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2020.01.31
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IBM System Users Conference(略称iSUC)から名称を変更して2年目を迎えるUser & IBM NEXT(以下「NEXT 2019」)が2019年10月16日から18日にかけて福岡で開催され、会場となった福岡国際会議場は約900名の参加者の熱気で溢れかえっていました。

NEXT 2019 ではユーザー研究会、日本IBM、ベンダー各社による、働き方改革、女性活用、ITシステム部門のあり方といったビジネスを取り巻く環境に関する話題からクラウド、RPA、AI、量子コンピューティングなどの最新IT技術の話題に至る多彩な内容のセッションが提供され、選択に迷うほどでした。

そこで、NEXT 2019全体を貫く大きなキーワードである「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に着目し、DXという文脈でIBM i の価値を探ることを念頭にセッションを選びレポートをお届けすることにしました。

会場:福岡国際会議場

DX推進の基本的な考え方

(株)アイ・ティ・アール会長の内田悟志氏による「デジタル時代のイノベーション戦略」と題する基調講演では、DXを推進するための重要なポイントが指摘されました。とかく技術偏重の蛸壺的議論に陥りがちなDXに対して、大局的な視点から新たな気付きを与えてくれると同時にNEXT 2019のDXに関する議論のベースとなる素晴らしい講演でした。

今年もiWorldランチョンセッションを講演しました
(左からアイエステクノポート 竹内氏、アルス 深井氏、ベル・データ 安井氏、イグアス 細見)

経済産業省による定義によれば、DXとは『企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品 やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること』とあります。内田氏によれば、重要なポイントは、DXの目的は競争優位性を確立するために企業の変革を行うことであり、データやIT技術の活用はそのための手段に過ぎないが、往々にして目的と手段を取り違えているケースが見受けられ、注意する必要があると言います。

さらに内田氏は、DXを成功に導く鍵として「実践」とそれを支える「環境整備」の2つがあると言います。

まず、DXの実践には「漸進的イノベーション」と「不連続型(探索型)イノベーション」の2種類がありますが、これを混同して議論しているケースが多く、迷走の原因になっていると指摘しつつ、経営的には両方の型のイノベーション(「両利きの経営」)が重要であると強調します。

さらに、DXの実践は以下の4つの段階を踏んで行うことが必要かつ重要であり、ビッグバン的なDXの進め方は無理があるといいます。

  1. DXを行う理由や必要性を全社員が肚落ちするまで徹底的に議論する
  2. DXを行う理由が明確になったら、DXで何を目指すのかという方向付けを行う
  3. 具体的なDXの施策を検討する
  4. 施策をどのような手法/手段で実現するかを決定する

次いで環境整備については、従来の組織、企業文化、制度、風土、権限、承認プロセスなどを変革することが重要であると同時に、IT部門をデジタル戦略の中でどう位置付けるかといったIT環境の見直しも必要になると内田氏は言います。特に環境整備にはトップの強力なリーダーシップや支援が必要であり、その意味でDXの成否はトップのコミットメント如何に係っていると言っても過言ではないという指摘は、すべての全社プロジェクトに通底する真理でありながら日本では等閑(なおざり)にされがちな重要なポイントであると感じました。またDXは長い旅(long journey)であり、終わりなき変革の繰り返しであることを肝に銘ずべきという言葉も印象的でした。

 

DX時代のIBM i の進化と真価

IBM i の開発拠点である米国ロチェスターから、IBM i チーフアーキテクトのSteve Will氏とオープンソース担当のKevin Adler氏が来日し、IBM i の戦略とDXとの関係について講演を行いました。

Steve Will氏

Steve Will氏によるとIBM i は既に公表されているロードマップ通り、2世代先までの新モデルと新OSを見据えて開発が進められているそうで、明言は避けていましたが、およそ3年ごとに新モデルと新OSが発表される模様です。また、年2回のテクノロジー・リフレッシュ(TR)によって現行システムに最新機能を提供するという約束を守り続けていることにも言及がありました。これらの事を考え合わせると、IBM i はDX時代においても時代遅れになる心配をせずに使い続けられるプラットフォームであると言えるでしょう。

IBM i はソリューション・ベースのプラットフォームとして出発しましたが、今や世界中のIBM i ユーザーはオープンソースを取り入れ、IoT、コグニティブ・コンピューティング、機械学習などいわゆるSoE領域のアプリケーションとIBM i の基幹業務を連携させたり、IBM i 上で稼働させたりすることで新しいビジネスを展開しており、近年Power Systems、とりわけIBM i の大きく売り上げが世界的に伸びている背景には、こうしたIBM i の使い方の進化があるとSteve Will氏は言います。

そして、IBM i の基幹アプリケーションとIoT、AI、ロボットを連携させ、新たなビジネス価値を生み出している海外企業の事例として以下のようなものが紹介されました。

  • IoT
    Norwegian Air Ambulance (Norway):IBM iで既存の基幹業務を動かすと同時にOSSを使用して気象情報を全国に設置したセンサーから収集し、それを基に救急ヘリコプターの運用スケジュールに反映させ、安全の確保と効率的なビジネスを実現
  • ロボットとの連携
    • Brodrene A&O Johansen A/S (Denmark):自動倉庫(ロボット)とIBM iの入出庫アプリケーションを連携させて入出庫業務の効率化、精度向上を実現
    • Cras Woodshop (Belgium):IBM i 上の受注アプリケーションと木工ロボットによる精密加工を組み合わせ、製造から出荷までをIBM i で管理
  • 機械学習/AI
    • Robertet (France):Watsonを利用したチャットボットを使用してIBM iのヘルプ・デスクを実現
    • Caixa Geral de Depositos (France):与信業務にWatsonを使用し、IBM iの基幹業務と連携させてビジネス・チャンスを拡大

さらに、Steve Will氏は、 DXを支援するIBM i の機能の提供について、

  1. IBM i の原点はソリューションにあり、ソリューションにフォーカスした機能を提供する
  2. 機能を提供する際には、個々のビジネス・ニーズに合わせて、お客様がそれぞれのやり方でDXを推進できるようにするためにいくつかの選択肢を提供する。1つの機能を提供し、それだけでソリューション開発をしなさいというやり方はしない。(オープンソースの取り込みに積極的なのもそれが理由)
  3. できるだけ容易に新機能をDXに活用できるよう、機能の提供はIBM i に統合した形で行う

という3つの戦略に基づいて行っていることを明かしました。

IBM i 7.4でも多くの機能強化がなされていますが、ハイライトはセキュリティ強化のための権限収集機能、DB2 Mirror for iによる可用性の向上、オープンソースに対する一連の機能強化の3点であり、特にDXとの関連でいえば、オープンソースに対する機能強化が重要な意味をもっています。ここ数年、ロチェスターではオープンソース系の技術を熟知する若い人たちを多数採用し、IBM i を学ばせているとの話もありました。将来IBM i の開発の中心となるのは彼らであり、IBM i がいかにオープンソース技術の取り込みにも力を入れ投資を行っているかが分かります。

 

DXでどこへ行こうとしているのか?

最後にSteve Will氏は、次のようなメッセージで話を締めくくりました。

「IBM i の歴史、アーキテクチャを振り返れば、48ビットのCISCから64ビットのRISCへと大きく変わった時も、それまでに築き上げたソフトウェア資産がそのまま使える新しいマシンへと進化してきたことは皆さんご存知の通りです。POWER9を採用した現在も、将来もこの方針に変わりはありません。DXへの対応として、IBM i ユーザーが行うべきことは、必要に応じてIBM i が提供する新しい機能を取り入れて行けば良いのです。DXでどこへ向かうかはあなた次第です。」

 

オープンソース・サーバーとしてのIBM i

続いて登壇したKevin Adler氏は、オープンソース・ソフトウェア(OSS)について、これまではITコストの削減という観点から見られることが多かったが、ビジネスの要求に応じてアプリケーションを迅速に開発したり、急速に増大する大量のデータからビジネスに役立つ洞察を得ることが求められたりするDX時代に於いて、OSSはビジネスの成功に欠かせないと強調します。

Kevin Adler氏

Kevin Adler氏によれば、IBMはOSSに関して、サポート言語の拡充、アナリティクスの最適化、IBM i との統合、そしてOSSサポートの充実の4つを戦略目標としているとのことです。実際IBM i 7.4では、統計分析用の言語として名高いRの他に、NumPyやSciPyをはじめとする機械学習やデータサイエンスをサポートする様々なPythonパッケージが利用可能になったことに加えて、IBM i 7.4の機能拡張の一つとしてODBCドライバーがIBM i へ移植され、OSSとIBM i の統合がより一層進んでいます。これによりIBM i に蓄積されたデータをOSSで簡便に活用できるようになり、ディープラーニングや機械学習などのアプリケーションによるIBM i のデータ活用が期待されるとKevin Adler氏は言います。まさに、データベースマシンであるIBM i と同一筐体上でOSSを稼働させるというIBM i の真価が最もよく発揮される使い方の好例と言えるでしょう。

また、パッケージの管理が5733-OPMという従来からのライセンス・プログラム管理からRPMに変更され、Access Client Solution(ACS)によるオープンソース・パッケージ・マネージャーが提供されるようになり、急速に数を増やしているオープンソースの導入や更新作業が容易に行える環境が整いましたが、これもIBM i がOSSを重視している証左であるとKevin Adler氏は言います。

最後にKevein Adler氏は、IBMテクノロジー・サポート・サービス(TSS)は、様々な商用OSSベンダーやコミュニティOSS組織とパートナーシップを結び、 IBM i にとどまらず各種のLinuxサーバーで動くOSSをサポートするサービスを提供しており、安心してIBM i 上でOSSを利用できる環境も整っていることを強調していましたが、これもIBM i におけるOSS戦略の一環ということになります。

なお、IBM i 7.4 TR1およびIBM i 7.3 TR7(2019/11/15出荷)で新たに以下のオープンソースが利用可能になる予定です。

  • ZeroMQ :ユニバーサル・メッセージング・ライブラリー
  • Redis :多くのnoSQLデータベースをサポートするインメモリーDB

このように、活用領域をますます広げているIBM i のOSSからは暫く目が離せないという思いを強くしました。

 

IBM iプログラムのサービス化

日本IBMの佐々木氏の講演ではIBM i レガシーアプリケーションのマイクロサービス化について紹介されました。曰く、最近IBM i のアプリケーションをマイクロサービス化あるいはコンテナ化したいという相談を受けることが増えてきているそうで、その背景にはDXという流れの中で、アプリケーションを迅速に改変できる構造に変えたいという要望があるようです。

iWorldでお世話になっているお二人と(左から IBM 三神氏、iWorld事務局 関戸、IBM 佐々木氏)

現在IBM i でコンテナを動かすことはできませんが、既存プログラムをモダナイズし、サービス化したインターフェースを実装することで他システムやクラウド上のマイクロサービスと連携処理をさせることができると佐々木氏は言います。

RPGやCOBOLで作られた既存プログラムをサービス化するには、まずILE化するとともにRESTインターフェースを追加します。但し、対話型プログラムの場合は、最初に画面インターフェースを外してバッチプログラムに改修する作業が必要になります。

作成したサービスは、統合Webサービス・サーバーに登録することで、IoTデバイスや外部のマイクロサービスからRESTやSOAPを使って呼び出すことができます。また、IBM i 7.4からは、SQL文だけで作られたプログラムもサービスとして登録できるようになり、JDBC/ODBC接続を使うことなく直接RESTでDB2 for iにアクセスできます。

佐々木氏によれば、サービス化の対象を選定する鍵は、「ビジネス視点での適合性」すなわち、成長が予想されるビジネス分野やビジネス上の要求による変更頻度が高い分野を選ぶことであり、犯しがちな過ちは「IT視点での適合性」で対象を選定することだといいます。

既存プログラムをサービス化する目的は、迅速にアプリケーションを開発、公開してDXを推進することにありますから、塩漬けあるいは更新インターバルが長いアプリケーションはサービス化の対象として不適格だと佐々木氏は言います。

また、DX推進の一環としてサービス化を行うわけですから、開発手法も迅速なアプリケーション開発に適したDevOpsの導入は必須であり、そのための教育や意識改革が欠かせないと佐々木氏は強調します。

 

IBM iとH2O Driverless AIの連携

AIと基幹業務の融合はDXの目玉の1つとも言うべきアプリケーション領域であり、今回のNEXT 2019でもいくつかのセッションでこのテーマがカバーされていました。

セッション受講の様子

H2O Driverless AIセッションの講師である日本IBMの金田氏は、データを学習させてモデルを生成・活用するAIを業務で活用するには、企業固有のデータを学習させた自社専用のモデルが必要になると言います。従来のアプローチでは、AIを活用するには業務のプロとAIの専門知識をもったデータ分析のプロ(データサイエンティスト)の両者が必要でした。このようにAIの活用にはデータサイエンティストが必要とされることがAI普及のネックになっているといいます。

この課題を解決するために、データサイエンティストの仕事をコンピュータで置き換え、自動化するアプローチが考えられます。まさにH2O Driverless AIは、機械学習にまつわるデータサイエンティストの仕事を自動化することでAIに取り組みやすい環境を提供します。データサイエンティストの主な仕事は、特徴量の設計、手法の選択、結果の根拠説明の3つですが、H2O Driverless AIはこれらすべてを自動化してくれます。

H2O Driverless AIは、データサイエンティスト競技会の優勝者が作成したモデルよりも優れたモデルを作成したという実例もあるとのことで、自動作成されたモデルでも十分実用に耐えられることが分かります。(もっとも、近年の将棋や囲碁でのAIの活躍を見れば、これは驚くことではないかもしれません。)

 

H2O Driverless AI利用の2つのシナリオ

IBM i とH2O Driverless AIを連携処理させるシナリオとして

  • LPAR機能を使い同一Linux環境とIBM i 環境を同居させ、Linux環境でH2O Driverless AIを動かし、IBM i で動かしている基幹業務のデータを利用する
  • 高いパフォーマンスが必要な場合、GPUを備えた専用のPower System(AC922)を用意し、そこでH2O Driverless AIを動かし、基幹業務を担っているIBM i のデータと連携させて処理を行う

の2つが紹介されていましたが、いずれのシナリオを選択するにせよ、IBM i 上の基幹業務のデータを活用して新たなビジネスモデルに繋げるためのAIソリューションとして、H2O Driverless AIは多くのお客様にお勧めできる製品であると感じました。

金田氏は、サービスインはAI活⽤のスタートラインに過ぎず、学習を継続してAIの価値を高める必要があり、ビジネス状況の変化に合わせてサービスイン後の再学習運⽤も検討することが重要だと語っていますが、そうした継続学習の場面でもH2O Driverless AIの利便性を大いに活用できそうです。

 

IBM iとIoT、AIの連携

上記のAIだけではなく、IoTとIBM i の連携処理もまたDXにおける重要なアプリケーション領域です。オープンソース協議会メンバーによるIBM i 上のNode-REDとIoT、AIの連携というセッションでは、カメラモジュールを搭載したRaspberry Piで取り込んだ画像情報を、IBM i 上のNode-REDを経由してFace++というAIに転送し、そこで人物を特定してその氏名をJSON形式でIBM iに返すという研究実験の成果が報告されていました。

懇親会も盛り上がりました

Node-REDは、元々英国IBMのハーズレー研究所のメンバーが中心となって作成されたオープンソース・ソフトウェアで、その特長は、プログラミングの代りにブラウザー・ベースのエディターで機能ノードを選び、それらを結び付けることでIoTデバイスなどから取り込んだデータの処理フローを簡単に作成することができる点にあります。

Node-REDのようなオープンソース・ソフトウェアを活用することで、IBM i でもIoTデバイスを利用したアプリケーションが容易に構築できる環境が整っていることを改めて実感しました。

2025年の崖と2024年問題

2025年の崖

「2025年の崖」とは経済産業省のDXレポートで指摘された問題で、『複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存した場合、2025年までに予想されるIT人材の引退やサポート終了等によるリスクの高まり等に伴う経済損失は2025年以降、最大12兆円/年(現在の3倍)にのぼる可能性がある』とされています。

NEXT Solution Expoにてハッピーアワー開催!参加者、出展者と交流ができ、盛り上がりました

「2025年の崖」の要因の1つとして挙げられている古いハード/ソフトのサポート終了という懸念は、アプリケーション資産の保護をコミットしているIBM iには当てはまりませんが、IT人材の引退に伴うアプリケーション・プログラムのブラックボックス化は確かに大きな懸念材料です。

ベル・データ株式会社の安井氏によれば、この問題に対する対策は、まず現行プログラムを分析してその構造やプログラム間の依存関係を明確にし、次にプログラム改修の必要性の有無を判断して仕分けを行って、改修が必要なプログラムについてはモノリシックな構造からモジュラー構造に変更するよう設計し直すことだと言います。

また、プログラミング言語の選択では、機能もさることながらプログラムの互換性が保証される期間が大きな要因となります。特にオープンソース系のプログラミング言語ではバージョンが変わる度にプログラムの動作チェックや書き換えが必要になるというのが半ば常識で、長期に渡って使用するアプリケーションの開発に使用するのには向いていないと安井氏は言います。

実際、あるお客様は3年がかりで構築したオープン系システム上のJavaアプリケーションをバージョンアップするだけのために2年をかけて改修するという経験をされ、今後同様のことを繰り返すことを避けるために、IBM i をプラットフォームとして選択し、JavaアプリケーションをFF RPGで書き換えられたそうです。。RPGやCOBOLと同様、FF RPGで書かれたプログラムは何年経ってもそのままIBM i で動くことが保証されている上にプログラムをモジュラー構造にすることができ、プログラムの改修を迅速に行うことができるという利点があり、その点がお客様に高く評価されたようです。

昨今IBM i ユーザーに対してIBMが盛んにFF RPGによるプログラム構造の変革を促しているのは、FF RPGがDXの推進に必要な様々な機能強化を施され、かつソフトウェア資産が保護されるからに他なりませんが、ユーザーはこうした点にもっと目を向けるべきだと感じました。

 

2024年問題

2024年問題とは、2024年1月以降NTTの「INSネットデジタル通信モード」がIP網への切り替えに伴ってサービスを終了し、このモードを使用しているEDIなどが使用できなくなることを指しています。これは、まさに「2025年の崖」で指摘されていた既存サービス終了に伴うリスクの一例と言えます。

会場にデロリアンが登場!?(特別講演)

アイマガジン株式会社が主催した「次世代のB2B基盤」を考えるパネル・ディスカッションではネオアクシス株式会社による2024年問題に取り組んだ事例として、これまで使用してきた「Toolbox for IBM i のEDI」に代えて「Toolbox for JXクライアント」に切り替えた事例と、EDI機能をIBMクラウド上に構築しIBM iとのアプリケーションと連携処理させる方式を採用した事例が紹介されました。

それぞれの方式を採用した理由や、両事例の詳細についてはiMagazine 2019 WINTER号に特集記事が掲載されていますのでそちらをご覧いただくとして、2024年問題に対する対応があまり進んでいない現状にもう少し危機感を持つ必要があると感じました。EDIによる受発注ができなくなれば、ビジネスに大きな混乱を招くことはもとより、最悪ビジネス上の信頼を失う可能性もあります。

EDIの切り替え作業を担当された講師の方々は、異口同音に「EDIの切り替えは相手先とのすり合わせなども必要あり、意外に時間のかかる作業でした」との感想を述べられていました。また、インターネットEDI普及推進協議会(JiEDIA)も「サービス終了間際には多くの企業が駆け込みでベンダーに依頼をすることが予想され、依頼の急増でベンダー側も対応しきれない可能性がある」との懸念を示しており、できるだけ早く切り替え作業に取り掛かるべきだとの印象を強く持ちました。

 

おわりに

進化論で有名なダーウィンの言葉に『生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである。』というものがありますが、DXの本質は、まさにITシステムをビジネス環境の変化に最もよく適応させるための永続的な営みにほかなりません。

また、このダーウィンの言葉は、AS/400から連綿と続くIBM i の歴史を振り返るとき、ソフトウェア資産の保護を保証すると同時にIT技術の変化に適応し、進化し続けてきたIBM iの在り方とも重なります。この流れを将来に渡って続けて行くというIBMのコミットメントを今回のNEXT 2019でも確認することができました。

あとは、次々と提供されるIBM i の新機能をどう活かして新たなビジネス環境を作り出して行けるか、ユーザーそれぞれの知恵と工夫が問われる番だとの思いを強くした大会でした。

大会バッグ

※本記事は筆者個人のレポートであり、IBMの公式見解ではございません。
当日の写真も交えて、当レポートをお楽しみください。

 

<著者プロフィール>
西原 裕善(にしはら ひろよし)
日本IBMでSEとしてS/34、S/38のシステム設計および導入作業に従事した後、米国ロチェスターの国際技術支援部門に出向し、全世界のIBM SEやお客様に対してAS/400の技術サポートを行う。帰国後、日本IBM システムズ・エンジニアリング(株)でITアーキテクトとして様々なシステムのアーキテクチャ設計を担当。現在はフリーのテクニカル・ライターとしてIBM iを中心に執筆活動を行っています。
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