2025年4月8日 スティーブ・ウィル
IBM i 7.6とIBM i 7.5 TR6という大きな発表で、私達は2025年を始動します。そして、この記事では、IBM i 7.6の主要ないくつかに焦点を当てることにします。
まず、セキュリティーから始めましょう。理由は、Fortra社が今年実施したIBM i に関する市場調査で、IBM i のプロフェッショナルが最大の懸念事項としてセキュリティーを挙げたからです。次いで、コミュニティーや有識者のグループから要望が多かったIBM i 7.6の主要な更新内容に焦点を当てます。
セキュリティー
IBM i 7.6は、システムまたはアプリケーションへのアクセスに2つ以上の検証要素を要求するセキュリティー対策である「多要素認証(MFA :multi-factor authentication)」を統合しています。
以前から、IBM i で実行される多くのアプリケーションは、ユーザーが実行しようとしているあらゆる操作(銀行情報の閲覧、取引の実行、購入契約への署名など)について、そのユーザーに実行権限があるか否かを多要素認証を使って確認してきました。
IBM i の場合、多要素認証の統合により、システムとデータへのアクセスと管理を安全に行えるようになります。統合された多要素認証は、タイムベース・ワンタイムパスワード(TOTP:Time-based One-time Password)を活用し、システムにアクセスしようとするユーザーが適切な権限とセキュリティー・クリアランスを持っていることを保証します。
これには、QSECOFRのためにインターネットに接続されていない時を含む、あらゆるシステム状態が含まれており、IBM i のセキュリティー態勢を大幅に強化します。
データベース
IBM i 7.6のリリースによりDb2 for iが強化され、SQLアプリケーションの開発者、データベース・エンジニア、アドミニストレーター、最新かつ高度なセキュリティー管理に関心を持つ全てのユーザー向けの新機能が追加されました。
SQL開発者にとっての機能強化として、コミュニティーからの要望が多かったアイデアであるデータ変更表参照(data-change-table-reference)が拡張され、UPDATE文とDELETE文がサポートされるようになりました。SQLSTATE_INFOテーブルは、Db2 for iで使用されるSQLSTATE値と対応するSQLCODEに関する情報を返します。
データベース・エンジニア向けに、DUMP_PLAN_CACHEプロシージャーはQRO_HASHオプション・フィルターを提供するように拡張され、特定のSQL文に対するSQLクエリー・エンジンの詳細を簡単に取得できるようになりました。
システム管理
IBM Navigator for i は、IBM i 環境へのアクセスと管理に必要なタスクと機能をシステム管理者に提供するために、継続的に拡張と改善が続けられています。
有期のサブスクリプション・ライセンスへの移行によって、ライセンス期限満了情報と警告が、メインのマルチシステム・ダッシュボードと「単一システム管理」ページに表示されるように改善されました。これにより、システム管理者はシステム別または環境全体のIBM i ライセンスの状況を合理的に表示できるようになりました。
また、Navigator for i は、Navigator for i との接続と作業への多要素認証の使用をサポートし、システム管理者がシステムと各ユーザーの多要素認証の設定を管理するために必要なツールとインタフェースを提供します。
さらに、セキュリティーを強化するために、新しいインターフェースがNavigator for i に追加され、システム管理者がIBM i への安全な接続を確立できるようになりました。
アプリケーション開発
Microsoftが提供するVisual Studio Codeで利用できる拡張機能「Code for IBM i」は、IBM i 開発者のニーズに対応し、最新の方法論とテクニックを使用してビジネス上の重要なアプリケーションの開発と更新に最適なツールを提供するために、急速な改善と改良を続けてきました。
一連の改善の中には、FF RPG(Free Form RPG)の速やかなフォーマット機能と、固定フォーマットのRPGの参照のサポートが含まれています。また、バッチおよびサービス終了点のデバッグのサポートが追加されました。
Db2 for i の拡張機能であるCode for IBM iでは、SQL構文の検証と自然言語処理用のAIプラットフォームとの統合も改善されました。
HA(高可用性)/DR(災害復旧)
IBM PowerHA SystemMirror for iは、Power Virtual Serverの拡張機能とともに更新、改善され続け、お客様はIBM Cloudで高可用性と災害復旧が実現できるようになりました。
これは、Global Replication Service(GRS)、FlashCopy、切り替え論理装置(LUN)のサポートなど、オンプレミスと同等の機能がパブリック・クラウド環境で利用できるようになったことを意味します。
これらの機能により、ストレージベースの自動化された高可用性と災害復旧ソリューションが、Power Virtual Server環境のIBM i で実現可能となります。お客様は追加のハードウェアを購入することなく、ビジネスの回復力を高めるITアーキテクチャーを構築できます。
本記事は、TechChannelの許可を得て「Announcing IBM i 7.6 and IBM i 7.5 TR6」(2025年4月8日公開)を翻訳し、日本の読者に必要な情報だけを分かりやすく伝えるために一部を更新しています。最新の技術コンテンツを英語でご覧になりたい方は、techchannel.com をご覧ください。
IBM i のCTOであるスティーブ・ウィル氏が、最新のリリースであるIBM i 7.6から、セキュリティー、データベース、システム管理、アプリケーション開発、HA(高可用性)/DR(災害復旧)に関する機能強化を取り上げ、説明します。