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2024.07.16
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IBMのTonny Bastiaansが語る Power VSビジネスの成長の背景と今後の予定

IBMのTonny Bastiaansが語る Power VSビジネスの成長の背景と今後の予定

2024年5月20日から4日間にわたって開催された世界最大級のIBM i イベント「COMMON POWERUp 2024」。会場には、IBMからも大勢のIBM i 開発者や事業責任者が参加していました。

iWorld 事務局は、IBM i のクラウドサービスであるIBM Power Virtual Server(以下Power VS)の事業責任者 Tonny Bastiaans氏にインタビューを行い、Power VSのビジネスが全世界で好調である背景や、Power VSの活用例、今後の拡張予定などについてお話を伺いました。

※併せて読みたい:
「COMMON POWERUp 2024 参加レポート」
「IBMのDouglas GibbsとSteve Willが語るIBM i の現在と未来」

笑顔でインタビューに答えるTonny Bastiaans氏


2桁成長を続けるPower VSビジネス

iWorld事務局(以降は、「iWorld」と記述):
Tonnyさんは全世界のPower VSの事業責任者とお伺いしました。COMMONのオープニング・セッションによると、Power VSは連続して2桁成長を遂げており、その成長率はオンプレミスのサーバーの成長率を超えているというお話ですね?

Tonny Bastiaans(以降は「Tonny」と記述):
その通りです。毎年、毎四半期ごとにPower VSのビジネスが成長していることを実感しています。Power VSを利用するお客様は増え続けていますし、Power VS に移行するお客様にはIBM iユーザーも当然含まれています。

iWorld:
本番稼働であるとか、テスト利用、あるいは災害対策など、その用途はどのようなものが多いのでしょうか?

Tonny:
テスト利用、災害対策、本番稼働の3つのユースケースで採用されています。

クラウドへの最初の一歩を踏み出そうとしているお客様が、「よし、テストPoCをやってみよう。クラウドを実際に使ってみて、そのコンセプトが私の会社でうまく機能することを確認したい。」と考えて、PoC環境を実際に構築しています。

最近では、クラウドにおけるHAとDRソリューションの採用も増えています。これまで2台体制のHAとDRソリューションを構築できなかった企業にとって、Power VSは強力なツールとなり得るのです。つまり、IBM iの本番環境はオンプレミスに持ち、HAとDRソリューションはクラウドにセットアップするという対応が実現できるのです。

災害対策での採用の増加は、全世界的な気候変動も関係しています。私は、普段はヨーロッパに住んでいるのですが、異常気象が原因の山火事や、短時間の大量の降雨が原因の洪水が頻繁に起こるようになりました。最も安全な環境を誇るノルウェーでさえ、昨年の夏に大きな洪水に襲われました。このような気候変動に直面して、自社のデータはどこにあるのか、安全性はどうなのか、災害に備えるためのDRソリューションをどのように導入するかを検討する必要があると、お客様は考えているのです。

さらに、地政学的な問題も考慮する必要があります。ヨーロッパの人々は、ウクライナや中東が安定していないことを目の当たりにしています。他の地域の人々にとっても、長期的な視野に立てば他人事ではありません。真剣に戦略的に、人々は自分たちのデータをどこに置くかを考えなくてはならないのです。

そして、データセンターから本当に撤退したい、というお客様の声も耳にします。すべてをクラウドのPower VSに移す、すなわちクラウド上に自分の本番環境を持つことも検討されています。

iWorld:
本番環境をPower VSに移すのは、運用コストの問題が原因でしょうか?

Tonny:
コストのためだったり、企業としてコア・コンピテンス、すなわち得意なことに集中するためだったりします。 製造業であれば、得意分野がある。しかし、データセンターはコア・コンピテンスではない。だから、自分が得意なことに集中し、データセンターは他の人に任せよう。そうすれば、得意分野において新たなチャレンジができる、というわけです。

iWorld:
オープニング・セッションでは、Power VSのユーザー数は600社に迫る勢いと言及されていましたが?

Tonny:
そうですね、現在、全世界で650社のお客様にご利用いただいています。

iWorld:
データセンターの増設の予定はあるのでしょうか?

Tonny:
ええ、昨年はマドリッド、先月はインドのチェンナイにデータセンターを新設し、全世界で21ヵ所になりました。日本は、東京と大阪に拠点があります。アジア圏では、その他にシドニーにも拠点があります。

iWorld:
東京と大阪のデータセンターにPower10プロセッサー搭載機が配備されるのは、いつ頃でしょうか?
(事務局注:本インタビューは、2024年5月に実施)

Tonny:
明確な時期については申し上げられませんが、日本での需要が伸びていますので、近日中には配備される予定です。
(事務局注:東京DCには2024年7月2日にPower10サーバー配備済み)

クラウド・カタログとエコシステムへの取り組み

iWorld:
次に、クラウド・カタログについてお伺いします。現在、Power VSではIBMの提供するソフトウェアだけではなく、ISVソリューションもカタログ上に掲載されていますね?

Tonny:
そうですね、クラウド・カタログは、スマートフォンのアプリストアと同様に、アプリケーションをクリックすると、そのアプリケーションが利用できるようになるのです。

IBMのソフトウェアがクラウド・カタログに掲載されているだけでなく、エコシステムに属するサードパーティー・ベンダーも自社のソリューションをクラウド・カタログに掲載してくださっています。

MONO-Xのような日本のベンダーも一歩を踏み出し、API-Bridge(現MONO-X API)をクラウド・カタログに掲載していただいています。我々は、毎四半期に新たなソリューションを追加掲載できるように今後も引き続き注力していきます。

カタログに掲載されているMONO-X社のAPI-Bridge for PowerVS

iWorld:
IBMがPower VSのエコシステムに非常に真剣に取り組んでおられるということが、Power VSビジネスの成功に結び付いているということですね。

Tonny:
IBMは、この半年間に、新規データセンターの開設、既存のデータセンターへのPower 10プロセッサー搭載機の展開やサービスの改善などを行いました。この一連の投資は、私たちがPower VSにコミットしていることを示しています。

また、エンドユーザーの使い勝手を向上させるために、私たちは本当に多くの時間と資金を投資しました。ネットワークもユーザー・インターフェースも改善され、より簡単に、より迅速に導入できるようになりました。

COMMONのオープニング・セッションでも言及されていましたが、数日以内で導入と展開を実現されたお客様の事例もあります。短期間での導入と展開が可能となったことは、私たちがPower VSへの投資で進歩を遂げたことを示すものであり、IBMがPower VSにコミットしていることを示すものでもあると思います。

iWorld:
さらには、Power VSの構成を簡単にする「Tシャツ・モデル」も展開されているのですよね?

Tonny:
その通りです。「Tシャツ・モデル」ではお客様がデータセンター、オペレーティング・システム、Tシャツのサイズを選んでクリックするだけで、20分後にはシステム環境をロールアウトして稼動させることができるのです。

3つのバリエーションが表示されているPower VSの構成画面

IBMが目指すハイブリッド・ソリューションの実現のために

iWorld:
IBMには、Power VS事業をオンプレミス事業よりも大きくする目標や計画はあるのでしょうか?

Tonny:
IBMはハイブリッド・ソリューションを推進しています。私たちは、Powerのワークロードを稼働させるためのさまざまな方法を、お客様が日々探していることを知っています。もちろん、全面的なクラウドでの運用に踏み切るお客様も増えていますが、私たちはハイブリッド・クラウドを強力に推進しているのです。

私達には、オンプレミスに留まりたいお客様に提供できる完璧なソリューションがあります。クラウド化を考えているお客様に提供できる最適なソリューションがあります。つまり、必要であればオンプレミスでワークロードを実行できますし、Power VS上でもシームレスにワークロードを実行できるのです。

私たちは、お客様に一つの方向を強制することも、別の方向を強制することもありません。私たちが目指す姿は、お客様がPowerのワークロードを実行する場所を自由に選べるようにすることなのです。

iWorld:
聞くところによると、日本のお客様は、他の国に比べて本番環境をPower VSに移行することに熱心なようですが?

Tonny Bastiaans氏

 

Tonny:
日本ではPower VSの導入が進んでいます。Power VS製品企画チームの一員として、日本で多くのPower VSが本番採用されていることを大変うれしく思っています。

その背景にあるのは、コストではないでしょうか。現在、販売店様はお客様にS1014のコストとPower VSのコスト両方を提示しているかと思います。 S1014は1コアからですが、Power VSは0.25コアから見積もることができます。

iWorld:
確かに、小規模なお客様は、特にS1014におけるPower10のフルパワーは必要としていないかもしれませんね。

Tonny:
従来は、コア単位でしか購入できないサーバー・ハードウェアを買うしかなかったわけです。ところが、実際には、1コアどころか、半分、あるいは4分の1コアしか必要としない場合に、Power VSは非常に有効なのです。

また、日本でPower VSの導入が進んでいるのは、エコシステムへの取り組みが盛んであることも理由かもしれません。先ほどのMONO-X社の例にもある通り、Power VSで世界中の新しいビジネスを開拓していこうという気概に満ちたパートナー様もいらっしゃいます。日本では、IBMだけがPower VSを推進しているのではなく、エコシステム・パートナーがPower VSを本当に受け入れていることが明確です。この点において、日本の関係者に賛辞を贈りたいと思います。

iWorld:
そういえば、日本でも、宙 (そら) 様という従業員5名の小規模な開発会社が開発環境をPower VSに移行した事例があります。



Tonny:
そういう事例は大歓迎です!英語化もされているのですね、ありがとうございます。

今後の機能拡張について

iWorld:
今後の機能拡張についても伺わせてください。Power VSの出始めのころには、ネットワーク構成が難しいというお客様の声を耳にすることが多かったのですが、最近はどうでしょうか?

Tonny:
より良いネットワーキングを実現するための措置として、Power Edge Router(PER)を導入しました。初期段階では、ネットワーク関連のお客様からの改善要望があったのは事実です。私たちはサービスの改善を行ったと申し上げましたが、それはPERの採用によってネットワーク環境の改善を実現したことを指しています。

iWorld:
他にも、バックアップ手段の改善もありましたね。

Tonny:
Falcon Storeの仮想テープライブラリー(VTL)のことですね。この分野にも、よりよいソリューションを提供できるよう投資をしています。

iWorld:
ネットワーク構成やバックアップ手段の改善によって、より多くのお客様がアプリケーションのクラウド移行に自信を持てるようになるわけですね。

Tonny:
他にも、専用ホスト(Dedicated Host)のようなサービスや、グローバル・リプリケーション・サービス(GRS)なども提供していく予定です。GRSは昨年ダラスとワシントンの間でのリプリケーション・サービスを開始しました。今後は、日本を含む他の地域への展開を拡大する予定です。
(事務局注:東京―大阪間のGRS、ならびに専用ホストサービスは2024年6月にサービス開始済み)

iWorld:
東京―大阪間でもストレージのレプリケーションができるようになるのですね。それは楽しみです!今後もPower VSがより使いやすくなっていくような拡張が色々と予定されていることがよくわかりました。本日はありがとうございました。

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