1.AIファースト企業への変革に不可欠なAI運用モデル
「AI革命のDay Zero(始まりの日)にいる今、AIファースト企業への変革が重要である」と主張されたThink 2026のオープニング・キーノート。
IBM CEOのアービンド・クリシュナ氏は、「AIが変えたのはテクノロジーではなく、ビジネスそのものである」と語るとともに、先行企業と追随企業との間で格差が急速に拡大しているので、パイロットやPoC(概念実証)に留まっていてはならないと続けました。
Think 2025のオープニング・キーノートで強調されていた「AIが実験段階からビジネス価値の創出へ本格的に移行する1年」というメッセージから1年を経た今、読者の皆様もAIが生活や仕事に組み込まれつつあることを実感していらっしゃると思います。
Think 2026では、「既存のビジネスプロセスにAIを組み込む」のではなく、「プロセス改革を行い、AIを前提に企業や組織が設計」されることが、勝ち組と負け組を分ける決定的要因であると指摘されていました。まさに、「AIファースト企業」へと変革できるか否かが重要であり、企業の競争力を左右する転換点ということなのです。
そして、「AIファースト企業」への変革のためにIBMが提唱しているのが「AI運用モデル(The AI Operating Model)」です。
「AI運用モデル」は、下図のIntelligence(リアルタイムで信頼できるデータ)、Action(全社横断のアクション)、Operation(エンドツーエンドで動く運用)、Trust(組み込まれた信頼性)の4領域からなります。

それぞれの領域について補足すると
- Intelligence:データ基盤として企業や組織全体で情報をリアルタイムに共有
[対応製品]
IBM Confluent(データ・ストリーミング・プラットフォーム)
IBM watsonx data(データレイクハウス) - Action:複数のエージェントを組み合わせ、同時並行的に管理
[対応製品]
IBM Bob(AIコーディング・エージェント)
IBM watsonx Orchestrate(AIエージェント・プラットフォーム) - Operations:サイロ化された業務アプリケーションの可視化、インテリジェントなシステム運用を可能にする自動化技術
[対応製品]
IBM Concert(エージェント型統合IT運用プラットフォーム)
IBM Apptio(IT財務管理) - Trust:システム全体にガバナンスを組み込む
[対応製品]
IBM Vault(機密情報の一元管理・保護)
IBM Sovereign Core(デジタル主権基盤)
となります。
2.企業に求められる3つの力
IBM CEOのアービンド・クリシュナ氏は、企業にとって今後重要となる「3つの力」として、AI、ハイブリッドクラウド、量子コンピューティングを提示しました。
AIは前章で紹介した「AIファースト企業」への変革を指しているため、本章では割愛します。
ハイブリッドクラウドは、「データ」、「モデル」、「推論」を最適な場所で動かすことを念頭に、自社に適切な基盤をハイブリッドクラウドのアーキテクチャーを採用して構築しましょう、という主旨です。
そして、量子コンピューティングについては、いつ、どれだけ早く実現するかという段階に移っていることから、将来のコンピューティング基盤に向けた先行投資という観点で紹介されました。
3. 「AIファースト企業」への変革に向けて、取り組むべきことは?
AIの本番活用が拡大すると言われている2026年の今、「AIファースト企業」への変革を行うために、私たちは何にどう取り組むべきなのでしょうか。
Think 2026では、AIを導入して成功した事例が数多く紹介されていました。検証段階を終えたAIの本番環境での活用が活発化しており、効果も出ています。欧米諸国を中心にAIの実用化が進むとともに、「AIファースト企業」を目指してAIのための投資を準備している企業が数多く存在します。
また、Think 2026で事例発表を行った企業は、「新しいものを導入すること」に躊躇が無く、「良いと思ったのはすぐに取り入れる」という判断が迅速であることも共通していました。また、「先々の明るい将来に向けて」先行的にも大きく投資する(投資を回収できる)という判断力に驚きを感じました。そして、「AIファースト」の考えのもと、現状の業務を究極まで効率化してAIに任せ、結果として生じた余剰リソースを他の「生産性の高い」業務に移行させることを実施しています。

相対的に、私達のいる日本という国が、AI活用において遅れをとっているような感じが伺えました。それでも、最近は利用が増えているようですが、ある調査会社の調査では、金融・保険業、製造業などにおけるAI利用率は調査した8か国の中で日本が最も低いというデータも出ています。
日本企業が「AIファースト企業」を目指すためには、Think 2026で事例発表を行った企業のようなスピード感で、「PoC」期間を短くし、「本番環境」を想定した実環境での稼働を急ぐべきでしょう。
そして、日本の企業数の99%以上と言われている中小企業での「AI活用」を可能な限り実現することで、喫緊の課題である高齢化や人材不足への対応だけでなく、生産性が高くて強い「日本」が実現できるのではないかと考えます。実現には、中小企業を支援するプログラムの見直しや向上、基盤の準備が不可欠でしょうし、「制度」、「人材育成」、「コスト」など政府が関わる「底上げ」が必要となります。
AIファースト企業への変革が重要と主張する米国IBMは、グローバル戦略において「日本」という拠点が極めて重要な役割を担っていると認識していると思います。日本企業特有のニーズに即したAI製品の開発・改良を加速し、包括的パートナーシップによる企業価値の共創と変革の共同実行を推進していく「IBM AI Lab Japan(日本発AIイノベーションの共創拠点)」が設立されたことが証左と言えるでしょう。
もちろん、ユーザー企業の皆様の課題を解決するための提案を行う弊社を含む「ディーラー側」関係者は、日々進化しているテクノロジーを用いて、PoCを越えた「本番環境」に即適用できる信頼できる仕組みの実現に向けて、スピード感をもって対応していくべきでしょう。
そして、ユーザー企業の皆様におかれましても、弊社を含む「ディーラー側」関係者からの提案を「新たなチャレンジ」としてご判断いただき、躊躇することなく取り組んでいただけるよう、AI活用を捉えていただければと考えます。
4.改めて、Think 2026とは?
本記事は、前置き抜きで本論から開始しましたので、ここからはカンファレンスとしてのThink 2026を振り返ります。
「IBM Think」は、世界各地から多数の来場者が毎年訪れるIBMも最大級のカンファレンスです。本年のIBM Think2026は、アメリカのマサチューセッツ州ボストンにて、2026年5月4日から5月7日(現地時間)の4日間開催されました。
参加者データ(2026年)
- 総参加者数:80カ国以上から5,000名超
- 日本からの参加者:250名以上(お客様・パートナー企業)
- セッション・展示数:100を超えるテクニカルセッション、ハンズオン、エコシステム展示
イベント構成
- Partner Plus Day(5月4日):IBMビジネスパートナー向けのセッション
- Think Day(5月5日〜7日):ビジネスパートナーおよびエンドユーザー企業向けセッション
Think2026全体メッセージサマリー

キーノートなど
主要な発表内容、キーノートの概要は、日本IBMのサイトに掲載されている「Think 2026の振り返り」を参照ください。
5.開催地ボストンと会場について

開催地のボストンは、アメリカ最古の植物園の一つであるパブリックガーデン、ボストンコモンなどの豊かな自然や歴史的な建造物が多いシックな街並みと、近代的な高層ビルのコントラストが印象的な自然と共存しているアメリカ東海岸屈指の都市です。
パブリックガーデンは約97,000平方 (東京ドーム約2個分)の自然あふれる大きな公園です。早朝から散歩やランニングをする方も多く、日本でなかなか見かけることのできない野生のリスにも会うことができます。
会場となった「Thomas M. Menino Convention & Exhibition Center」へはSouth Stationで下車した後、Summer Street Bridgeを渡り、ほどなくすると会場が見えてきます。初日から天気に恵まれ、ホテルから会場まで毎日歩いて向かうことができ、ボストンの街並みを存分に楽しむことができました。
【編集後記】 Think 2026で見えたもの
Think会場での体験
初めてThinkのイベントに参加して、会場の大きさに驚きました。広い会場のため、点々と座るスペースも用意されており、販売はされていませんでしたが、かわいいクッションもありました。
展示コーナーの一部では、美味しい珈琲やフレッシュジュースの配布が行われていました。

最終日のClosing Reception PartyではDJブースが登場。国境を超えた盛り上がりとなり、楽しい時間を過ごせました。

会場までの街並み
宿泊したホテルからThink会場までは、徒歩30分ほどで、外を見ると快晴でお散歩日和でしたので、歩いて会場へ向かいました。
日本とは違う18世紀〜19世紀の面影を色濃く残す歴史的な建物、石畳の小道、そして今なお現役で使われているガス灯がとても可愛く、駅までの道のりは時間を感じませんでした。
実際には使ってないと思いますが、オシャレと感じる雰囲気がある「途中までしかない外階段」もありました。

有名なトリニティ教会が近所でしたので足を運んでみました。すぐ隣には、全面ガラス張りの超高層ビル「200 クラレンドン・ストリート」がそびえ立っていて歴史的建物と近代的建物の対比が圧巻でした。
なお、「200 クラレンドン・ストリート」のガラスに反射させた状態の教会が写りこむのが人気の撮影テクニックとの事なので挑戦してみました。建物が大きく苦戦しましたが、いかがでしょうか?

Bostonでの観光
Thinkの会場は広いため、歩き疲れます。ヒールで参加していた私は、就寝時は着圧ソックスを履いていたのですが、足は限界。Bostonにはコンバースの本店があるとの情報を入手してスニーカーを購入してきました。

Bostonの食事といえば、ロブスター&クラムチャウダーです。サイドメニューの量が多くて驚きましたが、どの料理もとても美味しかったです。その他ですと、エッグベネディクトは絶品でした…!

筆者
| 株式会社イグアス パートナービジネス事業部 営業統括本部長 名田 衛司 |
株式会社イグアス パートナービジネス事業部 クラウド&AI 営業開発部 前多 さゆり |
| 株式会社イグアス パートナービジネス事業部 営業統括本部 パートナー営業部 小山 亮 |
株式会社イグアス 業務管理本部 第二フルフィルメントセンター 山口 千尋 |












参考)日本には、IBM Quantum System One「ibm_kawasaki」とIBM Quantum System Two「ibm_kobe」が設置されております。