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2024.09.18

【開発モダナイゼーション】第20回「IBM i のERPにおける2024年の8つのモダナイゼーションのトレンド」

【開発モダナイゼーション】第20回「IBM i のERPにおける2024年の8つのモダナイゼーションのトレンド」

今回は、ERPのモダナイゼーションのトレンドについて取り上げます。ERPのモダナイゼーションに焦点を当ててはいるものの、ここで取り上げられているトレンドは必ずしもERPの世界に限定されるものではなく、広くIBM i の既存アプリケーションが目指すべきモダナイゼーション領域として、大いに参考になるものと思われます。是非ご一読ください。(編集部)

2024年1月18日 ロス・フリーマン

Infor社のロス・フリーマン氏が、一般的なERP業界のトレンドがIBM i ERP業界のニーズとどのように一致しているか、そしてまたどこが違うのかを探ります。


多くの企業が、IBM i 上で稼働するERP製品を使用しています。IBM i はビジネス・アプリケーションに最適なプラットフォームであり、ERPは通常その企業で最大のアプリケーションの1つです。しかし、他の業界と同様に、ERP市場は現在の課題に対応するとともに将来の要件に対応するために、成長し進化する必要があります。結局、ERPの顧客が求めているのは、これらの課題への対処を支援できるパートナーなのです。

2024年には、IBM i でERP製品を使用している大部分の顧客が優先事項として検討するべき、8つの高レベルの課題があると私達は考えています。

  • ユーザー体験のモダナイゼーション
  • ユーザーレベルでの報告書と分析の強化
  • 出力管理
  • モビリティ
  • セキュリティーの強化
  • 環境に合わせたアプリケーションの拡張
  • 現代的ツールを活用するための統合
  • 日常業務の効率化

1.ユーザー体験のモダナイゼーション

モダナイゼーションは、IBM i の世界では大きな話題です。自社開発の5250画面を使ったアプリケーションの多くは、スクリーンスクレイピング*から5250画面を使ったアプリケーションのもっと抜本的なリファクタリングまで、様々な方法で「モダナイズ」されています。しかし、ミッションクリティカルなERPの世界では、大幅なリファクタリングはリスクをはらむ大規模な仕事です。ERPの核心は、同じERP上の他の数百の顧客とそのコストとリスクを共有することにあります。
*スクリーンスクレイピング:画面に表示されている情報を抽出し、別のアプリケーションで表示することによってデータを収集する方法

このようなリファクタリングは、カスタマイズされたビジネスプロセスとデータアクセスを支援するために、ユーザーレベルでの豊富なパーソナライゼーション機能をIT部門の関与なしに提供できる必要があります。同時に、いかなるパーソナライゼーションもアップグレードに影響してはなりません。システムは、可能な限りリリースの透明性を最大限に担保する必要があります。ERPの主な価値はアップグレードですから、ビジネスニーズに合わせてシステムを機能させるために、パーソナライゼーションを失うことなく簡単に素早くアップグレードできることが求められます。

これは、開発するすべてのカスタムアプリケーションに適用されます。提供されるツールは、カスタムアプリケーションが、中核的なERPやその他のアプリケーションと簡単に連携できる必要があります。しかも、アップグレードの問題を発生したり、混乱を招いたり、全く異なるユーザー・インターフェースを必要とすることなしにです。

2.ユーザーレベルでの強化された報告書と分析

顧客がERPをアップグレードする場合、ERPそのものが大幅に変更されたと考えられがちです。しかし、実際に行われているのは、ビジネスプロセスを可能にするために、クエリーや変更された画面を介してデータにアクセスできるようにするための「変更」が大部分であることが分かります。

そんなことは止めましょう。ユーザーは、IT開発待ち行列に入れられたり、次のアップグレードで混乱を招いたりすることなく、必要な情報を取得して必要なカスタムプロセステンプレートを構築するためにビューをカスタマイズできるべきです。

すべてのパッケージソフトウェア製品に共通する1つの課題は、完璧なユーザー・インターフェースがないことです。それが何であるかを知っているのは主要なユーザーだけであり、来週や来年には状況が変わる可能性があります。IBM i 上で稼働するERP製品の供給ベンダーは、主要なユーザーが自らの知識を活用して、自らのやり方でシステムを実行できるようにする必要があります。

3.出力管理

スプール・ファイルは、まだ、機能しています。ただ、残念ながら、スプール・ファイルは柔軟性に欠けており、どんなに小さな変更でもIT部門のサポートが必要です。現代的な出力管理ツールは、スプール・ファイルの見映えを良くしたり、結果の静的な形式での保存や配布が行えます。しかし、スプール・ファイル自体に対しては、大したことはできません。

概念的には、ユーザーがユーザー・インターフェースを必要に応じて変更できるのであれば、スプール・ファイルに保存されている様々な出力に対しても同様の操作を実行できるはずです。システム出力がXMLのような柔軟な形式である場合、フォーマット、保存、配布の方法の選択肢はほぼ無制限になります。

4.モビリティ

ERPの分野ではありませんが、モビリティは以前から注目されていました。モビリティには様々な意味がありますが、十分なサイズとは言えない携帯電話の画面で顧客からの複雑な注文を受ける運用は、成功の見込みがありません。

モビリティは、様々なユースケースの問題です。

  • フルサイズのPCやデバイスを使用しているリモートワーカーですか?
    はい。
  • 任意のデバイスで、レビューと承認を伴うワークフローとアラートを実行しますか?
    はい。
  • どのデバイスでも、メッセージが送れますか?
    はい。
  • ERPの入力と出力を様々なデバイス形式に合わせてカスタマイズしますか?
    時々あります。
  • ERPの中核的なトランザクションとデータ処理を、小型のデバイスで実行しますか?
    いいえ。

ERPは進化を継続しており、モビリティが最も適している領域を理解する試みも続いています。ただ、1つはっきりしていることは、余分な作業を必要としないリモートアクセスが、ERPには不可欠である、ということです。

リモートのフルスクリーンのデバイス向けに、ERPの全ての機能を提供することが、最優先事項である必要があります。その他のユースケースは、お客様の特定のニーズに左右されますが、全てのERPベンダーがお客様のニーズに合ったモビリティ戦略に取り組む必要があることは明らかです。

5.セキュリティーの強化

「IBM i は完全に安全で、心配する必要はない」という見解は、ある程度は正しいのですが、完全に正しいわけではありません。

最近発覚した複数のIBM i 関連製品に影響を及ぼすlog4jの脆弱性は、IBM i 上で稼働するERP製品の供給ベンダーが修正する必要があった問題の一例です。上述および後述する様々なモダナイゼーションが展開されるにつれて、セキュリティーの実態はより複雑になり、ERPベンダーは安全なシステムを保証するために高度な専門知識を必要としています。

もう1つの課題は、IBM i が極めて安全でありながら、セキュリティー的に見るとかなりの数のドアが開いたまま出荷されていることです。セキュリティーの専門家は、この分野にはほとんどの顧客が知らない多くの事項があり、一部の顧客は危険な状況にあると明言しています。もちろん、ハッカーも知らないことが多いのですが、状況は一瞬にして変わる可能性があります。

いくつかのベンダーは、ERPのクラウドバージョンを提供することで、セキュリティーがユーザーではなくベンダーの問題となるように対処しています。どのクラウドアプリケーションにも、セキュリティー保証を含むサービスレベル契約があります。

6.環境に合わせたアプリケーションの拡張

顧客は、ERP製品の周辺機能として、ビジネス分析、製品構成を作成するコンフィグレーター、製品のライフサイクル管理、フィールドサービスなどを追加する必要性を感じています。顧客ごとに様々なニーズや優先事項があります。ユーザー・インターフェースと同様に、あらゆる顧客や業界に適合する完璧なアプリケーションは存在しません。

かつては、このようなニーズや優先事項の全てをIT部門が解決して稼働させ続けなければなりませんでした。ERPベンダーはIT部門が置かれたそのような状況に注目し、顧客に完全なソリューションを提供するために、他社が提供する優れたソリューションの買収なども実施しました。「提供」とは、中核的なERP製品と新たな製品の間で堅牢なインターフェースを作成し、維持する必要があることも意味します。ERPのクラウドバージョンと同様に、アプリケーションのスイート製品の複雑化によって、管理やアップグレードの難易度が高まっても、ERPベンダーはサポートできる必要があります。そして、オンプレミスではなく、ERPベンダー自身のクラウドを使用している場合には、その必要性は倍増します。

7.現代的ツールを活用するための統合

統合について述べるならば、昔ながらの直接統合は進むべき道ではありません。様々なベンダーが、セントラル・バス・アーキテクチャーを介して統合を標準化および簡素化する標準統合ツールを提供しています。各社が提供する標準統合ツールにより、アップグレードと保守は、簡単かつ迅速になります。ワークフロー、アラート、メッセージングなどの追加サービスはデフォルトの機能です。そして、標準化されたセキュリティーにより、アプリケーションの占有領域全体の操作がユーザーにとって簡単かつ安全になります。

各社が提供する標準統合ツールにより、利用しているERPベンダーが提供していないアプリケーションや独自のカスタムアプリケーションを、将来的な課題を作ることなく簡単に追加できるようになります。どのERPベンダーも、顧客が求める機能の全てを常に要望通りに提供できるわけではありませんから、ハイブリッドで保守が可能なアプリケーション・スイートを簡単に構築できるようにすることが重要です。

8.日常業務の効率化

プロセスを最適化するために、ユーザーがユーザー・インターフェースと出力を自分に合わせて調整できるようにすることは、システムの合理化に役立ちます。仕事に必要な全ての情報へのアクセスをユーザーが容易に理解できるようにすることも状況を改善します。そして、ある時点で、「誰か」あるいは「何か」がトランザクションを処理し、日常的なタスクを実行する必要があります。

標準プロセス(ワークフロー)とタスクの日常的な実行基準を定義できるのであれば、それを機械に任せてみてはいかがでしょうか。あるいは、複数のアプリケーションにまたがるタスクの定義を可能にする標準的な統合アーキテクチャーがある場合は、それを機械に実行させてみてはいかがでしょうか。

近年、AIが話題ですが、顧客は基礎レベルで実用的なAIを必要としていると私達は見ています。問題なく処理される95%の請求書の照合に、なぜ人間が関与する必要があるのでしょうか? 頭を悩ませる問題やデータの欠落といった「例外」にこそ、人間が関与するべきでしょう。機械には例外を報告させるとともに、他のすべてを記録的な速さで完了させるべきでしょう。

より高度かつ実用的なシナリオは、唐突に尋ねる必要性が生じた質問に対する回答を、機械にデータから探させることです。ERPのデータは、業務上の日常的な問い合わせには最適ですが、何らかの回答を強いられる質問には必ずしも適していません。後者の場合は、機械にデータを調べさせて、何が導き出されるかを試してみることは可能です。役立たない回答もあるでしょうけれど、機械は迅速に多くの可能性を導き出せます。そして、機械が役立つ何かを見つけ出せれば、ERPデータの活用における難しい部分が完了したことになります。

モダナイズするための8つの方法

IBM i において、モダナイゼーションは最優先事項です。「モダナイゼーション」が網羅する範囲は非常に幅広く、ERPベンダーはモダナイゼーションのさまざまな側面に対処するために継続的な投資を行う必要があります。ERPベンダーは、顧客自身が行う取り組みに加えて、上述してきた8つの課題に対処するために努力しています。


本記事は、TechChannelの許可を得て「ERP on IBM i: Eight Modernization Trends for 2024」(2024年1月18日公開)を翻訳し、日本の読者にとって分かりやすくするために一部を更新しています。最新の技術コンテンツを英語でご覧になりたい方は、techchannel.com をご覧ください。

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