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2025.04.21
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パビリオン来場者の「共鳴体験」を実現し続けるIBM Powerサーバー

パビリオン来場者の「共鳴体験」を実現し続けるIBM Powerサーバー

4月13日に開幕した2025年日本国際博覧会(略称「大阪・関西万博」)。
既報の通り、シグネチャーパビリオンの1つである「Better Co-Being」に、日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は、サプライヤーとして協賛。そして、日本IBMが提供したIBM Powerサーバーが、来場者体験を支えています。
本記事では、具体的な来場者体験の概要と、IBM Powerサーバーが果たしている役割を紹介します。
※ 開幕に先立って開催されたメディアデーにて、「Better Co-Being」パビリオンを取材した時点の内容となります。

天井も壁もないシグネチャーパビリオン「Better Co-Being」

Better Co-Beingパビリオンは、万博会場中央の「静けさの森」の一角にあります。

博覧会のパビリオンというと、何らかの建物を想起する方が多いと思います。ところが、このBetter Co-Beingパビリオンは「建物」ではありません。敷地を覆うグリッド状のキャノピーと、キャノピーを支える柱のみが配置されており、天井も壁もありません。

パビリオンにおけるIBM Powerサーバーの使われ方の取材に訪れた筆者が、この光景を目の当たりにして最初に思ったことは、「サーバーの設置場所はどこ?」でした。

「あの丘の地下で稼働しています。」と、来場者体験の開発を担当された株式会社バスキュールのご担当者が教えてくださったので一安心。筆者は、来場者の一人としてパビリオンを体験するべく、エントランスに向かいました。

ふしぎな石ころを手にした人々同士による共鳴体験

パビリオンのエントランスでは、最初に、ふしぎな石ころ「echorb (エコーブ)」を受け取ります。


そして、スマートフォンで「Better Co-Beingアプリ」にアクセス後、自分が受け取ったechorbをペアリングさせることで、echorbに命が宿ります。

すなわち、共鳴体験の第一歩はechorbと響き合うことから始まるのです。
(分かりにくいかと思いますが、写真はペアリング後、中央の少し上に緑色の箇所が生じた状態です)

アテンダントによる説明と、パビリオンのスタッフによるサポートを受け、グループ全員の準備が整うと出発です。

来場者がechorbとともに体験するシークエンスは3つです。それ以外に、最初のシークエンスに向かう緩やかな階段を歩いている最中も、特殊な振動により脳に錯覚を与える3Dハプティクス技術によって、命をやどしたechorbに手を引かれてパビリオンを巡るような感覚を体験できます。

なお、個々のシークエンスは、Better Co-Beingパビリオンへの来場時に実体験されることが一番であるため、本記事では簡潔な紹介に留めさせていただきます。


シークエンス1は、「人と人の共鳴」がテーマです。

「言葉の丘」と命名された小高い丘には、赤い糸が張り巡らされています。そして、実は、赤い糸の間には多様な言語の文字の透明なパネルが配されています。

写真では、来場者が思い思いの場所に佇んでいるように見えますよね。

実は、その場所でechorbが、「ここだよ」と言わんばかりに振動しています。そして、来場者の手元のスマートフォンでは、Better Co-Beingアプリの「共鳴マップ」が表示されています。

「共鳴マップ」の中心には自分自身を示すマークがあり、その周囲には万博の7つのテーマを示す色付きのマークが表示され、どのテーマでどの来場者と共鳴したかが分かるようになっています。


シークエンス2は、「人と世界の共鳴」がテーマです。

緩やかに下る道に歩みを進めると、echorbが道の左右に配された黒いスピーカーへと来場者を誘います。

スピーカーからはさまざまな言語を用いて、異なるリズムに乗り数字の9から1までのカウントダウン音声が流れます。

Better Co-Beingアプリには、カウントダウンをしている人々の名前と言語、関連するストーリーが表示され、まさに、世界との共鳴を体験できます。


シークエンス3は、「人と未来の共鳴」がテーマです。

キャノピーに沿って張られたワイヤーには、サンキャッチャーが取り付けられているのですが、同じ並びは無いそうです。(画像の左側)

ここでは、人工降雨やミストによって虹を作る演出があります。気候条件と立ち位置によって、「虹が見えるかどうか」と「虹の高さ」が異なります。(画像の右側)

その時、echorb は奥に行こうと言わんばかりに、引っ張るような振動を繰り返します。そして、その先には、エピローグの体験が待っています。


エピローグの場には、球体LEDがあります。

Better Co-Beingアプリに表示されている「共鳴マップ」は、球状のオブジェクトに結実します。そして、来場者は、Better Co-Beingアプリに表示されている各自の「共鳴マップ」をスワイプして球体LEDに灯します。

ここで、気候条件と持ち寄った来場者の行動データを融合することで、来場者全員にとっての単一の色が球体LEDに表示されます。

コンテンツ制作への専念を可能にしたIBM Powerサーバー

来場者体験は、気候や時刻といった要因により、その時々で変化して当たり前ですが、どんな状況にあっても変化してはいけないのが、来場者体験を支えるシステムです。

各来場者が持つechorbが「会場内に敷き詰められているLF(Low Frequency:長波)アンテナの何番を拾っているか」から判定できる位置情報や滞在時間は、echorbからwi-fi経由で送られます。同時に、来場者を案内するアテンダントが持つタブレットの操作で実行される各シークエンスでの「体験」のステータスも更新されます。wi-fi経由で送られてくるこれらの情報をリアルタイムで記録するとともに、中間サーバーやAPI連携を経てBetter Co-Beingアプリが表示するべき情報を判定できるようにしているのが、IBM Powerサーバーなのです。

また、最後のシークエンス後にグループで集うエピローグの場で体験できる球体LEDの映像は、気象条件や来場者の行動データに基づいて決まるのですが、こちらを担っているのもIBM Powerサーバーとのことでした。


万博が開幕した現在、実際のオペレーションがどうなっているかは把握できておりませんが、Better Co-Beingパビリオンは予約制で、15名を1つのグループとして、最大同時3グループがパビリオン内で活動する予定と伺いました。当初は最大同時100名が参加する運用も視野に入れていたとのことであり、同時セッション数が多くなる状況下でechorbからのリクエストや状態管理を安定してさばく必要がありました。

調査会社ITICが公開しているサーバー・ハードウェアの信頼性レポート( ITIC 2023 Global Server Hardware, Server OS Reliability Report)で、可用性の評価が99.999999%以上となっているIBM Power サーバーが、Better Co-Beingパビリオンの来場者体験の基盤となったことについて、開発を担当された株式会社バスキュールのご担当者は以下のように語っていました。

「マシンパワーが強力で、堅牢性と安全性が高いIBM Powerなので、安心してコンテンツ制作に集中できました。」
「半年という長期間にわたりパビリオンを運用していくにあたり、IBM Powerは信頼性があるので、安心して任せられます。」


ちなみに、Better Co-Beingパビリオンの来場者体験を支えているIBM Powerサーバーは、オペレーティング・システムとしてLinux(Ubuntu)を導入した2台のスケールアウト・サーバー「IBM Power s1014」です。

本記事の前半で紹介したように、「言葉の丘」と命名された小高い丘の地下で、2台のIBM Power S1014は稼働しています。

せっかくなので、万博協会のテーマ事業のご担当者にお願いして、echorbの充電やメンテナンスを行う部屋への入室許可をいただき、稼働中のIBM Power サーバーを撮影させていただきました。

このラックにある2台のIBM Power S1014が、万博の会期中、パビリオンを支え続けるのです。

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筆者

株式会社イグアス
iWorld 編集部
黒澤 巧

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