2025年5月19日 スティーブ・ウィル
昨年のCOMMON POWERUpで、IBM iコミュニティーに対して、膨大なコード、特にRPGで書かれたコードを抱えているお客様を支援する、AIによるコーディング支援ツールの必要性についてお話しました。その「AIによるコーディング支援ツール」は、IBM THINKでプレビューを行いました。そして、今年のCOMMON POWERUpで、これまで「RPG Code Assistant」と呼ばれていたツールを正式な製品名を発表し、説明と実演を行いました。
今回の記事は、IBM watsonx Code Assistant統括責任者であるマイケル・クォックと協同で執筆しています。マイケルの肩書きと、この記事のタイトルから察していただける通り、「RPG Code Assistant」と呼ばれていた製品の正式名称は「IBM watsonx Code Assistant for i」となりました。
製品の概要
IBM watsonx Code Assistant for i (略称 WCA for i)は、IBM iとRPGコード向けに特別に設計された、生成AIによるコーディング支援ツールです。WCA for iは、IBM独自のLLM(Large Language Models:大規模言語モデル)であるIBM Graniteを基盤として構築されています。そして、公開されたコード・リポジトリー、RedbookやテストケースなどIBMが所有する RPG関連資料、さらには、IBM iコミュニティーの数多くのメンバーからの多大な協力により提供された重要かつ貴重なRPGコードを用いたトレーニングの実施により、WCA for iはRPGコード向けに最適化されています。
WCA for iはVisual Studio Code(VS Code)ベースの統合開発環境(IDE)とシームレスに統合されているので、プログラマーは、開発、拡張、保守しているコードを、自分自身で目を通すよりも効率的かつ正確に理解できます。
大半のお客様は、IBM Cloud経由でRPG向けにトレーニングされたGranite の能力を利用することになるでしょう。また、一部のお客様は、LLMとwatsonx Code Assistant の中核技術を自社のデータセンターに導入することを望まれるでしょう。いずれにしても、WCA for i、VS Codeの拡張機能(Code for IBM i)、特別にトレーニングされたLLMを組み合わせることで得られる独自の価値によって、数十年にわたって蓄積されているRPGの知識が、現在、開発に携わっているプログラマーに役立つようになるでしょう。さらに、RPG未経験であっても優秀な人材を安心して採用できるようになります。
WCA for iがもたらすビジネス上のメリット
WCA for iの開発を推し進められているのは、IBM iをご利用のお客様からのお力添えがあってのことです。
IBM iをご利用のお客様が使用しているビジネス上重要なアプリケーションは、かなり以前にRPGで開発されたもの多いことでしょう。そして、これらの重要なアプリケーションを最初にRPGで開発したプログラマーは、定年間際かすでに定年を迎えている、あるいはすでに会社を辞めているかもしれません。しかし、その重要なアプリケーションのRPGコードのメンテナンスや拡張は、誰かが行う必要があります。
現在、プログラマーとして企業に入社できる人材は、RPGのスキルを持っていない可能性が高いでしょう。
既存のRPGコードが何を行っているかを理解する際に役立つツールは、スキルを持っていなったプログラマーたちの短期間でのRPG習熟を実現するとともに、ビジネスの遂行に必要となる新たな機能強化の実行に大いに役立ちます。
WCA for iは、RPGを用いた開発に初めて携わるプログラマーの学習曲線を短縮するとともに、RPGに熟練したプログラマーの生産性の向上を実現することで、重要なアプリケーションのRPGコードのメンテナンスや拡張を行う要員を確保する、という課題の解決に寄与します。
WCA for i を使うことで、RPGに初めて接するプログラマーたちは、これまで見たことがないコードであっても迅速かつ完全に理解できます。しかも、自力で学習するよりも短時間で、RPGの理解に必要な知識の習得が可能になります。例えるならば、経験豊富なプログラマーが、傍らでタスクを手伝ってくれるかのようです。
過去数か月間、プライベート・プレビューによるツールとモデルの評価をRPGの専門家の方々に依頼し、貴重なフィードバックを獲得しました。私たちは、RPGのLLMトレーニングを継続すると同時に、フィードバックに基づいた変更を加えています。今後、数か月の間に、さらに多くの方々からフィードバックしていただけるはずです。
パブリック・プレビュー
製品版となるWCA for iの最初のバージョンでは、IBM i上で稼働しているRPGで書かれたアプリケーションをプログラマーが迅速かつ効率的に理解し、文書化できる機能を提供する予定です。将来的に、プログラマーは古いRPGコードの学習や書き換えに時間を費やすことなく、WCA for iによってRPGコードを生成、テスト、変換して、新しいアプリケーション向けの高品質なコードの作成、現行のコードのモダナイズによるビジネス要件の充当、革新的なプロジェクトの前倒しなどが実現できます。
WCA for iは、今年後半に一般公開となる予定です。5月7日には、WCA for iのウェイティング・リストが用意されました。ウェイティング・リストに登録することで、WCA for iの詳細情報や、一般公開時の通知を受け取れます。また、ウェイティング・リストの登録者から、次の四半期に実施するパブリック・プレビューへの招待する方々を選ぶ予定です。
旅は今始まったばかり
RPGプログラマーを支援するための大規模言語モデルのトレーニングとツール作成について初めて話した日から、AIがIBM iプログラマーをどのように手助けできるかについて、多くの提案をいただきました。
WCA for iの最初の一般公開の時点で提供できる機能に大変胸を躍らせていますが、これはまだ始まりにすぎません。COMMONのアドバイザリーボードやWCA for iを検証した初期ユーザーからのフィードバックに基づいて、すでに初期の仕様に対する機能強化を施しております。もちろん、今後もユーザーの声に耳を傾け続けます。
WCA for iの製品ページをブックマークするとともに、メディア記事やブログ記事に注目いただき、ソーシャル・メディアをフォローして、WCA for iの最新の情報を入手してください。これからも、もっと多くの情報を発信します!
本記事は、TechChannelの許可を得て「IBM watsonx Code Assistant for i—the Journey Begins」(2025年5月19日公開)を翻訳し、日本の読者に必要な情報だけを分かりやすく伝えるために一部を更新しています。最新の技術コンテンツを英語でご覧になりたい方は、techchannel.com をご覧ください。
これまで、「RPG Code Assistant」という名前で語られてきたツールが、「IBM watsonx Code Assistant for i(略称 WCA for i)」という正式名を得て、プレビュー公開されました。同製品の公式な出荷は2025年後半になるようですが、それに先立ってIBM iのCTOスティーブ・ウィル氏およびIBM watsonx Code Assistant統括責任者のマイケル・クォック氏が、この製品の魅力と期待について語っています。(編集部)