NEWS
IBM i トレンド IBM i トレンド
2026.04.01
SHARE
  • twitter
  • facebook
  • hatena
  • linkedin

Power11プロセッサー搭載サーバーとIBM Spyreアクセラレーターを活用して、エンタープライズAIで成功を収める方法

Power11プロセッサー搭載サーバーとIBM Spyreアクセラレーターを活用して、エンタープライズAIで成功を収める方法

IBM Power部門のワールドワイドのAIリーダーであるセバスチャン・レーリグ氏は、エンタープライズAIプロジェクトの95%が失敗している現状(1)を踏まえ、IBM Spyreアクセラレーターと統合されたAIソフトウェア・スタックが重要であると説明しています。(編集部)

(1)マサチューセッツ工科大学(MIT)の「NANDA(Networked Agents and Decentralized AI)プロジェクト」が公開したレポート「State of AI in Business Report 2025」より。
参考記事:@IT『MIT調査レポートが示す「生成AI導入」の実態と、成功に導くポイント』


2026年3月12日 ブライアン・シルバーマン

AIアクセラレーターであるIBM Spyre アクセラレーターがPower11プロセッサー搭載サーバーで利用可能になって数ヵ月が経ちました。IBMがAI戦略の重要な要素と位置付けているSpyre アクセラレーターについて、IBM Powerコミュニティーが学ぶべきことはたくさんあります。

2026年2月26日、IBM Power部門のワールドワイドのAIリーダーであるセバスチャン・レーリグ氏が、バーチャル・ユーザー・グループのウェビナーに登壇し、IBM SpyreアクセラレーターとPower11プロセッサー搭載サーバーを活用して、IBMがどのようにエンタープライズAIを形作ろうとしているのかを説明しました。

レーリグ氏は、AIをエンタープライズ・アプリケーションに後付けされた外部サービスとして扱うのではなく、すでにミッションクリティカルなワークロードを実行しているインフラストラクチャーに、AIを直接組み込む「プラットフォーム・アプローチ」について説明しました。

IBMは、Power11プロセッサー搭載サーバー、IBM Spyreアクセラレーター、Red HatのAIソフトウェア・スタック、そして、拡大を続けるオープンソースのAIサービスのエコシステムで生み出されたイノベーションを組み合わせることで、IBM Powerを運用型AIのための完全に統合されたプラットフォームと位置付けています。

IBMは、上述したアプローチによって、自社の顧客が「最終的に投資収益率(ROI)を生む5%のAIプロジェクト」(2)の一員として数えられるよう支援したいと考えています。

「現在、AIの導入は大きな課題です。AIは、導入したいと思っても容易に達成できる類いのものではなく、「月面着陸プロジェクト」のように困難に見えるのです。」とレーリグ氏は語りました。「しかし、プロダクト・マネージャーとしての私の考えは、『もし、95%が失敗しているのであれば、正しく実行して良い結果を出す大きな機会がある』ということになります。」

レーリグ氏は、AI導入のために構築された、相互に連携する複数のレイヤーで構成されるアーキテクチャーについて説明しました。

  • 加速されたインフラストラクチャー:IBM Spyreアクセラレーターを装着し、IBM Power Virtual Server(PowerVS)のサポートを組み合わせたIBM Power11プロセッサー搭載サーバー
  • 統合推論プラットフォーム:AIモデルのデプロイと管理のためのランタイム環境を提供するRed Hat AI Inference ServerとOpenShift AI
  • IBM Power向けAIサービス: Power11プロセッサー搭載サーバー上で効率的に動作し、IBM Spyreアクセラレーター向けに完全に最適化され、増加を続けるオープンソースのサービス

(2)MIT NANDAレポート「State of AI in Business Report 2025」より
参考記事:@IT『MIT調査レポートが示す「生成AI導入」の実態と、成功に導くポイント』中の「タスク特化の企業向け生成AI」 本番稼働は5%

ターンキーAIプラットフォームの構築

バーチャル・ユーザー・グループのセッションにおける主要なテーマは、IBM Powerをご利用のお客様自身によるAI導入の簡易化でした。

IBM Open-Source AI Foundation for Power」は、AIの導入を加速させるために設計された、再利用可能なソリューションとデプロイ・パターンのカタログを提供しています。

    再利用可能なソリューションには以下が含まれます。
  • ワークロードソリューション:ITサービスデスクのアシスタント、プライベートな文書の処理、不動産アドバイザリー・システムなど
  • 導入パターン:デジタルアシスタントや文書インテリジェンス・システムといった一般的なAIアーキテクチャーの導入を支援
  • AIサービス:ナレッジ・マネジメント、Q&A機能、文書処理、翻訳など

上述したソリューションは、IBM Spyreアクセラレーターを装着したPower11プロセッサー搭載サーバーにワンクリックでデプロイできるように設計されています。

IBM Cloud経由で利用するPower Virtual Serverのサポートも予定されているので、将来的には、一貫性のあるハイブリッドのデプロイメントが可能になります。

お客様事例

レーリグ氏は、IBM Powerプラットフォーム上のエンタープライズ・ワークロードに対して、どのようにAIを適用できるかを示す、実際のお客様事例を2つ紹介しました。

1つは、IBM iを使用しているHans Geis社の事例です。同社は、AIを用いて注文情報を受信メールから抽出し、抽出した注文情報を注文入力システムに自動的に入力しています。その結果、業務処理の効率が5倍向上したと報告されています。

もう1つは、IBMのパートナー企業であるDigiworks社の事例です。AIを活用して文書から個人を特定できる情報(PII)を自動的にマスキングし、プライバシー保護と法令遵守の向上を支援しています。

【参考情報】 Hans Geis社、IBM iとIBM PowerでAIを活用し、注文処理を5倍に高速化


課題
数千件ものサービス・リクエストが毎日発生する状況下、注文入力のプロセスが従業員による手動処理(サービス・リクエストのメールを読み、詳細を確認し、IBM i環境で稼働しているERPシステムに手動で入力)でした。

結果、現行の業務フローは従業員の生産性を低下させるだけでなく、データの入力ミスに起因する依頼の誤送や不備を発生させていました。また、各種の対応の遅延は顧客体験に悪影響を及ぼしていました。

解決策
メールベースのサービス・リクエストの処理を自動化する、クラウドベースのAIソリューションを検証し、PoC(概念実証)が成功しました。

そして、サービス・リクエストの処理精度を維持し、データのプライバシーも確保した上で、規制要件を充当するために、クラウドではなくオンプレミスにAIソリューションを配置することに決めました。

具体的には、AI処理アクセラレーターであるMMA(Matrix Multiply Accelerator)をCPUコアに搭載し、IBM i環境のLPARでERPを稼働させているIBM Powerサーバーの同一筐体内に、AIのための環境を設定。PoC中に開発したコードを変更することなくAIサービスを立ち上げられました。

結果
  • 処理時間が80%短縮
  • 注文処理速度が5倍向上

※この参考情報は、Hans Geis社の事例から主要部分のみを抜粋して翻訳したものです。事例の詳細はPDF( https://www.ibm.com/downloads/documents/us-en/1443d5dc5ecf4367 )でご確認いただけます。

IBM Spyreアクセラレーターの概要


IBM Spyreアクセラレーター

「Open‑Source AI Foundation for Power」の中核をなすのは、オプションとして提供されるIBM Spyreアクセラレーターであり、Power11プロセッサーの強化されたAI機能と連携して動作します。そして、Power11プロセッサーとIBM Spyreアクセラレーターを組み合わせることで、IBMが「アンサンブルAI」と呼ぶアプローチが実現します。「アンサンブルAI」は、Power11プロセッサーとIBM Spyreアクセラレーターが動的に連携し、最適なパフォーマンス、レイテンシー、効率を実現するために、どこで推論を実行するべきかを決定する手法です。

Power11プロセッサーとIBM Spyreアクセラレーターを組み合わせる場合、小規模なAIモデルやレイテンシーの影響を受けやすいAIモデルは、Power11プロセッサー 内蔵のAIアクセラレーター(MMAやSIMD)を使用して直接実行できます。一方、大規模で計算負荷が高いワークロードは、IBM Spyreアクセラレーターにオフロードできます。

グラフィックスや大規模モデルのトレーニング用に設計されたアクセラレーターである汎用的なGPUと異なり、IBM Spyreアクセラレーターは、エンタープライズ・システム内で効率的かつスケーラブルな推論を直接提供し、Power11プロセッサーに組み込まれたAI機能を補完するためにゼロから設計されました。

IBM Spyreアクセラレーターは、32個の専用AIアクセラレーター・コアと128GBの高速LPDDR5メモリーを搭載する、高度に並列化されたSoC(システム・オン・チップ)アーキテクチャーが採用されており、大規模言語モデルやAIワークロードを処理する計算エンジンの近くで実行できます。5ナノメートルの先端半導体技術を用いて製造され、約75ワットで動作するIBM Spyreアクセラレーターは、エンタープライズ・サーバーへの高密度な導入に際して不可欠なエネルギー効率を維持しながら、高度なAI処理能力を提供します。

IBM Spyreアクセラレーターは、現代のAIワークロードにとって特に重要です。大規模言語モデル(LLM)は、推論の処理中に「モデル重み」と「テンソル(多次元配列)」に繰り返しアクセスする必要があります。IBM Spyreアクセラレーターは、大容量の高帯域幅メモリーをアクセラレーター上に直接配置してPower11プロセッサーと密結合させることで、従来のアーキテクチャーにおいてはAIのパフォーマンスを制限しがちであったデータ移動のボトルネックを軽減します。

Power11プロセッサー搭載サーバーは、単一システムの筐体内に複数のIBM Spyreアクセラレーターを装着できるため、ビジネス・プロセスを実行しているアプリケーションやデータの近くでワークロードを処理しつつAI推論能力を拡張できます。このコンピューティング密度、メモリー容量、エネルギー効率の組み合わせにより、Power11プロセッサー搭載サーバーは、生成AI、検索拡張生成(RAG)、ドキュメント・インテリジェンスなど、厳しい要件のAIワークロードを、企業がオンプレミスで所有するインフラストラクチャー内で直接実行できます。

IBM Spyreアクセラレーターと汎用的なGPUアーキテクチャーの違い

大規模なAIモデルの「学習」において、GPUが依然として主流のアーキテクチャーであるのに対して、IBM Spyreアクセラレーターは「AI推論をエンタープライズ・インフラストラクチャーに直接組み込む」という異なる目標を念頭に設計されています。

    Power11プロセッサー搭載サーバーとIBM Spyreアクセラレーターのアプローチは以下に焦点を当てています。
  • 大規模モデルの学習ではなく、推論ワークロードの最適化
  • アクセラレーターのエンタープライズ・サーバーへの直接統合による、インフラストラクチャーの複雑性の軽減
  • AIワークロードをアプリケーションやデータに近い場所に配置することでレイテンシーを低減
  • 既存のビジネス・システムにAIを組み込みたい企業や組織のために、導入を簡素化

このビジネス・デザインは、企業向けAIの未来は、大規模な学習用のクラスターへの依存を減らし、AI推論を業務プラットフォームに統合することになるだろう、というIBMの見解を反映しています。

IBMの「フルスタックAI」ビジョンの実現

Power11プロセッサー搭載サーバーとIBM Spyreアクセラレーターのアーキテクチャーに関するレーリグ氏の説明は、IBMセミコンダクターズのゼネラルマネージャーであるムケシュ・カレ氏が語る「フルスタック戦略」を反映したものです。

カレ氏は、半導体、システム、ソフトウェア、コンサルティングを網羅するフルスタック戦略としてのIBMのAIへのアプローチを次のように強調しました。
「IBMはフルスタック企業です。半導体からチップ設計、システム、低レベルソフトウェア、オペレーティング・システム、ミドルウェア、アプリケーション、そしてコンサルティングまで、あらゆるスタックを統合しています」

IBM SpyreアクセラレーターとIBM Power向けのオープンソースのAIツールおよびサービスのエコシステムとを組み合わせたPower11プロセッサー搭載サーバーは、「フルスタック戦略」を実現するための重要な一歩となります。


本記事は、TechChannelの許可を得て「Spyre, Power11, and How to Beat the Odds in Enterprise AI」(2026年3月12日公開)を翻訳し、日本の読者に必要な情報だけを分かりやすく伝えるために一部を更新しています。最新の技術コンテンツを英語でご覧になりたい方は、techchannel.com をご覧ください。

いいねと思ったらシェア
twitter
facebook
hatena
linkedin
関連記事
<2026/3/17 公開分までを反映>IBM i 関連の脆弱性情報
<2026/3/17 公開分までを反映>IBM i 関連の脆弱性情報
HMC、BMC、VMI、eBMC、FSPのあれこれ
HMC、BMC、VMI、eBMC、FSPのあれこれ
[2025年6月30日更新] ADTS 一部機能のサポート終了について
[2025年6月30日更新] ADTS 一部機能のサポート終了について
あなたにオススメの連載
Db2 for i & SQL活用 虎の巻
15記事
Db2 for i & SQL活用 虎の巻
IBM i の”新”必須言語 〜FFRPG入門〜
0記事
IBM i の”新”必須言語 〜FFRPG入門〜
できるIBM i 温故知新編
9記事
できるIBM i 温故知新編