IBM Power対応の経緯と、改めて ProActive C4とは
iWorld事務局(以降は「iWorld」と記述):
ProActive C4のIBM Power対応は、どのような経緯で開始されたのでしょうか?
山崎 秀治氏(以降は「山崎」と記述):
ご存じの通り、IBM i ではその前身のAS/400の時代からPACKシリーズを始めとする数多くの業務アプリケーションが提供されてきました。
山崎 秀治氏
ただ、最近はIBM Powerで稼働する業務アプリケーションの数が増えていかない状況にあります。
そこで、業界でも有名なProActiveの稼働検証について、SCSK Minoriソリューションズ様にご協力をお願いしました。
今回、IBM PowerのLinux区画上でのProActive稼働検証にあたり、IBMからはIBM Powerに関する技術支援、そして、検証環境としてIBM Power Virtual Server上の区画などをご提供させていただきました。
iWorld:
改めまして、ProActiveというソリューションを、簡単にご紹介いただけますでしょうか?
徳田 友美氏(以降は「徳田」と記述):
1993年に国産初のERP(会計・人事・販売管理などを含めた統合型基幹業務システム)パッケージソフトとして誕生したProActiveは、四半世紀にわたって製造業、外食、マスコミなどから証券取引所まで、中堅企業を中心に6,600社ものお客様にご導入いただいております。
徳田 友美氏
海外製ERPパッケージと比較するという意味では、国内の商習慣や法改正にもきめ細かく対応できることが強みであり、長年の実績から安心してご利用いただける業務アプリケーションと自負しております。
対応業務は、会計、人事・給与から販売管理まで、バックオフィス業務を網羅しております。また、勤怠管理や経費精算などのフロントオフィス業務についても、使いやすさをご評価いただいています。
そして、業種に特定されず、流通・製造・サービスと満遍なくご導入いただいていることも特徴の一つかと思います。
iWorld:
中堅企業様のみならず、グループ企業内で一括しての導入も多いと伺いました。
徳田:
はい。グループ企業といっても、同一グループ内において、物流子会社、サービスの会社などその業種は多岐にわたります。ProActiveの場合は、「この業種への導入は厳しい」という制約がありませんので、グループに一括で導入する場合に非常に適しているようです。
藤井 二三夫氏
藤井 二三夫氏(以降は「藤井」と記述):
例えば、親会社がSAPを採用しているものの、全ての子会社をSAPで統一することが難しい場合に、グループ子会社の会計にProActiveをご採用いただくというケースもありますね。
iWorld:
SAPというお話が出ましたが、SCSK Minoriソリューションズ様ではProActiveのほかにもSAPなどのERPも取り扱っていらっしゃいます。同じERPであるSAPとの棲み分けのポイントというのはございますか?
徳田:
海外ERPがいいか、国産ERPにこだわるかといった観点で、お客様によって志向は分かれますね。
ある程度の規模のお客様でグローバル展開を重視しており、海外子会社も含めシステムを導入したいといったご要望がおありになる場合には、SAPとの組み合わせをお勧めすることがあります。
一方で、自社の業務との適合性を鑑みて、最初から国産ERPを指名されるお客様もいらっしゃいます。特に中堅企業様で、法改正の影響度が高い会計周辺や人事系の業務領域では、日本の会社のやり方に合わせやすいだろうという期待感を持って、最初から国産ERPを調べたり探されたりする方が多いように感じています。
藤井:
現在の主力製品であるProActive C4は、4つのC(Customer / Connectivity / Collaboration / Cross-Border)をコンセプトの中心に掲げ、2021年11月に全面刷新を施した製品となっています。メインはクラウドERPとしてのご提供なのですが、今回IBM Powerでの稼働検証をしたのはProActive C4のオンプレミス版となります。
iWorld:
オンプレミス版のProActive C4で実施とのことですが、検証作業の結果は、どのように評価なさっていますか?
山崎:
私が言うのもなんなのですが、IBM PowerでProActive C4を稼働させると、かなり性能が良いということが確認できました。
徳田:
私自身も実際に検証環境で確認したのですが、体感レベルで「動きが速い」という印象を受けました。社内にある他の環境(x86サーバー)と同じくらいのデータ件数からスタートし、少しずつデータ量を増やしながら処理時間などを確認したときの印象ですので、データがさらに多くなれば、もっと如実に差が出てくると期待しています。
山崎:
この結果は、IBM Powerの特長である、コアあたりの処理性能の高さだけでなく、CPUとメモリー間のデータ転送帯域幅の大きさ、そして、高速なI/O処理など、プラットフォームとしてトータルにスループットを向上させていることが大いに貢献しているものと思っています。データ量が増えても、処理スピードが損なわれることなくリニアに伸びていく感じが、結果に出たものと思っています。
iWorld:
逆に検証作業で苦労された点はございませんか?
徳田:
我々ProActive側の人間にとって、IBM Powerサーバーを扱うのは初めてだったため、最初の段階では、インストールがうまくいかない、といった問題にいくつか遭遇したものの、いずれの問題も、IBMのサポートの方に相談し、解決案をいろいろ提案いただいたおかげでクリアできたと感じています。設定の工夫で解決できたため、「もう一回、全部作り直さなくては」といった重大な問題はありませんでした。
具体的には、ProActive C4で使っているオープンソースのミドルウェアの相性が合わない部分がいくつかありましたが、それらのミドルウェアのLinux on Power対応版のパーツを組み合わせたところ、すぐに稼働させられました。
問題の解決が必要だったのはミドルウェア系だけであり、アプリケーションの中身に手を入れる必要は全くありませんでした。
藤井:
先にもご説明しました通り、今回の検証は最新バージョンのProActive C4で行っております。日々の使いやすさにこだわったUI・UXやビジネス環境の変化に素早く対応するスマート導入といった、C4ならではのコンセプトは、IBM Power版でもそのままにご提供できています。
ProActive C4をお勧めするお客様
iWorld:
では、IBM Power対応のProActive C4を、どのようなお客様にご提案したいとお考えでしょうか?
山崎:
最近のIBM i ユーザーの傾向を見ていて、販売管理や生産管理といった企業独自の、いわゆるコア・コンピテンスの部分をIBM i 上で稼働させつつ、法改正や税制改正でプログラム修正が多く入る業務(会計、人事給与など)のアプリケーションは外出しされるお客様が増えてきているように思っています。
ただ、ランサムウェア対策や災害対策など、ITソリューションやサービスの安定稼働が絶対とは言い切れない課題が増えている現在、元々1台のサーバーでやっていた運用管理を、業務ごとに別々のサーバーで管理するのは、お客様の負担が大きくなってしまいます。
今回、ProActive C4がIBM Powerにも対応していただいたことで、IBM Powerが提供する信頼性やセキュリティー面での堅牢性などを良くご存じのお客様に、同じIBM Powerの筐体内で全ての業務を一緒に管理できる選択肢がご提供できるようになりました。
また、IBM Powerを使ったことがないお客様に向けてもアプロ―チしていきたいと考えています。例えば、多くの国産汎用機ユーザー様が保守終了に伴い移行先を検討されている中で、IBM Powerの信頼性や性能を評価していただいた場合です。このとき、コア・コンピテンス部分はストレート・コンバージョンを行い、それ以外の標準業務にはProActive C4 on IBM Powerをご活用いただく、というシナリオもご提案できるのではないかと大いに期待しています。
藤井:
我々、SCSK Minoriソリューションズでは、前身のCSIソリューションズ時代からのIBM i ユーザー様を多数担当しております。CSIソリューションズ時代はインフラ提案がメインでしたが、SCSK Minoriソリューションズになり、アプリケーション開発のご提案もできるようになりました。お客様へのご提案の幅が、大きく広がったことを嬉しく思っています。
また、私の部署では、今、お話ししたような長いお付き合いのお客様に対して「モダナイゼーション」のご提案を積極的に行っています。一口にモダナイゼーションといっても、まずは現状プログラムの可視化、ドキュメンテーション(文書化)のご提案や、アプリケーションのリフェーシング(画面のGUI/Web化)といった表層的なものから、アプリケーションの刷新まで多岐かつ広範囲にわたります。
お客様の中には、長年ご利用されているIBM iシステムを次世代化していきたいと考えているものの「どこから手を付けたら良いか」「どのようにモダナイズを進めるのが自社にとって適切か」について苦慮されている方が多くいらっしゃいます。
先ほど山崎様が仰っていたように、生産管理とか販売管理とかのコア・コンピテンスの部分は現状を維持する。そして、総務系の標準的な業務(会計等)は新たにパッケージにリプレースし、業務標準化と法令対応を迅速に行う外部委託化を可能にする、といった段階的な刷新対応もお勧めいたします。ProActive C4はEPRといいつつ、このような一部の業務領域でのご採用、また段階的に対応業務を拡大する導入方法も可能であることが大きなポイントです。
山崎:
そう言えば、現在はIBM i をお使いではないお客様で、AS/400の時代にIBMのサーバーをお使いだったIT部門の方が、IBM i の方が自分はやりやすいので統一したいと仰っていたことがありました。IBM i から離れてしまったけれども戻したいんだよね、と仰るお客様に、ProActive C4という業務パッケージ込みでIBM Powerをご提案できるのは強みになると思っています。
徳田:
あと、もうひとつ。先ほど検証結果としてIBM Powerのパフォーマンスの良さが証明されたという話をいたしました。その結果を踏まえて、大きめの規模のお客様には、x86ではなくIBM Powerを推すというケースも十分考えられます。これまでは、非常にデータ量が多い場合、x86サーバーでのパフォーマンスを向上させるために、一部機能の利用方法に制約が生じていたこともありました。そのような状況に対して、稼働させるサーバーを変えるだけで効果が出るので、IBM Powerという選択肢は非常に魅力的ですね。
iWorld:
ProActive C4 on IBM Power、大いに期待できますね! 本日は貴重なお話をありがとうございました。
ProActive C4 のIBM Powerへの対応の経緯と、ProActive C4 on IBM Powerをどのようなお客様にお勧めしていくか等について、SCSK Minoriソリューションズ株式会社 営業本部 営業第二部長 藤井 二三夫氏、同社 ソリューションビジネスユニット ソリューション第一事業本部 ProActiveソリューション部長 徳田 友美氏、そして、日本アイ・ビー・エム株式会社 テクノロジー事業本部 IBM Power事業部 Power事業開発部 IBM i 統括本部長の山崎 秀治氏にお話を伺いました。