1.IBM Bob とは? なぜオンプレミス?
IBM Bob は、IBMが提供する開発者向けのAIエージェントです。設計からコーディング、テスト、セキュリティーチェックまで、ソフトウェア開発の流れをまるごと手伝ってくれます。
ただ、AIに任せる仕事が増えるほど、扱うコードの機密度も上がります。「このコード、外に出して大丈夫?」という悩みはつきものです。
Self-hosted版は、そのような悩みに応える選択肢です。すなわち、IBM Bobの実行環境を、自社のデータセンターや自社で管理するクラウドに置けるのです。
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【参考】
- IBM Bobとは
2.使い方は3パターン
IBM Bobの使い方は、大きく3つに分かれます。違いは、「IBM Bob本体をどこに置くか」と、「どのAIモデルを使うか」です。
| SaaS版 | Self-hosted (ローカルLLM) |
Self-hosted (外部LLM) |
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|---|---|---|---|
| IBM Bob本体の置き場所 | IBMが運用 | 自社のOpenShift | 自社のOpenShift |
| AIモデル | IBM管理のLLM | 自社で動かすLLM | 自社で契約した外部のLLM |
| 自社で用意する基盤 | 不要 | OpenShiftとGPU | OpenShift |
今回登場したのは、上の表の右側の2つです。
ポイントは、外部 LLM を選んだ場合は、コードの内容を含むリクエストがモデルの提供元に送られることです。つまり、外部 LLM を利用する以上、「IBM Bob を自社に置く」=「コードが外に出ない」とはならないので、ここは注意が必要です。もし、コードを一切外に出したくないならば、ローカル LLMの 一択になります。
ちなみに、現在はローカルと外部のどちらか一方のLLMにしかつなげられません。ローカルLLMと外部LLMの併用は、今後対応が予定されています。
3.Self-hosted版 IBM Bobの全体像と概要
Self-hosted版 IBM Bobの構成要素は、開発者の端末、自社インフラのOpenShift上で動く IBM Bob、AIモデルの3つです。
図1のように、開発者は手元の IDE や Shell から、社内環境の IBM Bob に接続します。IBM Bob は、設定した AI モデル(A か B のどちらか)に問い合わせて答えを返します。もう少し詳しく見ると、以下のような構成になります。

図2:IBM Bob Self-hostedのマルチノード構成(OpenShiftはコントロールプレーン3ノード、インフラ3ノード、ワーカー3ノード)。LDAP / ADとミラーレジストリは任意のコンポーネント。ストレージはODFまたはManaged NFSで、ODFを使う場合はRed Hatのサブスクリプションが別途必要です。
- 管理用の端末:インストールや運用は、専用の端末からbobctlなどのツールで行います。
- OpenShiftクラスター:IBM Bob本体のほか、認証のKeycloakやデータベースも載ります。開発者はKeycloak経由でサインインします。
- GPUサーバー:AIモデルはクラスターの外のGPUサーバーで動かします。ここの構築と運用は自社の担当です。
- オプション:LDAP / ADとの連携や、閉じたネットワーク向けのミラーレジストリなどを追加できます。
4.どれくらいのリソースが必要になるか
気になるのはサイズ感です。本番運用の出発点となる構成は、OpenShiftで9ノードです。
| 役割 | 構成 | 合計 |
|---|---|---|
| コントロールプレーン | 3ノード × 4 vCPU / 16 GiB | 12 vCPU / 48 GiB |
| インフラ | 3ノード | 12 vCPU / 48 GiB |
| ワーカー | 3ノード × 20 vCPU / 24 GiB | 60 vCPU / 72 GiB / 600 GiB |
| 全体 | 9ノード | 84 vCPU / 168 GiB / 600 GiB |
ここに挙げた数字は、IBM Bob専用のクラスターを想定した場合の目安です。物理サーバーの構成や台数は、環境に合わせて決めることになります。
IBM Bob専用のクラスターとは別に、AIモデルを動かすGPUサーバーが必要です。IBM Bobが担当するのはモデルへの接続までで、自社用のGPU基盤の構築と運用はお客様の仕事になります。
その他は、4.20以上のOpenShift、証明書を管理するcert-manager、管理用の端末と各種ツールがあれば準備OKです。インターネットにつながらない環境向けの導入方法(エアギャップ)も用意されています。
5.AIモデルの選定方法
メインのAIモデルは、ローカルLLMか外部LLMのどちらかを選びます。モデルは基本的に自社で用意します(IBMが用意するモデルも、今後提供予定)。
もう1つ、必須ではありませんが、リクエストと回答の安全性をチェックする「ガードレールモデル」を設定しておくことを推奨します。ローカルLLMの場合は、 openai/gpt-oss-20b を使います。外部LLMの場合は、各社のガードレール機能で代用できます。
ローカルLLMの場合
自社の GPU サーバーでモデルを動かします。主な選択肢は以下の通りです。
| モデル | GPUの目安 | 特長 |
|---|---|---|
| NVIDIA Nemotron 3 Ultra | B200 × 4 または H200 × 8 | 出力が安定している。 ただし、トークン消費は多め。 |
| Poolside Laguna S 2.1 | H200 × 8 | コード生成が得意。並列ツール呼び出しには非対応で、応答に時間がかかることがある。 |
GPUの台数は、PoC段階の目安です。実際の構成は、使い方やベンチマークの結果を見て決めていただくことになります。
この他に、Mistral Medium 3.5もありますが、こちらは、Premium Package for Zを使う場合専用のモデルですので、説明は割愛します。
外部LLMの場合
自社で契約しているモデルに接続します。
対応モデルは、Claude Sonnet 5、Claude Opus 4.8、Gemini 3.7 Flash、GPT-5.6 Solです。
お客様が自社用のGPUを用意する必要はなくなりますが、使い方は3パターンに書いた通り、リクエストは外に出ます。データ送信の条件やAPIコストは、事前に確認しておきましょう。
6.ライセンスについて
IBM BobのSelf-hosted版のライセンスは、3つを組み合わせる形です。
| 種類 | 中身 | 数え方 |
|---|---|---|
| Authorized User(AU) | IBM Bobを使う人ごとのライセンス | 利用者の数だけ |
| Install Part | 自社環境にIBM Bob本体を導入するためのライセンス | 導入1件ごと |
| Premium Package | 特定の業務向けの追加機能 | 必要に応じて追加 |
基本は「導入1件分」と「利用者の人数分」で、必要に応じて Premium Packageを足すイメージです。Premium Packageには、以下のようなものがあります。どちらも利用者単位で追加します。
- Java Modernization:JavaのバージョンアップやWebSphereからLibertyへの移行などを支援します。
- Premium Package for i:RPGやDb2 for iなど、IBM iの開発を支援します。 ※IBM Z向けのPremium Package for Zもありますが、料金体系が異なるため説明は割愛します。
ライセンスの購入方法は2通りで、月額・年額で払うサブスクリプションか、買い切り(Perpetual)に年間の保守(S&S)を組み合わせる形を選べます。
IBM Bob のライセンスを購入いただくと、OpenShift(OCP)と Red Hat OpenShift AI(RHOAI)を使う権利が、インストール1つにつきそれぞれ 64 VPC 分付いてきます。ただし、使えるのは IBM Bob を動かす用途だけで、IBM Bob の保守(S&S)を契約している間に限られます。
注意したいのは、ライセンスに含まれないコストです。
AI モデルの利用料、GPU などのハードウェア、運用の費用は別にかかります。ざっくり言えば、総額は「IBM Bob のライセンス」と「インフラとモデルの費用」の2本立てで考えることになります。
7.2026年10月13日時点での注意点
2026年10月13日時点で気をつけたいのは、以下の3点です。
- 使用できるメインのAIモデルは1つだけ。複数モデルの使い分けは、今後対応が予定されています。
- 利用状況を分析するBobalyticsは、Self-hosted版ではまだ使えません(今後、提供が予定されています)。
- セキュリティーログは、IBM BobではなくOpenShift側で用意します。
感想
Self-hosted版は、向いている組織と向いていない組織がはっきり分かれると感じました。理由はシンプルで、構成が大きいからです。目安でもOpenShiftで9ノード、ローカルLLMならB200やH200クラスのGPUが4〜8台。運用も自社で担います。
Self-hosted版が向いているのは、データを外に出せない組織か、OpenShiftやGPUのリソースに余裕がある企業や組織です。たとえば、金融機関のようにコードを外に出せない企業や組織には適合するでしょう。
一方、リソースに余裕がない場合は、SaaS版で十分だと思います。基盤を持たなくていい分、ずっと手軽にIBM Bobの利用を始められます。
外部LLMにつなぐSelf-hostedという中間の選択肢もあります。ただ、リクエストは外に出るうえ、OpenShiftの運用は必要です。「IBM Bob 本体は自社で管理したい」「すでに契約しているモデルを使いたい」といった事情があるなら検討の余地あり、という位置づけです。
複数モデルの併用やBobalyticsへの対応が進めば、選択肢はもっと広がりそうですね。
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筆者
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日本アイ・ビー・エム株式会社 Qiitaアカウント:@imao0610 |














2026年9月30日、IBM Bob の Self-hosted(オンプレミス)版が一般提供(GA)になりました。
これにより、これまで SaaS のみで提供されてきた IBM Bob を、自社インフラの OpenShift 上で動かせるようになります。
本記事では、Self-hosted 版のIBM Bobはどのような構成になるのか、どのような企業や組織に向いているのかを整理します。(筆者)