think」とは?

Thinkとは、IBMの最大規模の年次カンファレンスです。
「IBM Think 2025」は、アメリカのマサチューセッツ州ボストンにて、2025年5月5日から5月8日(現地時間)にかけて開催されました。

Hynes Cpmvention Center
今年Thinkの会場となったのは、ボストンのバックベイ地区に位置する「Boston Hynes Convention Center」。このエリアは交通の利便性に優れており、徒歩圏内には、米大リーグ「Boston Red Sox」の本拠地として知られ、名物“グリーンモンスター”で有名な「Fenway Park」があります。

One fabricaで作られたパネル
イベント期間中は、100を超えるセッションや展示が行われ、AI、クラウド、サイバーセキュリティ、量子コンピューティングなど、多岐にわたる最先端の技術トピックが紹介されました。
会場に設置される展示物は、「アルミフレーム」に「布」をかぶせる「One fabrica」で作られていました。一般的な板とは違い再利用可能でサステナブルが意識されています。ちなみに、「One fabrica」は、昨秋、弊社が主催したイベント iEVO 2024でもブース設営に利用しました。

5月5日初日、あいにくの雨模様で肌寒さを感じる朝でしたが、会場へ向かう途中にはピンクと緑の色彩が美しいチェリーブロッサムが咲き、足元には花びらの絨毯が広がっていました。
季節の移ろいを感じながら迎えた初日。
午前8時、開演1時間前にもかかわらず、会場のレジストレーションエリアにはすでに多くの参加者が詰めかけ、熱気に包まれたスタートとなりました。
イベントの構成と参加者概要

Think 2025は以下の2部構成で実施されました。
- Partner Plus Day(5月5日):
IBMビジネスパートナー向けセッション - Think Day(5月6日〜) :
ビジネスパートナーとエンドユーザー企業向けセッション
参加者データ(2025年)
- 総参加者数:4,402名
- 日本からの参加者:234名
- パートナー企業:126名
- お客様(ユーザー):108名
IBMのグローバルな存在感と、業界をけん引するテクノロジーへの関心の高さを象徴するような規模での開催となりました。
キーノートセッション
IBM CEOのクリシュナ氏によるキーノートセッションでは、「AIが“実験段階”から“ビジネス価値の創出”に本格的に移行した。これからのAI活用では、エンタープライズAIの価値を最大化し、AIの構築・運用を効率化することで、自社のAIへの投資対効果を高め、ビジネスへの貢献を実現することが重要である」と述べられました。
このメッセージを踏まえ、AIエージェント構築を効率化するwatsonx Orchestrateのノーコード開発ツール「Agent ビルダー」 、 30倍のコストパフォーマンスを実現する大規模言語モデル(LLM) IBM Granite、AIアクセラレーターを搭載したIBM Telum IIプロセッサーを採用するIBM z17とIBM LinuxONE 5などが発表されました。
そして、効率的に目標を達成するために複数のAIエージェントを調整するAgent Orchestrationの価値を最大化させるためには、 Agent Orchestrationを支えるハイブリッドクラウドのインフラとともに、日々の基幹業務で生成・蓄積されるデータをAIが学習できるように安全に公開していくことや、運用管理を自動化することなどがキーポイントになると示されました。
Agent Orchestrationの価値を最大化させることで、新たなイノベーションが創出され、生産性と業務効率も拡張すると語られました。

CEO クリシュナ氏が伝えたいメッセージ~キーノートセッションのダイジェスト~

ポイント
- AIは試行的な取り組みから本格活用にシフト
- AIの競争優位性を主導するには、ハイブリッドクラウドとの組み合わせが鍵となる
- AIで活用できていない99%の企業内データの活用を、整備されたハイブリッドクラウドのインフラ上で促進することが非常に重要
- AIは生産性向上のための重要資源である
(IBM Graniteモデルの拡充
→小規模で領域特化型のAIモデルによって推論コストを下げつつ、正確性とスピードを向上することができる)
セッションの中では“AIとハイブリッドクラウド”のキーワードが何度も繰り返され、AI時代における重要性が強調されました。
そして、AIとハイブリッドクラウドを支える以下のプラットフォームが発表されました。
IBM watsonx Orchestrate :
企業向けAIエージェントのプラットフォーム(150以上の構築済みAgent、Agentビルダー)
IBM webMethods Integration:
ハイブリッドクラウドのシステム間連携のための統合プラットフォーム
HashiCorp:
ハイブリッドクラウドのインフラ環境の構築運用自動化を推進する製品群
データセンター/エッジ・ソリューション:
Lumen Technologiesとのパートナーシップによるエッジでの推論実現
ハイブリッドクラウド・インフラ:
Red Hat OpenShift、IBM z17、IBM LinuxONE 5、IBM Quantum System Two
7人のキーマンが提唱するキーワード ~キーノート・アジェンダ~
CEOクリシュナ氏のキーノートを皮切りに、Think 2025開催期間中、キーノートには7名のキーマンが登壇しました。
すべてキーノートに共通するテーマとして、AIに関するIBMの方針、テクノロジーの紹介、未来が語られました。
Keynote-1 | エンタープライズAIの真価を最大限に引き出す |
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AIとハイブリッドクラウドを支えるプラットフォームの発表 | |
Keynote-2 | なぜ急ぐ? AIと自動化によるハイブリッド環境での変革 |
AIとハイブリッドクラウドを支えるプラットフォームの発表 | |
Keynote-3 | 企業向けAIエージェントで実現する新しい働き方の未来 |
企業のAI活用現場では『AIエージェント』が台頭し始めている、System of Intelligenceの時代へ移り変わってゆく | |
Keynote-4 | ハイブリッドクラウド活用でAIの価値を大規模に実現 |
AIの価値を最大化するためには、適切なアーキテクチャーを構築する必要がある。 Linux専用メインフレームの第5世代:IBM LinuxONE Emperor 5 を発表 |
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Keynote-5 | 企業データは生成AIにとって最も強力な武器となる |
生成AIを支えるためにはデータが不可欠。
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Keynote-6 | AIを活用した持続的な競争優位性の確立 |
従来のITやデータ分析を超えてAIの変革力を活用する戦略的な転換が必要である。 人事AIではOracleとのパートナーシップを強化(Oracle Human Capital ManagementとIBM watsonx Orchestrateを連携) |
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Keynote-7 | コンピューティングの未来 ~高精度・AI・量子~ |
ハイパフォーマンス・コンピューティング、AI、量子を組み合わせて価値を提供するビジネスのためのGenerative Computingを支えるGranite基盤モデルの拡充(Granite-4.0を発表) |
体感型展示が集結した「Forum」会場
会場2階に設けられた「Forum」エリアでは、今回のThink 2025で発表された最新ソリューションやユーザー事例に直接触れることができる展示が多数並び、連日多くの来場者で賑わっていました。
特に目を引いたのは、ゲーム形式でテクノロジーを体感できるインタラクティブな展示の数々。
複雑な技術を楽しみながら学べる工夫が施されており、参加者の理解を深める仕掛けとして高く評価されていました。
会場全体にはネットワーキングスペースが多く設けられており、各国の方々が会話を楽しんでいたのも印象的でした。


Forum会場で注目を集めたフェラーリのF1マシン

会場に展示されたF1カー

IBMロゴを発見!
「Forum」会場の中でも、ひときわ多くの人だかりができていたのがスポーツ×テクノロジーの展示コーナー。その中心にあったのは、実際のF1レースで使用されたフェラーリのF1マシンの展示です。
真紅のボディに掲載されているスポンサー・ロゴの中に、IBMのロゴも五ヵ所に掲載されていました。
来場者が記念撮影をしたり、IBMロゴを探して盛り上がるなど、大いに注目を集めていました。
IBM ニュースリリースによると、IBMは2024年11月より、スクーデリア・フェラーリの公式ファンエンゲージメントおよびデータ分析パートナー(プラチナパートナー)として提携を開始しており、 IBMの生成AIおよび分析技術は、フェラーリ公式アプリの以下のような新機能にも活用されているとのことです。
- レースの総括情報や過去データの自動生成
- レース後のインサイト提供
- インタラクティブな投票機能
- ファンメッセージ送信機能
- 歴代の象徴的なレースハイライト表示 など
テクノロジーによってスポーツ観戦体験を進化させる事例として、多くの参加者の関心を集めていました。
注目製品発表:エンタープライズAI時代のインフラ「IBM LinuxONE Emperor 5」

クリシュナ氏のメッセージの中で発表されたのが、次世代Linux専用メインフレーム
「IBM LinuxONE Emperor 5」。
この最新モデルは、IBM LinuxONEシリーズの第5世代にあたり、AI時代に対応した機能強化が図られています。説明員によると、新プロセッサー「Telum II」を搭載したことで、AI処理性能は前世代比で4倍に向上。リアルタイム推論やAIモデルの統合活用に最適化されています。
また、システムの統合によってTCO(総所有コスト)を最大44%削減し99.999999%という高可用性を実現。セキュリティーや安定性、エネルギー効率にも優れた設計となっていることから、サステナビリティー面でも優れています。さらに特筆すべき点は、空冷と水冷のハイブリッド冷却システムを採用していることです。限られた設置スペースでも熱問題に対応できる柔軟な設計が施されており、データセンターやAI処理基盤の運用における信頼性の高さを強く印象づけました。
世界中のパートナーに向けて価値を発信 ~Partner Plus Day~
開会初日5/5開催のPartner Plus Dayでは、ジェネラルマネージャーのヨセフ氏によるオープニングセッションから、ビルド(組み込み)、セル(再販)、サービス(モダナイゼーション)などの様々なパートナーシップにより、市場にAIの利用を拡大させていく、というメッセージが表明されました。
その中で、以下の発表がありました。
- ビルドパートナーとの協業
- エージェンティックAI(状況を判断し、自律的に意思決定を行い、自動的に実行するAI)の推進
- 組み込み(buildの推進)、IBM watsonxへの組み込み エージェントによるカタログへの製品追加
- 再販パートナーとの協業
販路拡大を目指すためには、①Cross-Sell、②Up-Sellの強化が必要
Cross-Sellの強化:
IBM Turbonomicが連携をサポートしているソリューションとの組み合わせにより、サービス規模を向上。顧客への新たなサービスを提供し、顧客満足度の向上と売り上げの増加を実現
Up-Sellの強化:
IBM Instana Observabilityの提案により、アプリケーション・リソースの最適化を実現。最適化後、新たな価値(追加の機能やサービス)を提供することで、販売拡大を図る - IBM Partner portal(Plus) へ Live AI Assistant を実装
- パスワード登録の自動化、契約締結の短縮化 など
クリシュナ氏によるパートナーに向けたメッセージ

- IBMは「世界をより良くするカタリスト(触媒)」となる
コンピュータ・社会・経済の未来をエコシステムを中心に解決、支援していく - テクノロジー、イノベーションへのさらなる投資を進める
- ハイブリッドクラウドにフォーカスする
IBMの方針を理解し、日本のパートナーとしてよりよい社会の実現に向けて、IBMの優れたテクノロジーを社会に浸透させる役割を担ってゆくことの重要性と責任を改めて実感したセッションでした。
【編集後記】Thinkでの出会い
人の感情は世界共通!ランニングで学んだこと

ランニング中
チャールズ川沿いの公園にて

ランニング後、Briana Frank氏と
イベント最終日、IBM Cloud Design & Productのバイスプレジデント、Briana Frank氏が主催する特別プログラム「Think Wellness Run」に参加しました。
早朝6時、会場近くのウェスティンホテルに集まったのは、IBM社員やパートナー企業、お客様など世界各国からのランナー約20名。ボストン市内を流れるチャールズ川沿いのコースを、約6kmにわたって駆け抜けました。
この日は、それまでの雨が嘘のように晴れわたり、清々しい朝の光に包まれたボストンの街並みが美しく、景色を楽しみながらのランニングは、まさに忘れられない体験となりました。
私たちは前日に購入したThink 2025の公式Tシャツに身を包み、気合十分。あなたのペースで大丈夫!と記載されたプログラムの紹介文を信じつつ、スタート地点に向かうと…。なんと全員がマラソン上級者という事態に。予想外の展開に驚きつつも、グローバルIBMの仲間たちが優しくサポートしてくれたおかげで、無事に完走することができました。
国籍や言語が違っても、「同じ目標に向かって助け合いながら走り抜く」というこの体験は達成感だけではなく、ゴール後に交わした「お疲れさま!」「最高だったね!」という笑顔と一体感に、「感情は世界共通」だというシンプルな気づきと、組織の中でもこの感情を共有することの大切さに気付かされた貴重な経験でした。
Think 会場の一角でボランティア

Think会場の一角に、カラフルなリュックサックが大量に並ぶコーナーを見つけました。近づいてみると、そこには鉛筆や消しゴム、ノートといった学用品が詰まったキットがずらり。これはボストンの子どもたちに学用品を寄付し、家庭の教育費負担を軽減することを目的としたボランティアプログラムでした。
「5分でできるからぜひ参加してほしい!」というスタッフの声に誘われ、参加。
鉛筆やペンなどをリュックに詰め、心を込めたメッセージカードを書いて完成させました。
シンプルな作業ですが、どんなメッセージを添えたら喜んでもらえるか、少し悩みながら心を込めた一筆。完成品をスタッフに手渡すと、「ありがとう!あなたと僕は友達だよ」と温かく嬉しい言葉が返ってきました。
異なる国や文化の人々が集まるIBM Thinkの場で、「誰かを助けたい」という気持ちは世界共通だと強く感じたひととき。
テクノロジーの最前線だけでなく、人と人のつながりや温かさも大切にされているイベントであることを実感しました。
筆者
株式会社イグアス パートナービジネス事業部 中部西日本営業本部 中部支店 竹内 芳樹 |
株式会社イグアス パートナービジネス事業部 東日本営業本部 第二営業部 尾澤 輝門 |
株式会社イグアス 管理統括本部 広報・マーケティング部 市川 麻未 |