カミオジャパンの商品(会社概要より)
大阪に本社を置く株式会社カミオジャパン(以下カミオジャパン)は、ファンシーグッズの企画・デザイン・製造・販売を手掛ける企業です。キャラクターデザインが施されたメモ帳や便せん、鉛筆やシールに加え、近年ではアニメ・キャラクターの「推し活」グッズまで幅広く商品を展開されています。
カミオジャパンは、販売管理、物流管理をIBM i 上で30年以上運用しています。今回ご紹介する販売管理システムは、iSeries Siteをベースに自社仕様にカスタマイズしたものであり、現在社内の2名のRPG技術者がメンテナンスを行っています。
一方、生産管理はLinuxサーバー上にてPerlで自社開発したシステムを利用しています。
今日のビジネス環境やIT環境において、単一のIBM i を稼働させるシステムで全業務を網羅することは稀であり、社内外の他のシステムとの連携が不可欠となっています。このような「外部連携」の実現までの経緯を、カミオジャパンの技術者の皆様に伺いました。
外部連携のコツ その1:ベンダー製品の活用
カミオジャパンの販売管理データはIBM i 上に蓄積されており、PC上のExcelで活用するためのデータを、かつてはIBM Db2 WebQuery経由でダウンロードしていました。ところが、2023年末にカミオジャパンがIBM Powerサーバーを更新した時点では、IBM Db2 Web Query(以下WebQueryと略)が利用できなくなっていました(同年10月に販売終了)。そこで、WebQueryの役割を担う製品として、株式会社MONO-Xの「PHPQUERY」の採用を決定されたそうです。
WebQueryからPHPQUERYへの移行は「クエリー取込」機能を使用し、70件ほどのクエリー定義を移行しました。カミオジャパンの技術者の皆様によると、「PHPQUERY」の導入後は、取引先とのやり取りに不可欠な営業現場からの細かな要求(取引先への請求データの抽出等)にも速やかに対応できているとのことです。
Excelはカミオジャパン社内で幅広く利用されており、ODBC経由でIBM i 上のDb2データを参照するExcelマクロも多数使われています。例えば、Linuxサーバー上で稼働している生産管理システムとIBM i 上で稼働している販売管理システム間での仕入データの連携はEXCELマクロで行っています。
ただし、ODBCで参照できるのはあくまでもDb2上に既に存在するデータのみであり、PC側からIBM i にあるプログラムを起動してその計算結果をもってくるといったことはできません。その問題を解決するために採用を決定したのが、株式会社MONO-Xの「API-Bridge」です。
「API-Bridge」は、IBM i との容易なAPI連携を実現にする製品で、カミオジャパンでは外部からIBM i の資源を呼び出す「API-Bridge (Server)」を活用しています。カミオジャパンのオープン系技術者が具体例として紹介してくださったのは、取引先ごとに異なる掛け率の算出ロジック(IBM i 上)をPC上のVBA(Visual Basic for Applications)から呼び出して、算出結果のみを受け取る、といった使い方です。これにより、掛け率計算ロジックをそれぞれのPCに展開することなくIBM i 上での一本化が可能となり、メンテナンスの容易性を維持できているそうです。
また、カミオジャパンに2社ある関連会社について、IBM i 上ではライブラリーを分けて管理しているそうですが、「API-Bridge」を使えば、PC上のVBAからAPI経由でIBM i上のライブラリーリストを変更するCLプログラムも起動できるので、会社を分けての運用も非常に便利になったとのことです。
※「API-Bridge」には、IBM i の資源を呼び出す「API-Bridge (Server)」と、IBM i から外部のWebサービスなどをAPI呼び出しする「API-Bridge (Client)」の2つのモジュールがあります。
カミオジャパンのご担当者曰く「API設定にAS400の基本的な知識が必要ではあるものの 管理画面は非常にわかりやすく、簡単に定義が作成できました。」とのこと。
ODBC特有の「遅さ」、そしてIBM i 上のデータを「外部連携」させるときに一番の問題となる「文字コード」問題も「API-Bridge」で解消できるため、今後のシステム拡張の際においても「API-Birdge」を活用していく予定とおっしゃられています。
外部連携のコツ その2:オープン系の技術スキルの活用
カミオジャパンにおける「外部連携」の取り組みにあたり、もうひとつ特徴的なこととして、オープン系技術者のスキルの活用が挙げられます。
カミオジャパンにはIBM i 技術者以外にも、PerlやPHP、EXCELマクロが書けるオープン系技術者が2名在籍しています。オープン系技術者が持つスキルは、IBM i の新しい使い方にも活かされています。
具体例としてカミオジャパンのオープン系技術者が紹介してくださったのは、PHPを使った「返品システム」と、催事や映画館などでの期間限定販売の際に利用する「消化販売システム」です。いずれも営業担当者が直接利用するシステムであり、5250の「黒画面」に対する抵抗感を考慮した結果、従来のRPGではなく、IBM i の上で稼働するPHPを用いて新しいアプリケーションを構築されたとのことです。
また、大手運輸会社からSFTPを利用したデータ連携を持ち掛けられた際も、QSHコマンドで難なく対応が出来たということです。PASE環境のQSHコマンドを使えば、オープン系に非常に近い感覚で違和感なくIBM i を利用することが出来るとおっしゃられています。
ただし、カミオジャパンのオープン系技術者の方は、IBM i に取り組むにあたり、「一部文字コード設定をきちんと設定してから作業しないとフォルダ/ファイル名が文字化けしたり、ユーザー権限を意識しないと想定通りの読み書きが出来なかったり、ライブラリーリストの順番や、ユーザー・プロフィールと出力待ち行列の関係といった実行管理系などのIBM i の基礎知識はある程度必要でしょう。」という感想をお持ちでした。
既存システムの堅実で適切な運用と、ExcelやWebといった利用者にとって親和性が高いフロントエンドの活用は、今日の企業内IT環境における両輪と言えます。現在のIBM i には、オープン系の技術が多数採用されています。カミオジャパンにおけるSFTPは具体例の一つとなりますが、新たな技術の採用に逡巡することがないオープン系技術者の採用や参画は、IBM i の活用の促進に寄与するのではないでしょうか?そして、オペレーティング・システムとしてのIBM i がサポートできなくとも、ベンダー製品の採用で実現できることも数多くあります。
「PHPQUERY」の採用によるIBM Db2 WebQuery提供終了問題への対応や、「API-Bridge」の採用によるODBCの制約に限定されないAPI連携など、カミオジャパンの技術者の皆様の取り組みは多くのIBM i をご利用のお客様にとって参考になるのではないでしょうか。IBM i がより外に向かって開かれたシステムになり、これからも業務で重用されるシステムであり続けるためには、ベンダー製品の活用や新たな技術に長けた技術者の参画は不可欠になっていくかもしれません。
※併せて読みたい:【できるIBM i 7.4解剖】第10回 「IBM i のSFTPとFTPSサポート」